建設現場の卵

建設現場からのエッセイ。「建設現場の子守唄」「建設現場の風来坊」に続く《建設現場の玉手箱》現場マンへ応援歌。

VEの本音(2)

2009-05-02 10:03:12 | Weblog
         …………………………(VEの本音 2)……

 作業命令を出す上司も嫌いだが、VEをしなければ現場の業績が上がらない、つまり方向性の違うVEにて利益を出して、更に上役に出世した所長さんは一人や二人ではない。

 とある現場での会話。 
                     
「おい、お前、VEで二百万出せ」                 
 ムカッとしつつも、                       
「手を抜けって事ですか?下請けの支払いを値切れって言うのですか?」
「何でもええから、予算より金を残せるものを探し出せ」       
「では百本以上ある杭をそれぞれ1メートル短くしましょうか」    
「構造設計のW先生に頼んでみようか?」
「・・・(冗談も通じないのかよオ)・・・」

 こんな会話を現場監督さんが冗談抜きでするのである。
 耐震偽装でもなんでもあり!を発信せざるを得ないのは、背広組の注文からである。
 会社を揚げて総力で技術力を加えれば、安くて良いものが出来るという金科玉条を、VEだと名づけて、この世界に通用させようと本気で考えたのは間違ってはいない。

 それがいつしか、労務費は削られない、材料の数量は減らせないならば、何を減らすのかとすれば見えない所で質を落とす……
(ならば手抜きせよ)
って事を「VEせよ」って言い換えているだけじゃないの!

 一級建築士としての誇りがあれば、イイものを創ろうっていうポリシーがあれば、追加工事(請負者金の増額)になるけれども設計変更をしたくなるものだ。
 それを反対に考えて、例えばタイルの大きさは変えないで、違うメーカーの同等品を見て、
(少し光沢が落ちるかな?)
 と思っても素振りには出さないで、
「これで決めてもらえば○△万円差額が出て……儲かる」
 と皮算用をする。
 監督さんが悪いだけではありません。

「見積りを購買部に出したが、予算の関係で不足分は《現場でVE》してもらえよ…」
 と契約締結時に暗に言われた、と下請けの親方も泣き付く。
 工事契約をする時から設計図と違うもので決定してもらわないと、材料も仕入れられないし職人に賃金も出せなくなるから、VEと言う言葉を自分流に頻繁に用いるのだ。

 もう組織ぐるみでボタンを掛け違えていて『偽装』と言うのでは済まされない事態だ。

「VEとはコストを下げる為の代替案では決してない」
 と私がいくら唱えても、今の時代では誰も振り向いてもくれない。
 安い物を見つけた者が勝ったような顔をしているのが、無性に腹が立つのだ。
『品質を落とすと信用も落とす』
 という事に何故気がつかないのか。
 企業の経営努力に加えて、コスト縮減に協力するという役所の方針は絵に描いた餅であったのか、創る側が勝手に方針を解釈したのか私には分からない。
 だが、建設業界に「VEして儲けを出せ」と言っているようにしか私には思えない。

 VEの達成率を現場間で競わされて優劣を評価されるならば、見えないところで手を抜こうと先に話た杭の長さとか、鉄筋の本数を減らそうかとか私なら考える。
《バレたらとぼける土建業》と開き直れば、偽装建築はスーパーゼネコンから広まるであろう。

 現在のVEを本来の目的に戻せないのだろうか?
 そんな中でさえゼネコン各社がISO認定取得を競っているのは、背広組の発想から金儲けに目がくらんでいるからとしか思えない。
 単なる一物件・一つの建物として総てを処理していても、創った人達がその建物を使用するのではないから、赤字の現場だったから…ではいつまでも《いい建物》は創れませんね・・・。

                    《続く》・・・コメント待ってるからね~
コメント (1)
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