……………………(生コンクリート 2)…………
問題なのは一度の打設数量が工場の出荷能力を超える場合である。
A工場とB工場の生コンクリートを比較すれば、先ずセメントメーカーは違うし、砂・砂利の仕入先も違うから、建物に打ち込んだら平均値の品質が確保できると言うものでもない。
岐阜県での現場の場合は3工場から均等に搬入するように、神の声が発せられるのは常であったが、品質監理から見れば設計監理者の言われる事に両手を挙げる気持ちは失せていた。
昔話を続ければ、
「こんな硬いのじゃマメだらけになる、柔らかくしなければ配管が詰まって打設出来ない」
と、土工の親方がスコップ振り上げて、駆け出し時代の私を追い廻して来る。
狭い型枠の中に上から流し込むのであるが、水道の水のように水平に流れて行くように突き均す筈が、少し硬めなので《カキ氷状態》になってしまうのだ。
突くのは、バイブレーターよりも竹の棒が主流で、突くと柔らかく流れて行くものでもない。
コンクリートを柔らかくするのは簡単である。
生コン車の中に水を加えて、再度ドラムを回転させてかき混ぜてからポンプ車に嘔出する。
これでは折角の配合計画から規格外の生コンクリートになるのであり、水を加えた結果は半年~2年以内にコンクリートの表面にヒビとなって正直に現れる。
水を使って練り混ぜたものは、熱処理というかカマドにいれて焼き物(例・土瓶)にしない限り、ヒビは発生する。
コンクリートは自然界にさらして乾燥(強度発現)させるのであるから、必ずヒビは入るから、
『加水してもしなくてもヒビに対して言い訳が出来る』
と教えられたこともある。
加水したコンクリートの建物は窓から45度方向にヒビ割れが入り、雨水も入り、応急処置が一目で分かる色になり、その見苦しい一筆書きの補修色で外壁を惨めな姿に晒している。
もう一つの話題に、
「百㎥の型枠の中に百㎥の生コンを搬入しても満タンにならない」
と私に教えて、
「お前の工場は空気まで売るのか!」
と生コン工場長に青筋立てて、怒っていた所長もいた。
確かに大気中で混ぜて作る普通の生コンの中には、空気が4%強含まれているのです。
そして、生コンを突き固めているうちにその空気は空中に逃げてしまうので、
「百㎥生コンを注文しても96㎥しか実際にはなくて、4㎥分は空気なのだ」
と一気に言われると、もっとものように考えられる。
しかし、それは間違っていて、生コンの配合計画書は千㏄を千40㏄に置き換えて比重計算をしてあるから、計算上の1㎥は生コン車から出る1㎥と実質量は同じである。
生コン打設に際し搬入予定を自分なりに計算したものと、実際の打設数値と比較すれば何故か予定数量を超過してしまい、空気のせいにしたくなるのだ。
しかし、現実には型枠の中には鉄筋が7%以上組んであるのだから、計算式が間違いなのか型枠の外へこぼれ出たのかを振り返る事です。
*********** ************* **************
打設中の現場管理のポイントを話ましょう。(テイエラ72号 抜粋)
コンクリート打設中は鉄筋が乱れていないか、型枠が膨らんでいないか、搬入予定数量で足りるのか等、現場を終始巡回します。
状況判断の的確さを要求されながら打設が終わる中で、最大の難問は常に時間に絡む事です。
工場出荷から輸送時間を含めて1時間以内に型枠の中に打設終了せねばならぬ決まりから逆算すれば、現場から最も近い工場を選択するのが第一歩です。
しかし、工場には時間当たりの出荷最大能力があり、現場ではポンプ車の打設能力を考慮して1時間25㎥、1日250㎥打設が限界と言えるでしょう。
打設中にポンプ車の故障が起きるとか、配管の中が詰まるとか、型枠がズレるなどで打設作業が止まっても時間は止まってくれません。
1時間近く経過した生コンは賞味期限切れであり、固まりが始まります。
均一に固まってこそ躯体と言えるのですから不良生コンは廃棄処分しかないのです。
コンクリートが出来上がってこそ、建築物そのものが半永久的に地球に残せるのですから、未来につながる良いモノを創りたいものですね。
生コン打設の監理は「時間」との真剣勝負です。
生コンの 賞味期限は 1時間
ここから生まれる
躯体の命(いのち)
《続く》・・・コメント待ってるからね~