…………………………(教え方 1)………………
「何だこれは?すぐ直せ!」
「どうすればいいのですか?」
「見て分からんのか!(ボケッ)」
新入社員の頃よりも少し現場経験を積んだ頃から、所長になるまでよく聞いた会話である。
自分なりに工夫したのに頭ごなしに叱られる。
もう教えてもらえると言う雰囲気ではなくて、説明すらしてもらえないまま上司を見る。
自分の能力のなさを知る機会ではあるが、職人さんに作業指示をする立場になっても、監督業務を総て把握出来る実力がないので、現場が変わる度に上司から言われたものである。
建設現場の内面は新技術・新工法・新材料があふれている時代でもあったが、設計図に
書かれていても現物を見てないまま現場監督をしている事も多いのである。
今でも、工事事務所には新製品のカタログやサンプルの一部が棚の上に所狭しと並んで
いて、扱い方も理解しないまま、自分流に解釈して工事を進めるのが大半である。
自分流に解釈して操れるという近代的なものに『パソコン』がある。
今の若者はパソコンを利用して手際よく、段取りをとるのが素早い。
若者にしても私でさえも、パソコンは教えてもらうよりも、自分で触れながら習得した
もので、先輩からの指図はなかったのである。
しかし、パソコン嫌いの先輩達はパソコンを理解しようとも触れてみようともしない。
理由は一つである。
教えてもらうまでもない簡単な操作を、教えられる時に恐怖を感じているのである。
「見ればわかるだろう」
と見下していた言葉がパソコンの前から出てくれば、先輩の威厳は消滅する事になる。
だからと言って、一から人に教えてもらう教育を受けるのは、先輩には耐え難いもので
あり、こっそり一人で学習するテキストがバカ売れするのも、そこが狙い目である。
相手の身になって上手に教えられなかった人は、若者からクリック・ドラッグの言葉さ
え教えてもらっても上の空であり、パソコンアレルギーから脱せられないのである。
又、三角関数等の数学で公式すら分解したくなる理工系の人間と、公式をそのまま暗記
し、外れるとお手上げの文化系の違いが、パソコンの操作でも如実に現われるから面白い。
操作手順に書かれてなくても、何とか出来るのではないかとガチャガチャ動かして、裏
ワザの発見をするのは大抵、理工科系の人であり、現場で使う新製品のカタログを見も、
今までとそんなには違わないだろうと決めて無視するでもなく、自分流に納得しているようである。
営業マンの施工内容のカタログを鵜呑みに信用している訳ではないが、中でも深川所長
さんの現場の場合はプッツンになった。
「図面(設計図)を見れば分かるだろ!」
「設計図のとおりのはず…ですが……」
「この新製品では納まりが悪いから今、変更中だ!」
「では、何を見るのですか?」
「悪いところを見て、直しながら仕事をさせろ、見れば分かるだろ?」
「(全たく…ワカルかよ!)」
確かにカタログ用のモデル現場と、今工事中の現場とは同じ状態ではないから、カタロ
グの通りに仕上がらない不自然さが当然発生する。
だから見るポイントが違えば仕事の手順も違うのに、所長と同じ目で見ろと言ったって
無理な話である。
それに深川所長は今しがた設計担当者と1時間ほどその件で打ち合わせをしていて、結
論が出たのか出ないのか私に説明もしないまま、
「新製品の不備が分からないのか!」
と言い、自分の能力を誇る顔である。
「設計図と違う内容に、私が勝手に変更した」
と思い込んで、二週間前に火が着くほど叱られていたこともあり、
「設計図の通りで何が悪いンだ、今ごろになって変更ならば……」
(アンタ勝手にやりなよ!…)
と気分は冷めてしまった。
言葉や図面で表しても、職人さんにはこちらの意思が通じない場合は多々ある。
《教え方 2へ 続く》
「何だこれは?すぐ直せ!」
「どうすればいいのですか?」
「見て分からんのか!(ボケッ)」
新入社員の頃よりも少し現場経験を積んだ頃から、所長になるまでよく聞いた会話である。
自分なりに工夫したのに頭ごなしに叱られる。
もう教えてもらえると言う雰囲気ではなくて、説明すらしてもらえないまま上司を見る。
自分の能力のなさを知る機会ではあるが、職人さんに作業指示をする立場になっても、監督業務を総て把握出来る実力がないので、現場が変わる度に上司から言われたものである。
建設現場の内面は新技術・新工法・新材料があふれている時代でもあったが、設計図に
書かれていても現物を見てないまま現場監督をしている事も多いのである。
今でも、工事事務所には新製品のカタログやサンプルの一部が棚の上に所狭しと並んで
いて、扱い方も理解しないまま、自分流に解釈して工事を進めるのが大半である。
自分流に解釈して操れるという近代的なものに『パソコン』がある。
今の若者はパソコンを利用して手際よく、段取りをとるのが素早い。
若者にしても私でさえも、パソコンは教えてもらうよりも、自分で触れながら習得した
もので、先輩からの指図はなかったのである。
しかし、パソコン嫌いの先輩達はパソコンを理解しようとも触れてみようともしない。
理由は一つである。
教えてもらうまでもない簡単な操作を、教えられる時に恐怖を感じているのである。
「見ればわかるだろう」
と見下していた言葉がパソコンの前から出てくれば、先輩の威厳は消滅する事になる。
だからと言って、一から人に教えてもらう教育を受けるのは、先輩には耐え難いもので
あり、こっそり一人で学習するテキストがバカ売れするのも、そこが狙い目である。
相手の身になって上手に教えられなかった人は、若者からクリック・ドラッグの言葉さ
え教えてもらっても上の空であり、パソコンアレルギーから脱せられないのである。
又、三角関数等の数学で公式すら分解したくなる理工系の人間と、公式をそのまま暗記
し、外れるとお手上げの文化系の違いが、パソコンの操作でも如実に現われるから面白い。
操作手順に書かれてなくても、何とか出来るのではないかとガチャガチャ動かして、裏
ワザの発見をするのは大抵、理工科系の人であり、現場で使う新製品のカタログを見も、
今までとそんなには違わないだろうと決めて無視するでもなく、自分流に納得しているようである。
営業マンの施工内容のカタログを鵜呑みに信用している訳ではないが、中でも深川所長
さんの現場の場合はプッツンになった。
「図面(設計図)を見れば分かるだろ!」
「設計図のとおりのはず…ですが……」
「この新製品では納まりが悪いから今、変更中だ!」
「では、何を見るのですか?」
「悪いところを見て、直しながら仕事をさせろ、見れば分かるだろ?」
「(全たく…ワカルかよ!)」
確かにカタログ用のモデル現場と、今工事中の現場とは同じ状態ではないから、カタロ
グの通りに仕上がらない不自然さが当然発生する。
だから見るポイントが違えば仕事の手順も違うのに、所長と同じ目で見ろと言ったって
無理な話である。
それに深川所長は今しがた設計担当者と1時間ほどその件で打ち合わせをしていて、結
論が出たのか出ないのか私に説明もしないまま、
「新製品の不備が分からないのか!」
と言い、自分の能力を誇る顔である。
「設計図と違う内容に、私が勝手に変更した」
と思い込んで、二週間前に火が着くほど叱られていたこともあり、
「設計図の通りで何が悪いンだ、今ごろになって変更ならば……」
(アンタ勝手にやりなよ!…)
と気分は冷めてしまった。
言葉や図面で表しても、職人さんにはこちらの意思が通じない場合は多々ある。
《教え方 2へ 続く》