冷え冷えとした闇の幕が裂け、鋭い太刀風が秋山小兵衛に襲いかかる。正体は何者か? 小兵衛・大治郎が非道に挑む表題作。江戸に出たまま帰らぬ息子を探しにきた信州の老剣客へ温かい手をさしのべる秋山父子――「老虎」。暴漢にさらわれた老舗の娘を助ける男装の武芸者・佐々木三冬――「三冬の乳房」ほか「鬼熊酒屋」「悪い虫」「妖怪・小雨防」「不二楼・蘭の間」。シリーズ第二作。裏表紙より。
ご覧の通り2作目です。
元の本は1973年5月。
鬼熊酒屋
題名の『鬼熊』とは居酒屋の名前。
亭主の熊五郎がどんな人物なのかと言いますと・・・
「てめえらのようなやくざどもに、安い酒をのませてやっているありがたさを忘れ、つまらねえことをくだくだならべやがると、その鼻の穴へ出刃包丁を突っこみ、鼻糞ぐるみ、その形のよくねえ鼻っ柱をえぐりとってやるからそうおもえ!!」こういうジジイ。
そんなジジイに爆発ジジイがちょいとお節介する話。
「わしも、もう六十になったのだもの。若いお前には、おもいおよばぬ屈託があろうというものさ」「友情」というと安っぽいというか・・・なんか合わない。
「くったく・・・・・・?」
「老人だけがわかるこころもちなのだよ」
『老人だけがわかるこころもち』、ね。
辻斬り夜道で襲われるも、逆に襲撃者をあっさりぶちのめした小兵衛。
(む、今度は・・・・・・)
直感したとたんに、突如・・・・・・。
闇の幕が裂け、するどい太刀風と大兵の男が、矮躯の小兵衛を押し潰さんばかりに襲いかかった。
「またつまらぬものを・・・」で話は終わらず、逃げた襲撃者をつけて火元を探るの巻。
「父上も物好きな・・・・・・」まったく!これだからジジイは!
「いかにも、な。六十になったいま、若い女房にかしずかれて、のんびりと日を送る・・・・・・じゃが、男というやつ、それだけでもすまぬものじゃ。退屈でなあ、女も・・・・・・」
1回おはるにブッ飛ばされればいい。
そして辻斬り騒動の真相を知った小兵衛、いよいよ命を狙われる。
(ともあれ、いよいよ、ゆだんのならぬことになったわい)どこまでもいつまでも、「剣を捨てる」ことはできそうもない。
久しぶりで、血がおどってくる。
だからこそおはるや三冬が夢中になるんだろうけど。
秋山父子の活躍にスカッとする話。下衆共ざまぁwww
老虎∧_∧
真崎稲荷裏の、大治郎の道場には依然として入門を乞う者があらわれなかった。
いや一人、いる。
女武芸者・佐々木三冬が大治郎へあずけた飯田粂太郎少年は、このごろ、道場へ泊りこみのかたちになってしまったようだ。
/\( ・∀・)/ヽ
( ● と つ ● )
\/⊂、 ノ \ノ
し’
【祝】大治郎、ようやくまともな門人を獲得
この日、このとき、秋山大治郎が父の家を訪れなかったら、彼は久しく会わぬなつかしい人に、おもいがけなく出合うこともなかったろうし、ひいては、その人にかかわる事件に巻きこまれることもなかったろう。もしも・・・もしも・・・
人びとの、日常における何気ない行動にも、その人びとの人生にぬきさしならぬ意味がふくまれ、波瀾もひそんでいるのだ。
すぐ悪いケースも考えるのがボクの悪い癖。
大治郎が見つけたのは、諸国をまわって修行していたとき世話になった老剣客・山本孫介。
風体は『田舎剣客』でも、『実戦さながら』の流儀・四天流を修めた剣の腕は一流。
江戸に出かけて帰ってこない息子を探しにきたらしい。
秋山父子が息子探しに力を貸すも、事の真相はやりきれないものがある。
いつであったか、小兵衛がこんなことをいったことがある。・・・小馬鹿にした目が見える/(^o^)\
「わしはな、大治郎。鏡のようなものじゃよ。相手の映りぐあいによって、どのようにも変る。黒い奴には黒、白いのには白。相手しだいのことだ。これも欲が消えて、年をとったからだろうよ。だから相手は、このわしを見て、おのれの姿を悟るがよいのさ」
「先生・・・・・・よう、先生・・・・・・」JIJII、BAKUHATUSIRO。
灯を消してからも、おはるが、なやましげにささやいてくる。
「なんだよ?」
「明日も、また、客を泊めるの?」
「わからぬ、まだ・・・・・・」
「もう、いや」
「なぜじゃ?」
「だって、もう・・・・・・」
「だって、もう?」
「四天流、山本孫介!!」山本孫介の剣はガチ。
悪い虫男は辻売りの鰻屋・又六。
父の家を辞し、真崎稲荷裏の我が家へ帰って間もなく、客が一人、あらわれた。
大治郎へ入門申しこみの男であった。
ぺこりとあたまを下げた又六が、緊張のためか、この寒いのにびっしょり汗をかいて、やっとこ貯めた5両(現代の50万相当)で、どうしても強くなりたいと大治郎に頼み込む。
「剣術を、教えてくんなさるか?」
「教えぬこともないが、なんのために剣術をおぼえたいのかね?」
「む・・・・・・」
又六の、ふとくてまるい鼻のあたまが、汗に光っていた。
「わ、悪い奴にばかにされたくねえから・・・・・・」
「剣術の修行は10年でもまだ足りない」と話す大治郎だが・・・
「せめて十日のうちに、強くなりたい」いくらなんでも無茶言うな。
と、いう。
それ以上、商売を休んだら、どうにも食べて行けない。
大治郎は、又六の扱いに困った大治郎は、小兵衛に相談。
(ばかばかしい)
と、おもいはしたが、又六の異常な決意を感じて、無下にもことわれなかった。
「たのンます、たのンます。お前さまがききとどけてくれねえのなら、おれ、死んじめえてえ」
又六は、そうもいった。口先だけのこととはおもえぬ。
「やってみることさ。むりにもな。だって、そうしてもらいたいと、又六が申しているのじゃろ?」逃げてー。又六、逃げてー。
「それはまあ、そうですが・・・・・・」
「わしが、手つだってやってもよい。うふ、ふふ・・・・・・」
こういう天気の日暮れには、よく鰻が売れるのである。君もたった10日で強くなれる!
秋山式トレーニング法はここをクr
三冬の乳房ガタッ
(いかに、わたしが秋山先生を、お慕いしたとて・・・・・・どうにもならぬことじゃ)三冬、乙女すぎる・・・
なればこそ、小兵衛に会うのが辛い。
三冬は胸ひとつに秘めた恋の苦しさに堪えながら、わざと、小兵衛を訪ねようとしないのであった。
しかし小兵衛がおはる(三冬と同い年)とイチャついてる件を知ったらどう動くか。
ドン引き・・・?
いや自分にもチャンスがあると見るか?
ともかく恋する乙女な三冬が誘拐犯をぶちのめすところからスタート。
「先生。また今夜もいないの?」JIJII explode.
「うむ」
「せっかく、先生の好きな納豆汁を、こしらえようとおもったのによ」
さも不満げに頬をふくらませるおはるの、このごろはめっきりと肉置きの充ちてきた腰を下から抱き寄せた小兵衛が、
「そりゃ、お前。ぜひとも食べさせてもらおうよ。それから出て行けばよいのじゃ」
「それだけじゃあ、いやですよう」
「なにを、どうしろというのじゃ?」
「だって・・・・・・」
「だって?」
それは、鶯の声ものどかな、春の昼下りのことであったという。最後の最後まで題名の件はすっかり忘れていたよ・・・。
緊迫の展開(爆発は含まない)が続き、さらに真相は意外なものでありました。
妖怪・小雨坊ジ爆し。
「ふうむ。わしも、こんなに妖怪どもがいたとは知らなんだわえ」
小兵衛は、おはるにも見せ、
「夜中に出るぞ」
などと、おどして、
「いや、いやいや・・・・・・」
おはるにかじりつかれ、よろこんでいたものである。
小兵衛の周囲に突如あらわれた『小雨坊」の正体とは?
「弥七。すぐさま、やってのけよう。用意をたのむ。なれど、かまえて手出しは無用。もし、わしが化けものに斬られたら、お前たちは逃げよ」これまた緊迫の展開。
いやあ、小雨坊は強敵でしたね・・・真面目な話でね。
不二桜・蘭の間小兵衛と仲良しの老医・小川宗哲の言。
「どうも近ごろは、万事が贅沢になり、金また金の世の中になってしもうたが、そのくせ、人の暮しに余裕が無うなったようじゃ」
江戸の時代描写というより、著者の実感なんじゃ・・・
ま、200年前にしろ40年前にしろ、異常ありませんということか。
(こりゃいかぬ。とんだ悪い癖がついてしまったわえ。これも、横川鉄五郎が小判を数えてたのしむのと、同じことなのではあるまいか・・・・・・)「他人の話を盗み聞き(してさらにお節介)するのはワシの悪い癖」
老顔をしかめ、白髪頭を掻いたのである。
本当に悪い癖だよ!
3巻目の「陽炎の男」が近所のブックオフに無かった。
仕方ないから、次の休みはちょっと遠くのブックオフに行くとする。
ほ、ほら!外出すると『波瀾』に出合うかもしれないしネ!