181004 預金と投資の今後 <日銀「33兆円過大計上」問題で見えた、貧困化する日本>などを読みながら
台風25号の動向が気になる今度の連休ですね。もうそろぞろ台風・豪雨などの自然災害から今年は勘弁してもらいたいと思うのは、被災地の方はもちろん、多くの人も同感ではないでしょうか。でも日本列島の歴史を遡ると、一度あることは二度あるみたいに災害列島として記録に残っているだけでも相当なものですね。被災を乗り越えてきた先祖のようにへこたれないことが肝腎かもしれません。
ところで、今日は珍しくForbesの記事<日銀「33兆円過大計上」問題で見えた、貧困化する日本>に目が点となりました。最近は会計不正(過大計上も含め)も巨大化していますが、33兆円っとは桁違いですし、それがこともあろうに日銀というので、なんたることかと思い、つい記事を読んでしまいました。
すると次々の気になることが出てきました。どこまで行くのかと思いつつ、それでも日本は大丈夫?のようでもあり、ほんとかなと半分、これはグレーでしょうか。
まず上記記事の執筆者・藤野英人氏は、7月23日付け毎日記事<投資信託家計保有額、30兆円以上過大計上 日銀>を引用していますので、私もまずその記事から紹介します。このときは見落としていた!わけです。
<個人の代表的投資商品である「投資信託」の家計保有額が、日銀の統計作成時の誤りで30兆円以上も過大計上されていたことが判明した。>どうやら天下の日銀の統計が間違っていたようです。
その30兆円以上の過大計上の中身は<17年12月末の家計の投信保有額は、改定前の109兆1000億円から約33兆円少ない76兆4000億円まで激減。個人金融資産に占める投信の割合も、改定前は12年の3.8%から17年の5.8%まで上昇していたが、改定後は14年の4.6%をピークに低下し、17年は4.1%まで下落していたことが分かった。>
その過大計上があまりに大きすぎるので、投信の個人金融資産比率にも影響して、実際はほんの0.3%としか増えていないのに、2%も急増したといった誤った統計が出回って、政府のトリクルダウン策がうまくいったかのような都合のいい数値になっていたのが、ようやく化けの皮が剥がれたというと言い過ぎですが、ま、この株価上昇には個人はほとんど恩恵を受けていないことが露呈されたことは間違いないですね。これだけバブル期に舞い戻るような勢いの株高ですから、個人の投信が増えていれば、もっと消費に反映するはずですね。トリクルダウンの中間が別の方、実はゆうちょ銀行に落ちたのであって、個人には行き渡っていないのですから、当然と言えば当然でしょう。
毎日記事では<これほど大きな修正が生じたのは、日銀が、ゆうちょ銀行が保有する投信を個人が保有しているものと誤って計算していたことが原因だ。>と指摘していますが、そんな誤りがあるのかと不思議な経緯です。
また<政府や証券業界は、現預金に偏る家計の資金が、経済成長に資する企業への投資資金として回るような政策を進めてきた。>わけですね。でも<日銀の統計に基づく投信保有額の増加は政策効果の表れとみていた>というのは、誤ることのないはずの計算で、「忖度」があったのでしょうかね。この誤った?結果を受けて<金融庁幹部は「我々の認識以上に個人の投資への動きが進んでいないなら、改めてどうすべきか考えないといけない」と厳しい表情を見せた。【小原擁】>では済まないでしょう。
さて、毎日記事を引用した藤野氏は手厳しい。
<、貯蓄から投資なんかまったく進んでおらず、むしろ投資から貯蓄になっていたということである。日経平均株価はこの間、1万4000円台から2万4000円程度まで上昇をしている。投資信託をただ保有しているだけでも、70%は増えていたはずだ。増加分を考えると少しだけ売却をしたというレベルではなく、投資信託を”売りまくって”現金に換えたということがわかる。
長期投資は根付いておらず、日本の個人投資家はひたすら株や投資信託を売り、喜んで外国人に所有権を移転したことになる。自分たちの国の資産である日本の会社を外国人に売り渡していた。かなりもったいない。>ま、資産運用の専門家的発想からすると、そうかもしれません。
また<いったいこれはどうしたことか。このようなミスではすまされないことがあって、特に日銀の謝罪があるわけでもなく、関係者に処罰が下されたわけでもない。非常に解せない。>そうですね。でもこの誤った数値は政府の政策に都合が良かったので、それを間違っていた、謝りますというと、モリカケと似たような、いやそれ以上の問題になりかねないので、ここは騒がずおとなしく声が上がらないことを祈って暴風雨のような嵐が起こらないことを願っているのではないでしょうか。
日刊ゲンダイデジタル日刊ゲンダイDL<日銀が33兆円過大計上 安倍首相「家計は豊か」のデタラメ>も相当手厳しいですが、その後他の媒体はフォローしていないようです。
ただ、本日付のたばぞうの米国株投資では<個人の投資信託保有残高が実は減っていた件を考える>で、投資信託自体を批判して、少し違った見方をしています。
<米国株ETFや個別株に比べて、あきらかな「ぼったくり」が多いのが投資信託でした。ダメな理由は以下に集約されます。
• 信託報酬が高い
• トラッキングする指数にロクなものが無い
• そもそもまともにトラッキングできない
• 毎月分配型のタコ足配当商品が多い>
ま、ここまで言えるかについてはどうかと思うのですが、過去の投資信託の中にはこういった批判を甘受しないといけない例もあったと思います。私は一度くらいしか手を出したことがありませんが、素人ながら上記のような考えに近いかもしれません。
たばぞう氏は、投資信託自体を問題にしているのではなく、この商品を扱う会社を問題にしているのですね。それで<投資信託は自分で選ぶ視点をしっかり持とう>とのたまっています。そのとおりかもしれませんが、素人はどうするのでしょうか、簡単ではないですね。
さて長い前口上でしたが、ここで少し本論のプロローグ的な話に入ります。
結局、増大したという33兆円の投資信託は、個人ではなく、ゆうちょ銀行が保有しているものだったということでした。
そこで私が気になったのは、まず、え、ゆうちょ銀行はそんな「投資銀行」になったの?と不思議な感覚です。それがだれも問題にしないことに不思議を覚えています。別に銀行だから資産運用にあたって法令に違反しなければ、さまざまな選択肢をより有利に、そして安全に運用すればいいではないかと思われるかもしれません。
たしかにそうですが、ゆうちょ銀行は、他の都市銀行や地方銀行などの金融機関と違います。庶民の貯蓄するもっとも身近な金融機関です。私のように地方の田舎に住んでいると、いかにゆうちょ銀行が多くの人にとって身近な存在であるか日常的に感じます。
その庶民はマイナス金利政策の下、普通貯金はもちろん、定期貯金もほとんど利息が付かない状態に置かれていて、タンス預金でもいいはずなのに、たいていの人はゆうちょ銀行の金利なしともいえる状態で(わずかな金利で、が正確ですか)貯蓄しているのに、その銀行が多額の投資信託を保有して、莫大な利益をあげているのはいかがなものでしょうかと思ってしまうのです。
それを一応、確認するため、とりあえずゆうちょ銀行のホームページから<単独決算推移>を見ると、16年3月期、17年3月期、18年3月期、と連続して経常利益が5000億円近くあり、営業利益を大きく上回っています。凄いですね。
で、この経常利益の中身ですが、最近の<第一四半期報告書>がありましたので、これによると、経常収益が4700億円あり、そのうち、有価証券利息配当金が3400億円であるのに対し、貸出金利息はなんとその1%に満たない31億円です。この後の収支計算はカットします。
銀行というと、貸付による収益が中心かと思いきや、いまは時代が変わっていることは確かで、収支構造も大きくシフトしていることは認めましょう。でも、ゆうちょ銀行という庶民の大銀行がこのように投資信託(だけではないですが)依存の収支構造になってよいのかと気になりました。
庶民が理解していればいいのですが、どうでしょうか。だいたい上記のような株価上昇の利益を相当得ているにもかかわらず、貯蓄している庶民にはまったくなんの利益還元もなくていいのかと思ってしまいます。(いいかもしれませんが、説明責任くらいあるのではと思うのです)
他方で、庶民はいまも金融資産を貯蓄に偏在させていますね。それでいて時折、特殊詐欺の猛威にもさらされています。そのような庶民にとって、株式・債券の相場は素人にはなかなか判断が容易ではないかもしれません。
とすると、庶民が貯蓄し、貯蓄を預かるゆうちょ銀行が、専門家のアドバイスを多額の費用を投じて受けて、投資信託などに投資して利益を上げるのは、いまの状況ではやむを得ないのかもしれないとも思ったりするのです。ゆうちょ銀行はじめ各銀行も投資信託を勧誘しますが、あまり信頼性がないのかもしれません。ゆうちょ銀行が自らの責任でやる場合は、リスクを引き受けるので、リスクヘッジもそれなりに対処しているでしょう。
と半分、あきらめ気分で、いまの状態を是認するしかないのか、気になったものの、今のところ、いい策は見当たりません。代替案あっての批判が望ましいと思うのです。
とはいいながら、先ほどの貸付金利息がさほど大きくないことに注目しています。
というのは9月29日付け毎日記事<日本郵政スルガ銀と融資、ゆうちょ銀調査 シェアハウス不正>も見過ごしていましたが、<スルガ銀の住宅ローンなどを仲介する際に、窓口業務で不正がなかったかなどを調べているという。スルガ銀との提携融資は年間約350億円に上る>というのですね。
貸付業務といったことについて、ゆうちょ銀行にはしっかりした審査ノウハウを身につけた行員があまりいないのではないかと危惧するのです。それで、銀行全体で不正融資をやっていた疑いのあるスルガ銀行と提携して、その住宅ローンの仲介をしていたというのですから、困ったことになりました。
<8月末に外部弁護士を入れた調査委員会をゆうちょ銀内に設置>して、不正の有無を調査中と言うことですが、その情報開示もすくないように思われます。すでに<シェアハウス融資で経営が事実上破綻した投資用アパート運営会社「ガヤルド」(東京)の販売協力会社は、ゆうちょ銀が窓口の提携融資でも不正があったことを共同通信の取材に明らかにしている。>ということですので、公開性・中立性の強い第三者委員会でやるべきではないかと思うのです
というわけで、庶民の銀行に、襟を正してもらって、運用のあり方を見直してもらいたいと思うのです。現在の株高傾向にも本当に実体経済を反映しているのか疑問なしとしませんので、慎重な資産運用を期待したいところです。
今日はこれにておしまい。また明日。