
小学生の頃
両親がちょっと働きすぎて
二人揃って風邪こじらせたことがある。
クリスマスからお正月にかけて
だった記憶がある。
で、ここからは覚えてないんだけど
母が寝込んで動けない時
3歳、6歳離れてる二人の妹に
わたしがおむすび作って
食べさせてたらしい。
どんな代物だったんだろうと
想像するだにおかしいけれど
とりあえず私と妹らの
命を保つことはできたのだから
偉かった、おむすび
(と、私)
外に持って出るのだから
バイ菌が繁殖しないようにと
ラップで握るのがスタンダードに
なったのはいつのことか。
ましてや背に腹はかえられず
コンビニで買っちゃうなんてことに
背徳感を感じなくなったのは。
私の尊敬してやまない
お菓子教室の松本先生が
尊敬してやまないという
佐藤初女さんに
実際お会いすることができたのが
去年の春のこと。
彼女の生き方、考え方は
毎日をひたすら
飛んでくる仕事や育児や家事を
右に左に打ち返して生きてる
私にとって衝撃的だった。
とりわけ深く刺さったのが
食べること、食べ物に向き合う姿勢。
いのちをいただいて
じぶんのいのちにする。
講演会の翌日
ムスメが習ってきた
初女さんのおむすびは
これまで食べたどのおむすびより
おいしくてあたたかくてやさしかった。
すぐに動画を検索した。
初女さんの所作は
お米を洗うところから
すでに祈りのようだった。
今年の二月
初女さんはお空にいってしまわれ
もうあの姿を見ることは
できなくなってしまった。
松本先生の主催で
今日の会がひらかれ
初女さんにおむすびを
直接教わった、そのさんのデモのあと
みんなでおむすびを作った。
初女さんと同郷の、のっく先生による
けの汁のふるまいつき。




いつもにこにこしてるそのさんが
なんだか険しいお顔なのは
ちょっと緊張してるから、らしい。
かぶりつきで見てる子供たちの
真剣な瞳ったら。
デモの後、みんなで作る。
おわんにお米をよそう速度が
早すぎるって言われて
いつも急いでしかいない自分を
反省する。


けの汁は、粥汁が訛った呼び名だそう。
ごぼう、にんじん、だいこん、こんにゃく、
油揚げにふきにわらび。
滋味溢れる味。

いただきます。




ごはんのあとは
NHKで以前放送した
初女さんのDVDを
みんなで見て
それぞれ心にあることを
発表しあった。
初女さんがみんなに
何かを押し付けるのではなくて
みんながそれぞれの
環境や心持ちで
初女さんに映るじぶんを
見ることができる。
透明なひと、とは
そういう意味なのかも知れないと
思った。
帰り道
バッグに入った
タオルに包んだおむすびが
ムスメとの再会を待っている。