空から
闇夜の色をまとった物体が舞い降りる
数え切れないほどの
黒い紙吹雪のように
その漆黒の闇からさらに砕け散って
目の前のヘッドライトを浴びた途端
何事がおきたのだろうと
見まがうほどの純白の雪の華
赤子が掌をひろげたような雪の結晶
フロントガラスにぶつかって
その身を横たえながら
溶けながら
それでも必死にしがみつく
一つ一つがその人生なのか
手と手を取り合って
結んだか弱さに向かい風が襲う
後から降る雪のために
自ら溶けて冷やし
やがて雪は水となり
つぎの雪はみぞれになり
そのつぎの雪は白い姿を現そうする
誰かの人生は
誰かの人の命を土台して
消え入りながらでも
ありのままながらでも
一つの形を造ろうとしていくように
悠久の時代の
ときの流れの中で
人もこんな雪のように
健気で美しく
儚いものなのかもしれない
