「64(ロクヨン)」をイッキ読みした。
少し前にテレビで映画版のPRを盛んにやっていた。横山秀夫さんの作品は、古き良き、新聞記者が、まだちゃんとしていたころのことを忠実に再現してくれる。
「クライマーズ・ハイ」でもそうだったが、やはり家族を犠牲にして仕事をしてきた男の挽歌のようなニュアンスだった。
映画化され、人気も出たという。しかし、本当に見てほしい、いや、見るべき、現在の報道関係者や捜査関係者に、作品の「熱」は伝わるか。このところ接する記者をみると、悲観せざるを得ない。彼らから見ると「時代劇」に見えるのではないかと危惧する。
「64(ロクヨン)」の上巻の表紙に映画の出演俳優たちの顔が並んでいる。中央の写真の俳優は「クライマーズ・ハイ」のNHKのドラマでも主役を演じていた。
芸能人はさておき、記者も、刑事も、本物は絶滅しつつある。残念ながら現実だ。
横山さんが描いた世界は、架空ではない。
体も、心も、家族も削って、上司を怒鳴りつけながら仕事をしていた人は、20年ほど前は普通にいた。いまは絶滅に向かっているが。
そんな種の生き残りが、最近、近くに赴任してきた。横山さんの世界をいまでも「地」でいく。
相手がだれであろうと、噛み付くべきは噛み付く。
久しぶりに、刺激を感じた。
また、ちゃんとした喧嘩ができるかも。
7日間しかなかった昭和64年、テレビ番組はすべて崩御関係。それに飽きた人たちがレンタルビデオ屋に長蛇の列をつくった。
あれから、もう28年が過ぎたのか。横山さんや先輩の「熱」を少しでも伝えていかなくては、と思う。
「64」。読後感は、悪くない。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます