問題2について ・・・巣がある竹藪の所有者に要請できるか(土地所有者になんらかの責任があるか)
他人が土地所有者に何かをいえるかといった問題は、いろいろでてきますね。民法で有名なのは、隣家の竹木の枝が越境したら、その所有者に枝を切らせることができるというのがありますね。根の越境だと、こんどは自分で切り取れるというのが面白いですね。では竹藪にスズメバチの巣がある場合、他人が所有者に駆除するよう求めることができるでしょうか。
日常竹藪を通行している人が通行の利益侵害のおそれを理由に危険除去という意味で求めることができそうな理屈が浮かびそうですね。では法的根拠は?
崖が崩壊の危険があるからとの理由で予防措置を求めることが認められる場合がありますが、通常、擁壁設置とか、宅地造成の盛土や排水措置とかに欠陥がある場合でしょう。宅地造成規制法施行令の基準が参考になりますね。人の手が入って危険状態を作り出した場合ですね。他方で、台風・地震などで土砂崩れ、崖崩壊のおそれがでたからといって、所有者になんとかしてとはいえないですね。
ではまったく所有者は責任がないといえるのかはもう少し考えてみたいと思います。たとえば空き家が全国的に問題になっていますが、柱が傾き、屋根瓦が落ちているといった倒壊寸前とまでいえなくとも、相当危うい場合、一定の予防措置ないしは解体その他適切な措置を講じる義務が出てくる可能性はあるのではないかと思うのです。条例の中にはかなり実効的な対応手続きを講じたものもありますね。とはいえ、これもやはり人の手が一度は入ったものの、放置された状態ですね。
さて、本題のスズメバチの巣は、確かに自然の営みです。その巣を作る契機はいろいろあるでしょうが、竹木の場合手入れしないで放置されている状態のところが多いように思います。スズメバチも好んで人が手入れしている竹木林や工作している農地には近づかないように思います。換言すれば、適切に利用・耕作していれば、スズメバチの巣もできない、その放置の責任はないのかといった考え方も一応はありうるでしょう。
農地については、平成21年改正農地法で、耕作放棄地(あるいは遊休農地)の所有者に、利用の責務を新に制度化しました。耕作主義の農地のあり方としては遅きに失する対応ですが、でも竹木は対象外ですね。ただ、竹林について、たとえば長岡京のタケノコと言った農産物としても著名ですが、農地扱いも可能で、実際、竹林を一旦農地に認めた実務取扱もありました。ま、この議論は別の機会にして、やはり仮に利用の責務を認めたとしても、放置したことから、スズメバチが巣を作ったこと、危険を惹起したことについて、所有者に責任を問うのは無理があるように思います。他方で、自宅の建物なんかに巣を作られたら、当然、ご本人は家族の安全を考え、率先して駆除し、あるいは駆除してもらいますよね。
とはいえ、所有者たる者、自分の支配管理する場所から人の健康、場合によっては生死を招く恐れのあるスズメバチの巣を放置するのは、少なくとも道義上、許されないのではないかと思います。
いろいろ回りくどい話しをしましたが、要は、所有者である以上、スズメバチの巣を駆除するのが私の抱く、自然の道理です。法的には他人が竹林所有者に、駆除を求めることは特段の事情がない限り、無理と考えます。さて、特段の事情とは、・・・いずれ具体化できればと思います。このような空想的議論は、後で思いついたので、即座に、スズメバチの退治に出かけました(これ、生物愛護の精神が欠けていないかはやはり気になります)。