ヘイトスピーチやSNS上での差別書き込みなどについて考えます。
街頭で在日韓国・朝鮮人や中国人へのヘイトスピーチを繰り返したり、インターネット上で差別的な書き込みをしたりする人々の主張は、早い話が、「日本は中国や朝鮮半島を侵略などしていない。中国への出兵は国際情勢の中でやむを得なかったためで、もちろん〝大虐殺〟などしていない。朝鮮半島への植民地支配にしても、インフラ整備をはじめ、当時の朝鮮半島社会の近代化に貢献しこそすれ、侵略したなどというのは言いがかりだ。日本は悪いことなど何一つしていない」ということのようです。
ちょっと考えればわかりそうなことですが、「私は正しいことしかしたことがない。間違ったことなど何一つしていない」などと言う人がいれば、「そんなわけないだろう」と、普通は思います。同様に、どんな国だって、間違ったことや他国の迷惑になるようなことを多かれ少なかれしています。大事なのは、そのことをきちんと反省し、同じ失敗を繰り返さないよう努力することだと思うのですが、どうも、自分や自分の属する国のやらかした失敗や過ちを認めることができない、という人が最近日本ではとても増えているようなのです。しかし、自分の持つ「醜さ」と向き合うことができず、社会的に弱い立場に置かれている人々を手っ取り早く攻撃して溜飲を下げるという態度は、まともな人間の取る態度でないことは確かです。
そもそも、全く残念なことですが、日本社会は今でも、差別をはじめとするさまざまな差別を温存しています。そんな国が、かつて、中国や朝鮮半島の人々に対して一切の差別なく、よいことばかりしていた、などというのは、さすがに無理があるのではないでしょうか。
ネット社会が発達するにつれ、正しい情報をさまざまな書物などから苦労して集めるより、ウェブから得るほうが手軽で手っ取り早い、と考える人々が増えています。しかしそのことが、正確さよりも、自分にとって都合がよい、あるいは気持ちよい、という情報ばかり受け取る人ばかり増やし、さらにそれが新たな差別を生み出すという現状になっているとしたら、それは即ち「日本社会の知性と人権の危機」と言わざるを得ません。歴史や情報についての地道な啓発・教育を怠ってはいけない理由がここにあるのだと、私は思います。
【新潟県人権・同和センターニュース30号 2014年4月号 より】