まくとぅーぷ

作ったお菓子のこと、読んだ本のこと、寄り道したカフェのこと。

border cafe 後編

2017-12-31 22:39:47 | 日記
駅で先生の車に拾ってもらい、走ること10分足らず。広々とした畑と細い川に囲まれた、大きな校舎が見えてきた。

駅までは徒歩だと20分。コミュニティバスも走ってはいるが、ほとんどの生徒は歩いて通学しているそう。

二階の多目的ホールに案内される。
まだ新しい机と椅子。机は台形や半月やそらまめみたいな形。
手洗いはついてはいるが、水は出ても排水がいまいち。
ホールの隣が控え室のようになっていて、そこに冷蔵庫や流しがある。

ホールの入り口付近ではブラスバンドが演奏したりするそうなので
ケーキ作りはホールの一番奥で行う。
机を5台並べ、そのうえにセッティング。今日はデモ含め6台を作る。
手慣れた先生の準備が完璧なので、ものの20分でスタンバイ。

おひるを食べながら、自分の高校時代のことなど話題に、窓の向こうに広がるのんびりした風景を眺める。
このあたりは白くて太いうどが銘産で、
小学生は社会科見学で「うど穴」を訪ねるのがお決まりなんだとか。

食べ終わるころにカフェの主宰、石井さんが現れる。
大きいひとだなぁ、というのが第一印象。さらに大きなギターケースをしょっている。スタッフからサンタ帽を渡され、被ってから、「俺、これ似合わないよ」と渋っている。
まあそういうのは似合うとかじゃなくて被る約束なのだ。
とか思ってたらなんとこちらにも回ってくる。
ええっ、これ、わたし被るのー?と思ったけど、
まあそういうものなのだから仕方ないので被る。

会場いちばん乗りは、元気な男の子と女の子。男の子は、よくお土産屋さんに吊るされている、レインボーカラーのうずまき柄のシャツを着ている。女の子の黒くて艶やかな長い髪には、スパンコールびっしりのリボン。

机の上のセッティングを見て
わぁ、いちご、食べたい、と大騒ぎ。
作らないと食べられないよ、と石井さん。
それから歌のリハをはじめる。今日はいろんな出し物があるらしい。

「歩いて帰ろう」「ラブリー」など、なんだかなつかしい歌も聞こえてくる。
ちびすけなムスメが夢中だったポンキッキーズ。あのウサギ、安室ちゃんだったんだよなぁ。

ふと、今の高校生がちっちゃいころに見てたテレビってなんだろうな、とおもったり。振り真似して踊ってた歌はなんだろう。

そこに、はにかんだ笑顔の女の子三人がやってきた。今日一緒にケーキ作りをしきる「ハンドメイキング部」の子たち。
ふだん、どんなものを作ってるの?と聞いたら、料理したりお菓子作ったり、と。
最近は文化祭でスコーンを焼いたそう。
「チョコがいちばん売れて、ごまが全然だめだった」んだって。
他にどんな味があったの?と聞いたら
「カレー」
えっ、カレースコーン?新しい、、とおもったら、なんか違う話だったらしい。
はじめましての大人に少し緊張したのかな。

気づけばホールには50人がところの高校生が、おやつを食べたり、ジュース飲んだり、カードゲームしてたり。
わぁわぁしてて大きな声じゃないと会話もできない。
石井さんがどこかから、マイクを調達してきてくれた。

ケーキ作りたいひとは奥のテーブル集合ー、と号令がかかると、
30人くらいが集まってきた。
まずはテーブル割り振りをしてから
みんなを集めて、先生のデモが始まる。
真剣な眼差しで見守る生徒たち。
いちごを並べるとき、サンドするまんなかには置かない、と説明しながら
「なんでかわかるひとー?」と先生が投げ掛けると
「切るとき邪魔だから?」と女の子。
ぴんぽーん。みんなで拍手。ちゃんと盛り上がってくれる。

スポンジをきちんと重ねて、上にクリームを絞るとこまでやってみせて
はい、あとは自由にどーぞー。

そしてなぜかところどころのテーブルに幼子が混じってる。
球技大会の手伝いに来てる母にくっついてきた妹ちゃんや、ボランティアさんの連れてきた子。
包丁の歯に不用意にさわろうとするのを、女の子が
「あっ、だめだめ、あぶない」ととめたり、
スポンジにシロップを打つのを男の子が優しくサポートしたり。

いちばん向こうの、メイクばっちりな女の子は椅子に座ってケーキ作り。
先生に聞いてはいたけど、ほんとにいるんだ、座ったまま製作。

デコレーションもそれぞれ個性的で、楽しく可愛らしい六台のクリスマスケーキ。

できあがったら適当にカットして分ける。
たくさんあるクリスマスのチョコプレートを、グループの人数分取ってきて、それぞれのお皿のケーキに飾る男の子。
あとから来る友達の分キープする女の子。
みんなおいしそうにあっというまに食べ尽くす。
テーブル拭くのを手伝ってくれて、ありがとうございました、と去る女の子。

ケーキを作るこどもの姿と
ケーキを食べるこどもの姿、
これ以上に可愛らしいものはないと
いつも思ってるんだけど

その愛らしさには
我らがミサリングファクトリーも
ここ、大和東高校も
一ミリの違いもない。

気づいてみたらそんなことは
とってもあたりまえのことだった。
なんだか安心した。

そのあとのYouTubeカラオケ大会で
ちびちゃんへのサービスに
アナ雪を派手な身振りで歌う子や、
切ない恋愛ソングを自分で選んで歌いながら、
「やばい、泣きそう」っていってる子や、
きっとこういうのが今の流行りなんだろうなと思われる、なんかよく聞き取れない低音のラップ的な歌を歌う子など
みてるわたしたちもとても楽しませてもらった。

帰るときに通った廊下に
就職が決まった子らの
お勤め先が貼り出されていた。
「パン製造」「一般事務」や
「巫女」なんていうのもあって
さっきあのホールで
おしゃべりしたり食べたり飲んだり
してた子たちが
春にはもう社会に出て行くのだなぁと思うとドキドキした。

今日、あの場所にいた
すべての子供たちが
来年のクリスマスも
楽しく美味しく
ケーキを食べられるように

それだけを祈りつつ。