収賄事件でK島の診療所長に飛ばされた元国立病院内科部長の神崎は、ひそかに<ゼロ計画>なる犯行を企てた。成功すれば、大金と国外での甘い生活が約束されていた。一方、神崎のグループから逃走した一人の男が刺され、私立探偵左文字進の妻史子の腕の中で「阻止してくれ、ゼロ計画を・・・」のダイイング・メッセージを残して死んだ。<ゼロ計画>とは何か? 得意のテーマを得て著者が放つ長篇サスペンス・ドラマ。裏表紙より。
元の本は1977年12月。
・・・あらすじ紹介的な意味ではこの裏表紙だけで十分だよねぇ。
オチまで書いちゃったら仕方ないし、引用は中盤辺りまでにしてみる。
第一章 ダイイング・メッセージ犬も食わないのを繰り広げて外へ飛び出した史子。
「あんまり亭主風を吹かせるな」
と、史子がいったら、左文字は、
「そっちこそ、女房風吹かせるじゃないか」
と、逆襲してきた。
「女房風って何のことよ」
史子も、意地になっていい合い、それが、今夜の夫婦喧嘩の発端であった。他愛ないといえば、他愛ない。多分、二人が、まだ若過ぎるのだろう。
歩いている内に気が落ち着き、夫に電話をかけようと公衆電話に向ったその時、刃物で刺されて死にかけの男とぶつかる。
「阻止してくれ。ゼロ計画。十月――」結局その男は死亡。
「何ですって?」
「ゼロ――」
だが、男の声は、そこで消えてしまった。
ゼロ計画(プラン)とは一体何なのか?
左文字の青い眼が、史子の話につれて輝いてきた。「何かありそう感」は確か。
「ゼロ計画を阻止せよか」
「普通なら、自分を刺した犯人の名前をいうところよ。それを、ダイイング・メッセージとして、いい残したということは、きっと、何か大きな事件だと思うわ」
警察に伝えた結果、翌日顔馴染みの矢部警部が左文字の事務所を訪れる。
「もし、このゼロ計画というのが、天下を震撼させるようなことだったら大変だからね。何か該当するものはないか調べてみたんだ」ふーむ・・・あ、あれだ!
「それで、何かあったのかね?」
「正直にいえば、皆目、見当もつかん。範囲が広過ぎるからだよ。ゼロ計画とは、いったい何なのか」
「世界中のハニーたちに愛を届ける」ってそれゼロス計画やないかーい(ちーん)
はい、ごめんなさい。
キーワード(というかワード)は『ゼロ計画』『十月』の2つ。
男が死んだのは10月5日。何かあるにしても10月はまだ20日以上ある。
まさに『雲をつかむような話』だけど・・・
「何とか考えてみようじゃないか。人類の宝であるこの灰色の脳細胞を使ってだよ」
「被害者の行動をよく考えてみるんだ」よく考えた結果、<ゼロ計画>はあと数日で実行されると推測する左文字。
日時の次はその内容。史子や矢部警部と協力して考えるが・・・
第二章 第一段階収賄が発覚して離島に飛ばされた、元国立病院内科部長・神崎。
都落ちもいいところだった。
愛人の千津子の他4人の男と共に大金を狙う<ゼロ計画>の発案者である。
左文字たちが<ゼロ計画>を見極めようとしているのも知らず、
ソレはいよいよ実行されつつあったのです・・・。
千津子は、神崎の隣りに腰を下し、じっと彼の手を握りしめている。神崎の方は、ブラジル旅行をした時に見た混血娘の美しさを思い出していた。巨万の富を得て、ブラジルに住めば、ああいう美女も思いのままになるのだ。そんなことを考えていると、少しは落着けるからである。わかりやすくゲスい。
良い子の皆は、「うまくいけば大金がー」なんて話は信じたらいかんよ。
大体うまくいかないし、いったところで「発案者が」って話だからね!
第三章 ターゲット日時の推測はスパッとできたものの、内容の特定には苦戦する左文字たち。
「もう一度、検討しなおしてみようじゃないか」
と、左文字がいった。もうこれで、十ニ回目である。
矢部は、両手で顔をさすってから、空気王を思い出した。
「そのコピーにのっている事項は、もう十回も検討したんだよ」
「十一回」
と、史子が訂正した。
「十一回だろうが、二十四回だろうが、早く見つけ出さないと、事件を防げないんだ。M重工の東京本社から検討しなおそうじゃないか」
Q.検討してもわからなかったら?
A.もっと検討する
粘り強く検討を続ける左文字。
これこそ名探偵の姿だね!
「ちょっと待ってくれよ」その時・・・・!圧倒的 閃きっ・・・・・・・!!
と、左文字は、急に青い眼をキラリと光らせた。
しかし・・・
第四章 第二段階タッチの差で・・・ksg。
「ここまでは、まず成功だな」
神崎は、ほっとした顔でいい、煙草に火をつけた。
第五章 追跡ネタバレ回避のため中途半端に引用・・・って、
「爆弾を投げ込むのさ。
「とりあえず犯人の計画通りに進んでいること」は書いちゃってるって?
・・・ミステリーは基本そういう流れでしょう?
こんな時の左文字は、ひたすら強引である。警視総監の名前を出して、現場監督に、ダイナマイトと、電気式信管をゆずってくれるように頼んだ。この男、手段を選ばぬ。
これもまた名探偵の姿と言えましょう。
少しずつ犯人グループに迫る左文字。
ところが、事件は神崎すら予想しなかった方向に転がり始めるのです・・・
十津川警部でお馴染みの、
犯人の計画通り
→「最初から考えてみよう」
→圧倒的閃きっ・・・・・・・!!
→m9(^Д^)プギャーwwwwww
という流れでもうすぐ解決と思わせてからが本番。
同じくらいのページ数でそういうヒネリがある分展開は速く感じる・・・
いや、先が気になるが故に読むのが速くなるということかもしれない。
解説『アメリカ的に合理性を重んじ、日本的に人間的でもある』・・・ニ上洋一
日米両国の特質を持つ左文字は、アメリカ的に合理性を重んじ、日本的に人間的でもある。探偵役として、実に魅力に富んだキャラクターだといっていい。第四作「盗まれた都市」第五作「黄金番組殺人事件」で左文字の出番が失くなってしまったのは、誠に残念である。
左文字がカッコよく思えるのはコレか。
後の作品には出て来ないなら、前の作品である「消えた巨人軍」「華麗なる誘拐」を探してみようそうしよう。