◎人間の心の奥底は考えていた以上に深く、底知れず、混沌としていたことがわかり、またこの心の奥底と、いわゆる外見が荒唐無稽、非科学的に見えるものには密接な関係のあることを知った・・・。 <本文「しめくくり」より>裏表紙より。
生命はどこから来たのか、難病に苦しむ人へ、人間は死んだらどうなるか、など人類普遍のテーマに興味深く平易に迫る名エッセイ。
元の本は1987年8月。
ここだけ見ると『人類普遍』で「重そう」な話に見えるけど、中身は軽め。
Ⅰ 生と死について考えるこれだけなら人生は挑戦だ的なちょっといい話、だったのに・・・
馬鹿馬鹿しい昼寝の話
人間、やろうと思えばやれるのだ。絶望してはいけない。勇猛果敢に難事に挑まねばいけない。諸君、わかったか。
私も非常に羨ましくなった。そしてその瞬間、心をかすめたのは、うちの婆さんも、コロリといってくれねえかなあ、という不届ききわまる、善からぬ妄想だった。そうなれば、私だって、頑張って、二十代と・・・・・・。調子に乗るなぁ!
やってやるぜ!
これでも・・・喰らえぇぇぇ!
・・・TOAの小説版は、大胆アレンジとでもいうのか面白い構成だった。
Ⅱ 東京について考えるううむ、確かに観光名所的なところで石碑を見て楽しかった覚えは無い。
人生の楽しみかた
名所や旧跡とは他人から教えられて行く場所ではない、自分で見つけるものだと私は思っている。誰もが出かけるような名所やみんなが知っているような旧跡はたいてい俗化しきっている。しかし、自分の好奇心が発見した名所や旧跡は、有馬セミナリオや「ランボオ」の跡のように、まだその面影をかすかに残しているものだ。
そういう場所に行けば、
(ここは俺だけが知っている)
という悦びが起きる。そして一人でその味をこっそり楽しむことができる。
なるほどナー・・・
楽しいことは、眼を光らせればあちこちに幾つも転がっている。この私の「楽しみかた」を具体的に知りたければ、ぜひ文庫本になった拙著『走馬燈』を読んでくれたまえ。これは私だけの名所旧跡、発見記だから。いい本ですよ。6ページもかけて回りくどい宣伝してんじゃねぇよwww
Ⅲ 自分と他人と動物について考える( ゜д゜)
読者からの手紙
「現在、三十八歳になる独身女性です。まことに身勝手ですが、あなたさまはきっと顔がお広いと思いますので、わたくしに良縁と思われる男性を御存知でしたら、お世話いただけませんか」
こういう手紙を年に二、三度ぐらい、もらうことがある。
( ゜д゜ )
それにしても、近頃の独身男は昔の我々とちがって、結婚などそれほど欲していないのか、こういう話をもちかけても、ニヤニヤするだけで相手にもしてくれないのだ。そっかー30年前から既に若者の結婚観は変わってるんだね・・・って、
こんな女に食い付くような男がいてたまるかw
二十一世紀はどうなる我が家の本棚の中身はここに書いたのもそうでないのもほとんど文庫だけど、確かに「文庫化しているのだから良い本に違いない」という考えは捨てた方がいい・・・と思う。
昔は文庫は古典か、世評がしっかり定まったという名著名作に限定されていた。だから文庫に入れられることは長距離競走に耐える本となったという意味で、執筆者にとっては嬉しいことだったのである。
しかし今は、文庫に入れられることは昔ほど名誉ではなくなったことは確かだ。世評がこれを認めなくても、あまりに多くの本が次々と文庫にされるからである。昔は文庫は小さいながらもピリリと辛い趣きがあったのだが、今は「安いから」読者が集まるのであろう。
あるテレビ番組「アウシュヴィッツ収容所にいた人」をテレビで見たり、直接話したりした時の話。
あの老詩人が何も語らなかったのは、何も語れなかったからにちがいない。それを体験しなかった者に当時の苦しみを語っても無駄なことを、彼は諦めの気持ちで考えていたのかもしれない。テレビでも、戦後に生まれ育った息子が愚問を出すたびに、母親が絶望した表情をちらと見せたが、それはあの老詩人が私たちに抱いた感情だったのかもしれぬ。
・・・結局「知識としての理解」しかできない。
そういう意味で、助言のつもりで「他の人も大変云々」言い出す奴を俺は信じない。
「腕の骨折くらいどうした!腕を切断した人もいるんだぞ!」ってか。
へっ!切断した当人以外が、さも自分が乗り越えたかのごとく語るんじゃねーや!
Ⅳ 趣味と興味について考えるこういうの、普段から考えておかないとツッコミが入った時答えられないよネ。
茶席によばれたことがありますか
「茶道はわびだの、さびだの言っているが、そのくせ眼のとび出るような値段の茶器を使ってみたり、高価な花瓶や釜に執着している茶人が多い。これは矛盾してはいないだろうか」
この質問に――私は保証しておくが――茶を習っている女の子の九十パーセントは答えられないだろう。彼女たちはそれについて考えたことはほとんどないからである。
眠れぬ夜に読むとたぶん余計に眠れない。
「なるほどなー」から「うるせーよw」まで揃った名エッセイでした。