「わしのレコード 見ておくれ」その3
ニール・ヤング「ハーベスト」
これまで紹介したキッスやクイーンは、実はレコードの音楽よりは帯の自慢でした。いろいろな趣向がありますが、アイドルのレア・アイテムみたいなもんでした、自分としては。
音楽という面から考えると、やはりニール・ヤングは外せません。CSN&Yの全員が天才と言われていますが、「Y」つまりニール・ヤングは特に「鬼才」とも評されていました。
彼のソロ4作目。前作「アフター・ザ・ゴールド・ラッシュ」のような閉塞感、絶望感の歌から、この4作目「ハーベスト」は、前向きな曲調が増えています。
まさに、苦難を乗り越えたあとの「収穫(ハーベスト)」を感じます。
俺はこれが彼の最高作だと思っています。だいたいの人はデビュー作が一番の出来なのですが、彼は4作目にピークをもってきた。そのへんも並みのミュージシャンとは格が違う。
収録された曲の多くが、後のアーティストにもカバーされた名曲ぞろい。たくさんの影響を与えたはずです。
ただ、おれが一番好きなのは、さほど評価されていないB面3曲目の「アラバマ」です。
名作映画「アラバマ物語」(原作小説のタイトルは「モッキンバードを殺すには?」)でも題材にされていますが、アラバマ州は苛烈な人種差別が横行していた地域。
N・ヤングは唱っている。
「アラバマ、呪わしい計画をもった愚か者 肩に重荷を背負って背骨を折ってしまった 君のキャデラックは片輪が溝に落ちてしまった アラバマ、何をしているんだ ほかの州はもう君を助けてはくれないのに」
最後に「ホワッツ・ゴーイン・ロング」(何が悪い方向に向かってしまった原因なんだろう。つまり、なんでこんなことになったんだろう)と終わる。
家柄しかない強権首相の顔色ばかりを伺っている「不自由民主党」の国会議員のみなさんに、今こそ聴いてもらいたい歌だ。
「アラバマ」。今の日本よりはるかに権力をもつ者が報道機関をも抑え込んでいた暗黒のアメリカ社会で、ここまで突き詰めて考えていた歌手は、すごいと思う。マーチン・ルーサー・キング、モハメド・アリとともにすごい人だと思う。
この歌に反意を示して、次の年、レーナード・スキナードが「スイートホーム・アラバマ」を発表する。「俺の古里をグダグダ言うな」と。
南部出身の同じ高校の卒業生でつくったバンドで、バンド名は高校の大嫌いだった体育教師の名前らしい。
しかし、意識してなんだろう。曲調が明るい。言葉も方言。いわゆる「南部弁」で「あんたの意見には反対だけど、けんかする気はないよ」って明るく歌っている。
この頃、発表するアルバムの中にミュージシャン同士の意見交換もあった。
やっぱり、話し合わないとね。「言葉」をもっているんだから、人間は。
ニール・ヤングは、メロディーもいいけど、まず、歌詞に注視してもらいたいですね。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます