にわとりのにわ a hen's little garden

歌うたい時々クラリネット吹きの日高由貴のblog。
ちいさなこころのにわの風景をすこしずつ書きとめていきたいです。

マディソン滞在記6

2013年05月21日 | 2013 マディソン滞在記
2013年5月21日(火) 晴れ

今日もいい風。
半袖Tシャツと薄手のパーカーで過ごしました。
だんだん月が満ちてきて、夜はとても綺麗です。

リチャードさんが地下の書斎でお仕事をしている間、わたしは2階で練習しているのですが、階下から大声で呼ぶのは「メンドクサイ」と思ったようで、体育の時間に先生が使っている笛を使うことを思いついたようです。

ピピーッと笛の音がすると、「用事があるから降りてきて」や「そろそろ出かけるよ」の合図なので、素早く降ります( ̄▽ ̄)ゞ

夜は、リチャードさんのお友達が通っている瞑想の勉強会に連れて行ってもらいました。
仏教のお坊さんがご自宅で開いている会で、1時間半、静かに語られるお話を聴きながら瞑想しました。

終わったあと、お坊さん2名と、リチャードさん、リチャードさんのお友達が、リチャードさんが取り組んでおられる人種差別をなくしていくための活動についてのお話をされているのをお聞きしました。

ウィスコンシン大学では、いまでもまだアフリカンアメリカンやネイティブアメリカンに対する差別が根強く残っていること、それをなくしていくために、週に一回、誰でも参加できる勉強会を開いておられること、実際に大学の授業で遭遇した差別について、差別する側の学生は、相手を自分と同じ人間ではなく、別の生き物のように思っているお話、そのような偏見をなくすために、そのつど学生と話していることなどでした。

半分くらいしかききとれないので、自分にもっと英語力があればと思いますが、すこしずつお話をうかがいたいと思っています。
http://richarddavis.org/?page_id=84

マディソン滞在記5

2013年05月21日 | 2013 マディソン滞在記
2013年5月20日(月)晴れ

とても気持ちのいい風が吹いている一日。
半袖のTシャツで過ごしました。

リチャードさんのお宅の窓の外には、ウィンドチャイムが吊り下げられていて、風が吹くたびに柔らかい音が鳴ります。

耳を澄まさないと聴こえないくらいのかすかな音なのですが、この音を聴くと、いつも優しい気持ちになります。

夕方、リチャードさんの友人と3人で、ダライ・ラマと、ダライ・ラマの友人でウィスコンシン大学で教鞭をとっている神経科学者のリチャード・デビッドソン氏を特集したドキュメンタリー映画”Free the Mind”を観に行きました。

英語力の問題もあって、全部理解できたわけではないのですが、イラクやアフガニスタンからの帰還兵やこどもたちのPTSD(心的外傷後ストレス障害)に対して、瞑想と呼吸法がどのように脳や精神状態に影響を与えるかについての研究結果をまとめたものでした。

結論としては、精神的に安定する傾向がみられ、効果があるということでした。

わたし自身、ヨガや呼吸法に関心を持っているので、瞑想や呼吸法の重要性を思うと同時に、一見のどかで平和に見えるウィスコンシンにも、戦争の記憶に苦しんでいる人がたくさんいることを思いました。

”Change your mind, Change the world(ひとりひとりの考えを変え、世界を変えよう)゛というパネルディスカッションのスローガンに共感しつつも、「瞑想や呼吸法が重要だ」という話だけにまとめてしまってはいけないように思いました。

その後食事をしながら、映画の感想や、わたしの修士論文のテーマだった隠れキリシタンのことなど、たくさんお話をして、ご一緒したリチャードさんの友人の方と仲良くなりました。

とても素敵な方で、いい友達ができて嬉しいです。

マディソン滞在記4

2013年05月19日 | 2013 マディソン滞在記
2013年5月19日(日) 晴れ

今日もよく晴れて過ごしやすい一日でした。
午前中は近所の教会へ。
教会の102周年記念日で、たくさんのひとがつめかけていました。
ゴスペルの素晴らしさに圧倒され、牧師さんの歌のうまさにびっくりしました。
なんでそんなに上手い人がごろごろいるんだ~( ̄◇ ̄;)

夜は、リチャードさんのお友達のホームパーティーへ。
お友達の姪御さんの卒業記念パーティーで、和気あいあいとした雰囲気でした。

マディソンの人々は、優しくてフレンドリーな人が多いです。
目が合うとにっこりほほんでくれて、スーパーでたまたま居合わせたひとやお店のひともしょっちゅう冗談を言って笑っています。

ニューヨークは、鮮やかなビタミンカラーを着た人や、都会的な装いをした人が多い印象でしたが、マディソンの人は、カジュアルな普段着に大振りなアクセサリーを合わせたり、綺麗なシャツの色にぴったり合わせたピアスをしていたりと、さりげないお洒落が上手な人が多く、道行くひとを見るのも楽しみのひとつです。

まだ時差ボケが治らないので、夜3時間ぐらい寝ると目が覚めて、ものすごくおなかが空いて眠れなくなり、りんごやフルーツを少し食べてまた眠り、お昼にも1~2時間ぐらい眠る生活が続いています。

でも起きている間は元気で、お茶碗を洗ったり車で移動している合間にブルースやスキャットを教わっています。

リチャードさんの口から飛び出す「チョットマッテクダサイ」「イタダキマス」「ドウゾオサキニ」「メンドクサイ(←最近のお気に入り)」といった日本語がすごく面白いです。

マディソン滞在記3

2013年05月18日 | 2013 マディソン滞在記
2013年5月18日(土) 

お天気がよく、爽やかな風が吹いていて、長袖のシャツ一枚でちょうどいいくらいでした。

夜6時から、ウィスコンシン州会議事堂の近くにあるグレース・エピスコパル教会であった、リチャードさんの生徒さんのリサイタルを聴きに行きました。

コントラバスのDUOの演奏は今回初めて聴いたのですが、とても美しかったです。
荘厳な音色が、教会の雰囲気にとてもよく合っていて、心が洗われるようでした。
リチャードさんもとても誇らしそうで、演奏がおわるたびに「素晴らしい!」と何度もおっしゃっていました。

演奏は休憩をはさんで8時までで、そのあと、出演者のご家族の手作りのケーキとお菓子がふるまわれ、とてもあたたかい雰囲気の音楽会でした。


♪演奏プログラム♪

・Piano Sonata No.11 in A Major,K331(W.A.Mozart) 第一楽章
・Concerto No.2 in B minor(G. Bottesini) 第二楽章
・Sonata No.2, Op.6(A.Misek) 第一楽章
・Adagio from Ballet Suite No.3(D.Shostakovich)
・A Carmen Fantasy(F.Proto) 
・Un Petit Recueil(A.Pena)第二楽章
・Incantation Pour Junon(F.Rabbath)
・Beau Soir(C.Debussy)
・Concerto,Op.3(S.Koussebitzky)第二楽章
・Meditation From Thais(J.Massenet)
・A Peace for Richard(S.Roane)
・Passione Amorosa(G.Bottesini) 

マディソン滞在記2

2013年05月17日 | 2013 マディソン滞在記
2013年5月17日(金) 

今日は朝から雨が降り、雨があがったあとも肌寒い一日でした。
念の為持ってきたスプリングコートが役に立ちました。

お昼間に、ベースの初心者のかたの個人レッスンを見学させていただき、わたしもクラリネットで少しだけ参加させていただきました。

ブルースの練習と、チャーリー・パーカーの曲のメロディーのアーティキュレーション(音のつなぎかた、区切り方、表情のつけかた)を教わりました。

夜はリチャードさんが教鞭をとっておられるウィスコンシン大学芸術学部の学生さんのリハーサル見学へ。
クラッシックのコントラバスのデュオで、素晴らしい内容でした。

明日はその生徒さんたちのコンサートを聴きに行く予定です。

マディソン滞在記1

2013年05月16日 | 2013 マディソン滞在記
2013年5月16日(木) 

今日から3ヶ月、素晴らしいベース奏者のリチャード・デイビスさんのお宅に居候させていただくことになりました。

何年か前に山口県でおこなわれたジャズのワークショップ(参加型の授業)でお逢いして以来、ほんとうの娘のようにかわいがってくださり、感謝してもしきれない思いです。

お部屋には、原爆の被爆者のかたちへの寄付や、平和と人権にかかわる活動に対するおびただしい表彰状が飾られています。

山口県のワークショップで、リチャードさんや、バリー・ハリス、ルイス・ナッシュといった超一流のミュージシャンのかたの美しい音と、音楽や人生に対する向き合い方にふれたことで、文字通り人生が変わりました。

たくさんの音楽仲間にもそこで出逢うことができ、自分自身が何のために音楽をしていきたいのか、確信を持たせてくれた時間でした。

今回、音楽の勉強に来させていただいているのですが、リチャードさんの人種差別撤廃のための活動や、ライフヒストリーなどをお聞きして帰りたいと思っています。

きっとあっという間に楽しい時間は過ぎると思いますが、一日一日が楽しみです。

2012 Sheila's workshop report vol.5

2013年05月11日 | 2012 Sheila's workshop re
"Bebop Lives( Boplicity)"

-music by Miles Davis
lyrics by Ray Passman& Holly Ross
Arrangement by Bill Mays

vol.5はいよいよインプロヴィゼーションです。


課題曲として、シーラさんが”Boplicity”という曲を配られました。最初にシ―ラさんが歌い、その後みんなで何回か楽譜をみながら歌います。(←この曲、初見で歌うにはすごく難しくて何度も字余りになりました・・・-筆者談。笑)

Sheila:
この曲は、典型的なAABA形式(注1)の曲ですね。


(注1):AABA形式;AABC形式と並んで、多く作られている形式です。
年代で分けると1950年代以前はAABA形式が、1960年頃からはAABC形式に移行し、70年代以降はAABCが主流となっています。
ジャズのスタンダードナンバーのほとんどがこのAABA形式かABAB形式です。さらに大きな特徴として小節数もほとんどが同じで、A8小節、A8小節、B8小節、A8小節の32小節で構成されます。(Freedom Music School [作詞講座第一章 作詞の基礎知識12]より一部抜粋)http://www.freedom-vocal.com/archives/836 )

Sheila:
(みんなが歌うのを聴いて)悪くないわね!すごく感動してるわ。
それでは曲の始めに戻って、すこしライン(little line)のようなものをつくりたいと思います。これは即興(improvise)するためにわたしがよく使うものなの。

(シーラさんが二分音符でつくったラインをみんなも一緒に歌う。

具体的には、単音で、Bb→C→D→C,Bb→C→D→C,。。。。というようなラインです―筆者注)


Sheila:
即興(improvise)をするとき、必ずオリジナルのメロディーから派生します。
メロディーを知らなければ、歌詞があってもなくても、即興はできません。
メロディーを知らなければ、かならず途中でわけがわからなくなります。かならず迷ってしまいます。

飛行機が飛んで、どこかへ行っても、最後には必ず着地するように、着地点(=メロディー)をかならずわかっていてください。

さあ、improvise(即興)しましょう。

(シーラさんが参加者のなかから4人募り、前に立たせる)。

Sheila:
ではまずはじめにメロディーを歌詞と一緒に歌い、そのあと、ラインを歌って、そのあとに8bars(8小節ずつインプロヴィゼーションを交代で演奏すること)にしましょう。
ほかのみんなも一緒に歌うんですよ。

(歌詞つきでメロディーを一回歌い→ライン→8barsを2回ずつ→ピアノをはさんでの8小節ずつ歌う-8 bars-を2巡する。
1組目が終わったあと、ほかの4人を2組呼んで同じことをさせる。)


とてもいいわ!

このジャズのワークショップでわたしが伝えたいことは、みなさんに自信(want to give you a confidence)を持ってもらいたいということです。

決して歌うことをあきらめないでください。
もし、ピアニストやベースプレーヤーを見つけて、演奏してもらえるのならば、どんどん歌ってください。
セッションに参加することもできます。

あなたたちは、すばらしい音楽(wonderful music)と、たくさんのエネルギー(a lot of energy)、そして美しい心(beautiful spirit)を持っています。

なにかあればわたしにEメールで連絡してください。
最後に、今日すばらしい伴奏をしてくれたピーターに拍手を♪

(一同拍手)

あたたかい空気のなかでワークショップが終わりました。


(筆者より)

これで、ワークショップレポートは終わりです。
この日、インプロヴィゼーションは初めての方もたくさんいらっしゃったのですが、誰かが即興をするときに、ほかの参加者から拍手や励ましの声があがって、とても楽しいセッションになりました。

シーラさんのすごいところは、参加者のかたの緊張をほぐすのがほんとうに上手なところで、それは、暖かいお人柄によるものかなと思います。

音楽を通して、自信(confidence)を持ってほしいとおっしゃっていたとおり、音楽の根本にある、人としての生き方を教えておられると感じました。次の日の、ご自分のライブのときにも、" You are beautiful.(あなたたちは素晴らしい)"と何度も、観客に向かって言っておられたのが印象的でした。

8月に、シーラさんと友人のジェイ・クレイトンさんがヴォーカルコースの講師を務めておられる、Vermontのサマープログラムに昨年に引き続き今年も参加させていただく予定です。

またプログラムの様子もレポートしたいと思っていますので、そちらもよろしくお願いします♪

2012 Sheila's workshop report vol.4

2013年05月11日 | 2012 Sheila's workshop re
vol3まで、ふたりのかたについてくわしくシ―ラさんの指導の内容をお伝えしてきました。

あとの参加者のかたについては、くわしい説明は割愛したいと思います。
最初のふたりの方たちへの指導の中に、その後の指導のエッセンスが凝縮されていて、重複する箇所が多いと考えるからです。

シ―ラさんの指導内容のポイントをわたしなりにまとめると、以下の4点です。

1)一緒に演奏するひとが見やすい楽譜を用意する(できれば歌詞も書く。とくにRubatoがあるときは必ず書くこと)

2)歌い始める前に、イントロダクションとエンディング、テンポについて、自分のビジョンを明確に共演者に伝える(簡潔に。)

3)カウントをきちんと出す(リズムパターンに合わせたカウントの出し方がある。)

4)歌詞を話す(say, speak)練習をする。

この練習は、歌う練習とは切り離して、すべての曲について行う。


ほかの参加者の方の曲を記しておきます。

・”A sleepin' bee” (swing)
・”Too late now" (ballad)
・" It don't mean a thing” (swing)
・”Day by day" (bossa )
・ "Easy living" (ballad)
・"Fly me to the moon" (bossa)
・”Good Bye"(ballad)
・"Over the rainbow" (ballad)
・" All of me" (swing)
・ "The shadow of your smile" ( from verse , chorus-slow bossa)

参加者が持って行って歌ったほとんどすべての曲について、シ―ラさんが細かい箇所まで歌詞を完璧に暗記されていることに、あらためて驚きと感銘を覚えました。

ひとり1曲ずつ歌ったところで、vol.5では後半戦、インプロヴィゼーションに移ります♪

2012 Sheila's workshop report vol.3

2013年05月11日 | 2012 Sheila's workshop re
"Lush Life"         

-words and music by Billy Strayhorn


( 参加者がピーターさんのところにいって曲について説明する)

Sheila:
それでは、イントロはどんなふうにするのですか?

(アルペジオです、と参加者が答える)

Sheila:
ヴァ―スはつけますか?

参加者:
はい。

Sheila:
みんな、ヴァ―スVerse(注1)は知っていますね?
多くの曲にはverseがついています。曲のイントロダクションの部分ですね。

注1)verse(英); 楽曲構成上、リフレイン(コーラス)の前に配置された序奏部分を指す。
リフレイン部分よりは短く、比較的平易に作られている。バースは歌ものに多く見られ、時には楽曲の冒頭部分に省略する事のできないバースが組み込まれる事もある。( ”音楽用語辞典” http://www.craftone.co.jp/cfa/Dictionary/index.html より)


verseを歌わない歌手も多いですが、ヴァ―スも歌うんですね?

参加者:
はい。

Sheila:
昔の曲にはverseがついている曲が多かったんですよ。
なぜかというと、映画のなかの曲が多かったからなの。
フレッドアステアがロジャースに歌っていたようにね。

ダンスをするまえに、”That's a wonderful to see you~♪”こんなふうに歌って、そして、ダンスをしたり、スイングしたりしてたの。

verseは必ずしもrubatoにする必要はないんだけど、rubatoにすることが多いです。
では、verseをうたって、合計1コーラス歌うのですか?

参加者:
いいえ。2コーラス歌います。

Sheila:
なにか特別なエンディングはありますか?

参加者:
いいえ。
ゆっくり終わる(slow down)だけです。

Sheila:
それでは、こんなふうに演奏者に伝えてくださいね。
「アルペジオでヴァ―スから始めて、2コーラス歌い、だんだんゆっくりにして終わります。」というふうに。


(ピーターさんがアルペジオを弾く)

Sheila:
あなたはこの曲の意味を知っている?

参加者:
ええ、あなたが教えてくれたんです。

途中から、mediumのSwingにテンポがかわり、最後はゆっくりになって終わる。

歌い終わった後、シ―ラさんから”Nice.”と声がかかり、ピーターさんから、「ここのコードはこっちのほうがいいんじゃないかな。」というアドバイスがある。

Sheila:
この曲はみんな知っているように、とても重い内容の曲なの。
この曲を書いたビリーストレイホーンはアルコール依存症で(注2)、この曲は彼自身について書いたものなの。
彼自身を蝕んだ、アルコールについての曲なのよ。

(注2)実際には、ビリー・ストレイホーンがこの曲を書いたのは、18歳頃だったと言われており、自分自身について書いたというよりは、その後の彼の人生が奇しくも自分自身が書いた曲のようになったというのが実際のところのようです(―筆者注)。

Sheila:
あなたがやったように、途中でアップテンポにすると、この曲全体のエッセンスが失われると思うわ。
少なくともわたしはそう思うの。
わかるかしら?
テンポを変えることはできるのよ。でもそんなに速くしないほうがいいと思うわ。
だめだと言っているのはないのよ。だけど、そんなに速くない方がいいと思う。
ほんとに酔っぱらってるみたいになっちゃうから。

わたしはこの曲にほんとうに深く共感できるの。
なぜならわたしもアルコール依存症を克服した経験があるからよ。
だから、テンポを変えるとしてもそんなに速くないほうがいいと思うわ。

それじゃあ歌詞にうつりましょう。
とてもいいんだけど、ちょっとだけわかりにくいところがあったの。
読んでもらえるかしら?


(参加者が読み始め、途中ですこし間が空く)

Sheila:
これは、歌手のみなさん全員にきいてほしいの。
歌詞を話す(speak)ということは、歌手にとってはほんとうに難しいことなのよね。
歌手はみんな歌を歌えるし、その歌の歌詞を知っている。
だけど、歌詞を"話す"ことはできないのよね。
わたしにとっても、歌うことと歌詞を話すことは、すこし違ったエクササイズなのよ。
みんな歌える(can sing)けど、歌詞を話すことはできないの(can't speak)。

あなたたちが曲を覚えるときに必要な練習は、歌い方を覚えること、メロディーを覚えること、歌詞を覚えること、それから、その曲がなにについての歌なのか、深く入り込むことなの。

そのために、歌詞を言ってみてください(say the lyrics)。

誰かに語りかけるようにね。

(シ―ラさんがLush Lifeのverseをゆっくり語り始める。)


この練習をみんなも試してみてほしいの。
歌詞を見てもいいから、読んでみて。


(参加者が読みあげ、シ―ラさんがいくつかイントネーションや発音についてアドバイスをする。)

Sheila:
あなたたちが歌う曲すべてについて、こんなふうに音読(speak the lyrics)してください。
この練習は、英語の勉強に役立つだけではなく、あなたの感情(emotion)にとっても素晴らしい勉強になるのです。
そうすれば、ほんとうに、深く、歌を歌えるようになります。
とてもよかったですよ。


(一同拍手)

vol.4に続きます♪

2012 Sheila's workshop report vol.2

2013年05月11日 | 2012 Sheila's workshop re
"Come rain or come shine"


‐words by Johnny Mercer

Music by Harold Arlen

Sheila:
Come rain come shineですね。
大切なことなのでよく聴いてください。

この楽譜は鉛筆で書かれていますね。
これはとても読みにくいです。
これはあなただけではなく、みんなに言えることなんですよ。
楽譜には、メロディー、コード、歌詞を書くので、
五線のあいだがもう少しあいているほうがいいです。

今日は仕方ないですが、これからは歌詞も書くようにしてくださいね。
そのほうが、一緒に演奏するひとにとってより演奏がしやすいのです。
お互いによくしらないひとと一緒に演奏することもありますから、
できるだけわかりやすい譜面を用意した方が、問題が起こりにくいのです。
このままでも悪いわけではないのですよ。
でも、歌詞も書いた方が、よりよいのです。

それでは、ピアノソロはなしで、歌だけに集中してやりましょう。

もし見たければ今日は譜面を見てもいいですよ。
自分が歌う曲の歌詞を覚えるのはとても大切なことです。
けれども、今日はワークショップなので、歌詞を見てもかまいませんよ。

それでは、いろいろなイントロをデモンストレーションしてみます。
ピーター、アルペジオ[Arpeggio;分散和音]をください。

(ピーターさんがアルペジオを弾き、シ―ラさんがルバート[Rubato;柔軟にテンポをかえる奏法]で歌い始める。)

Sheila:
もしテンポをはずして(Out of time)歌いたいのであれば、楽譜に”Rubato”と書いてください。

歌詞を楽譜に書く必要があるのは、ピアニストやほかの演奏者は、Rubatoで演奏する時、楽譜に書かれた歌詞を手がかりにして演奏するからです。

2小節のイントロ、4小節のイントロなど、イントロについても、楽譜に書いておいたほうがいい場合は書いておいてくださいね。

ではアルペジオをもう一度。

(ピーターさんがアルペジオを弾く。)

次はコードで。

(ピーターさんがコードを弾き、シ―ラさんがテンポをつけて歌い始める。)

もし2小節のイントロなら・・・これは2小節に限らずテンポをつけて歌うときにはいつも言えることですが、
あなたはカウントを出す必要があります。

1,2,3,4・・・・(ピーターさんが弾き始める。)

Sheila:
さあ、これまでアルペジオ、2小節のイントロ、4小節のイントロを演奏しましたね。
大体、バラードの場合は、アルペジオか4小節のイントロが多いです。
アルペジオの場合は、アルペジオのあとで、Rubatoで、あるいはテンポをつけて歌い始めます。

どうかわたしを信じてください。

いまわたしがあなたたちにお話していることは、あなたの人生においてきっと大きな助けになりますよ。
多くのミュージシャンたちが歌手と一緒に演奏するのを嫌がる理由のひとつは、
歌手が、自分がどう歌いたいのかをきちんと共演者に伝えないからです。
あなたは自分がどう歌いたいのかわかっているはずです。
わたしはあなたにそれを一緒に演奏する人にきちんと伝えてほしいのです。

たとえば、4小節のイントロをください、アルペジオをください、というように。

たいてい、8小節のイントロはスイング[Swing](注1)の場合です。

注1)Swing;ジャズ演奏の躍動的なリズムを形容する用語。本来は「揺れる」という意味。
転じて1930年代に社交ダンスと結び付いて人気を得たベニー・グッドマン、グレン・ミラーなどのビッグ・バンド・スタイルを「スウィング・ジャズ」と呼ぶ様になった。更に、バウンスやハネと同じ意味で 使われる事もあり、リズム・マシンなどに見られる音符をバウンスさせる機能を一般 にスウィング機能と呼ばれている。
("音楽用語辞典 http://www.craftone.co.jp/cfa/Dictionary/index.htmlより。)


Sheila:
バラードで8小節のイントロということはほとんどありません。では、8小節でSwingを歌ってみましょう。

(シ―ラさんがスキャット[scat;歌詞ではなく、音をあてて、即興的に歌う唱法]で歌い始める)


それから、ワルツ、ボサノバがありますね。
ワルツやボサノバでは、Vamp(注2)と呼ばれるイントロがあります。


注2)Vamp; 特定のメロディ・ラインが示されず、シンプルなリズム・パターンを主体として構成された部分、及びその演奏を指す。通常2-4小節を単位として繰り返され、メロディを導入するために使われる事が多い。("音楽用語辞典 http://www.craftone.co.jp/cfa/Dictionary/ha.html より)

Sheila:
Vampのあいだ、あなたは好きなことをしていいんですよ。

もし共演者がVampを演奏してくれている間にだれか知り合いがきたら、そのひととずっとおしゃべりしていたっていいのです(笑)

(ピーターさんがVampをしばらく演奏し、シ―ラさんがMy favorite thingsを歌い始める。)

それから、わたしが嫌なのは、歌手がこういうことをするときです。

(シ―ラさんがピアノの近くに行き、一音鳴らす。)

こういうの、見たことありませんか?
歌手がピアノをぽーんと一音だけ鳴らして、ステージに行くの。
これってないでしょう?

(「そんなことするひといるのかい?」とピーターさんが驚いたように言い、シ―ラさんが「いるわよ!」と答える。)

そんなことをせずに、ちゃんとピアニストに、アルペジオを弾いてください、とか、コードを弾いてください、というようにお願いした方がいいわ。

それから、エンディングにもいろいろあります。
最後の1小節、2小節をゆっくりにする方法や、最後の何小節かを繰り返す(Turn Around)方法もあります。


わたしは、いつも必ずエンディングを楽譜に書いています。
イントロは変えることもあるから、書かないこともあるけれど、
エンディングは危険だから必ず書くの。


(ピーターさんが弾き、シ―ラさんがいくつかのエンディングを実演してみせる。)

Sheila:
さあ、これでイントロとエンディングがわかりましたね。

それでは、ピアニストに、どういうふうに歌いたいかを簡潔に伝えてください。
「曲について伝える」ということが、今日わたしがみなさんに教えたいことです。


参加者が前にでて、ピーターさんに伝える。
「4小節のイントロで、バラードで、最後の4小節をくりかえして(tag ending)終わります。お願いします。」

どう歌いたいかを簡潔に伝えた後で、カウントを出してくださいね。

(参加者が1コーラス歌う。)

いいわ。
それじゃあ、歌詞について見ていきましょうね。
ところどころ、イントネーションが違うところがあったので、イントネーションの練習をしてくださいね。
あなたの英語は素晴らしいわ。
ただ、途中すこし歌詞が違っているところがあったので、歌詞を読んでみてください。

(参加者が歌詞を読む)

あら、さっき歌った歌詞と違うような気がするわよ(笑)
続きを読んでみて。

それでは、happy together, unhappy togetherという箇所を言ってみて。

(参加者がいい、シ―ラさんはunhappyのイントネーションを訂正する。

それからピーターさんに指示して、ブルースにあわせて、unhappyを何度も歌わせる。)

いいわよ。
これ(ブルースに合わせて同じ単語を歌いながら練習する)はわたしが考え出した練習法なの。
さっきは歌詞を見てなかったから歌詞をまちがえたのかもしれないわね。
イントネーションの練習をしておいてね。
でもあなたのフィーリングはとても素晴らしいわ。
とってもlovelyだったわよ。

(一同拍手)

Vol.3に続きます♪