……………………(生コンクリート 1)…………
セメント・砂利・砂に水を加えてかき混ぜてコンクリートになるのは、何となく分かるでしょうが、昔、日本人の設計者が練り上げたコンクリートを初めて見た時には、
「こんなどろどろしたものが固まっても、大したモノにならない」
と従来のレンガ積み工法に設計変更を余儀なくしたという東京駅の逸話も残っている。
今では、車を運転していれば市街地を生コン車が走り廻っているのをよく見かけるし、工事現場前の車道の左隅にコンクリートポンプ車と並んで止まっているのも珍しくもなくなった。
車線を一つ占領して、交通の流れに迷惑が発生しようとお構いなく、ガードマンが生コン車を誘導してコンクリートの打設工事が行われる。
生コンを打設している時には前日までの配筋検査・型枠検査・修正確認検査などの苦労話等は跡形も無く消えて、躯体(その階)の区切りがひとまず終わった事を喜べる一日でもある。
コンクリートの思い出として・・・。
建設業の中で最も活気があり、仕事の大半を占めるのがコンクリート工事でしょう。
生コンの無い時代には現場で練る設備、つまり大型ミキサーを設置して、砂と砂利をダンプで運ぶ段取りをして、雨が当たらないようにセメントを置く小屋を作って水を溜めるタンクを置いて、コンクリートを大事に大切に扱っていたものだそうです。
私は学生時代にコンクリート打設のアルバイトをしましたが、手押しのネコ車(一輪車)を押すのがやっとでした。
土工の人達は威勢よく上手に足場板の上を通行していましたが、時には転倒して途中でコンクリートをブチ撒けて親方から、
「バカヤロー!大事なものをコボすな!」
と怒鳴られているお兄さんもいましたね。
監督さんはミキサーで練り上げる係りとそれをタワーリフトで上の階に合図して(垂直運搬)をいかに手際よくしてコンクリート打設をするかが現場の華のようだったのを覚えている。
私が入社した頃は生コンが市場に出回っていて、コンクリートポンプ車の
数は少ないものの、
「コンクリート打設は重労働」
のイメージはほとんどなくなっていた。
それでも、工事基準計画書の中には現場練か生コン購入か、それにタワー打設かポンプ打設かをそれぞれ選ぶ項目があり、予算と対比する重要なポイントでもあった。
それが今は、生コンはコンビニで売っていてポンプ車はレンタカーのごとく、簡単に手配出来るのだから、建設現場も楽になったというか大きな進歩をしたものだと思うのである。
生コン工場に電話一本で用件は済むのである。
しかし、ここに重大な監理ミスが発生するのである。
「お前、生コンの補正はいつからだ?」
「えっ?(補正?なんじゃいな)」
コンクリートは使用する場所によって強度が設計図に示されているが、冬の期間は外気温度により固まるまでが遅くなり、強度を左右する1週間経過日までの強度発現の低下防止対策として温度補正値を加えた強度の生コンを手配する。
地域によって違うけれども一日違いで補強値が上のクラスになる境日も当然ある。
打設当日が昨日より暖かくても、補正値のアップした生コンクリートを打設せねばならないお役所管理に矛盾を感じない訳ではないが、設計強度に達するまでの4週間分の平均外気温を予想すれば、補正値も納得せざるを得ないのだ。
補正とは強度アップさせる事だから当然「生コン単価も高く」なる。
一日違いの事ならば、職人のケツを叩いてでも、値段の安い方で打設する事を当然考える。
だが、天候や検査のトラブルに振り回されてやっと打設になった時が一日遅れていても、補正値変更の連絡をしなければ、強度不足のコンクリートを運んで来ることになる。
生コン工場もその区切り日は要注意日であり、自動的に強度アップしていれば問題はないけれども、数十種類もある生コンクリートの中から早朝に配送するのであるから、新データのインプット遅れが発生するのもいなめない。
時には新聞紙上を賑わすような、強度不足のコンクリートだったとか、ヒビが入った等の事件を聞くが、工場は建設現場から指示された強度の生コンクリートを出荷するのだから、強度不足の責任は強度指定をした側にある。
同じ指定の強度でもスランプ(柔らかさ)・砂利の大きさにより配合は数種類にもなり、それぞれの配合報告書を事前にチェックして、出荷する生コンクリート工場がJIS認可工場であろうとも、構造担当者による配合計画書の承諾を受ける必要がある。
問題なのは一度の打設数量が工場の出荷能力を超える場合である。
《生コンクリート2 へ続く》