港町のカフェテリア 『Sentimiento-Cinema』


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『アディオス・ムチャーチョス』 カルロス・ガルデル

2016-05-21 16:12:09 | アルゼンチンタンゴ

”Adios Muchachos”  Carlos Gardel



1928年にフリオ・サンデルスが作曲、セサル・ヴェダーニが作詞した世界的なにも有名なタンゴです。
歌詞では、病床に伏して天国に召される直前に仲良き友人に別れを告げ、あの世で待つ愛する恋人や母親のもとへと
旅立って行くという悲しい内容ですが、どちらかといえば従来の古典の殻を突き破ったムーディーな楽曲で、
アルゼンチンよりもヨーロッパやアメリカで受け入れられました。
欧州ではコンチネンタル・タンゴ化され、このブログの映画音楽史(322)でも紹介しましたように映画『歴史は夜作られる』の
挿入歌としても好評を得、1951年にはルイ・アームストロングによって”I get idea”というタイトルでヒットしています。
初期の暗い歌詞のタンゴなのですが、メロディーの美しさから唄われるよりも演奏のレコードが多いようです。

Adiós, muchachos, compañeros de mi vida,
barra querida de aquellos tiempos.
Me toca a mí hoy emprender la retirada,
debo alejarme de mi buena muchachada.
Adiós, muchachos. Ya me voy y me resigno.
Contra el destino nadie la talla.
Se terminaron para mí todas las farras,
mi cuerpo enfermo no resiste más.

↓はカルロス・ガルデルの『アディオス・ムチャーチョス』 YOUTUBEより



ついでにホセ・バッソ楽団を貼っておきます。
メロディー重視で、重苦しくて暗い歌詞を連想させないセンチメンタルな演奏です。

↓はホセ・バッソ楽団の『アディオス・ムチャーチョス』 YOUTUBEより


『ジーラ・ジーラ』 フランシスコ・カナロ楽団

2016-05-20 16:21:39 | アルゼンチンタンゴ

”Yira Yira”  Francisco Canaro



1930年にエンリケ・サントス・ディセポロが作詞・作曲、同年に上演された音楽劇の中でソフィア・ボサンが
唄ってヒットしたアルゼンチン・タンゴの古典的傑作です。
タイトルの”Yira yira”、この言葉は俗語でスペイン語の辞書にも載っておりませんが、「ぐるぐる回る」とか
「ふらふらとほっつき歩く」という意味のようで、別訳では売春婦を指すともいわれています。
この曲の歌詞はタイトルだけにとどまらず、俗語・死語・新造語などが多くかなり難解に作られています。
その内容は、女にふられた男の恨み節のようで、辛辣で極度の憎悪を感じ取れるのですが、逆に言えば、
道を踏み外した者とそんな道に追いやった社会を痛烈に批判しているかのようにも受け取れます。
こういった厭世的で意味深い内容であるからこそ俗語・死語などを多用したのかもしれません。

Cuando la suerte que es grela
fallando y fallando, te largue parao,
cuando estes bien en la via,
sin rumbo desesperao.
Cuando no tengas ni fe,
ni yerba de ayer,
secandose al sol.

↓はフランシスコ・カナロ楽団 (唄:アルベルト・アレーナス)の『ジーラ・ジーラ』 YOUTUBEより





『ア・メディア・ルス』 ファン・ダリエンソ楽団

2016-05-19 09:26:42 | アルゼンチンタンゴ

”A Media Luz”  Juan D'Arienzo



1922年にエドガルド・ドナートが作曲、カルロス・セサル・レンシが作詞したタンゴの古典曲で、世界でも広く
愛された名曲のひとつでしょう。
日本でも原題の他に『淡き光』あるいは『淡き光に』というタイトルでも知られています。
この曲は1925年にウルヴァイの首都モンテヴィデオのカタルーニャ劇場で上演された「ス・マヘスタ」という
音楽劇で女優兼歌手のルシー・クロリーによって唄われ大好評を博したと言われています。
歌詞は突然にコリエンテス通り348番地という住所で始まる洒落たもので、掲載する動画にはありませんが
二番の歌詞もフンカル局1224番という電話番号で始まっています。
淡い光のアパートの三階の愛の部屋の模様を綴ったアルゼンチン・タンゴとしては珍しく甘美でロマンチックな
楽曲です。

Corrientes 348(tres-cuatro-ocho)
segundo piso, ascensor
No hay porteros, ni vecinos,
Adentro cóctel y amor
Pisito que puso Maple,
piano, estera y velador,
un telefón que contesta,
una fonola que llora
viejos tangos de mi flor
y un gato de porcelana
pa' que no maúlle al amor.


↓はファン・ダリエンソ楽団(唄:ワルテル・グティエレス)の『ア・メディア・ルス』 YOUTUBEより



参考までに…
コリエンテス通りは、世界一道幅の広い7月9日通りを交差してブエノスアイレスを東西に貫く幹線道路です。
この交差点にアルゼンチンのシンボルであるオベリスコが建っていて、そこから東に向かうと348番地が存在します。
現在では雑居ビルとなっていて、娼婦が客を淡き光の部屋に誘ってエレベーターに乗るという面影はないようです。




『ママ恋人が欲しいの』 ニナ・ミランダ (グラシアーノ・ゴメス楽団)

2016-05-18 13:47:56 | アルゼンチンタンゴ

”Mama yo quiero un novio”  Nina Miranda



1929年にラモン・コジャソが作曲、ロベルト・フォンタイナが作詞した楽曲で、発表当時には大ヒットしたそうです。
1953年に日本の藤澤嵐子がアルゼンチン公演した時に、彼女が持ち歌として熱唱したことで、現地でも改めて見直され、
ニナ・ミランダやリベルタ・ラマルケなどもリヴァイヴァルとしてレコーディングを競う結果となりました。

Mama, yo quiero un novio
que sea milonguero, guapo y compadrón,
que no se ponga gomina
ni fume tabaco inglés,
que pa' hablar con una mina
use el chamuyo al revés.
Mama, si encuentro ese novio
juro que me pianto aunque te enojés.

↓はニナ・ミランダの『ママ恋人が欲しいの』 YOUTUBEより




ここで本場のブエノスアイレスで受け入れられた藤澤嵐子の『ママ恋人が欲しいの』を紹介しておきます。


『ママ恋人が欲しいの』 藤澤嵐子 (ミゲル・カロ楽団)

”Mama yo quiero un novio”  Ranko Fujisawa



藤澤嵐子についてはウィキなどに掲載されていますので人物紹介は控えますが、彼女がアルゼンチン・タンゴの
存在を日本中に広めたという功績は認めざるをえません。
私としては日本人の流行歌手には全く興味がないのですが、彼女だけはリスペクトに値する存在でした。

↓は藤澤嵐子の『ママ恋人が欲しいの』 YOUTUBEより

私は視聴していませんが、1958年のNHK紅白歌合戦で披露していたようです。



『さらば草原よ』 マリアノ・モレス楽団

2016-05-17 16:00:47 | アルゼンチンタンゴ
現在、名曲セレクションを連日で投稿していますが、ここで少しアルゼンチン・タンゴの名曲を挟んでみます。
当時の一般的な洋楽のくくりは軽音楽又はポピュラーと称されて、ポピュラーソング、ジャズ、ラテン、シャンソン、
カンツォーネ、映画音楽と共にアルゼンチン・タンゴもその範疇でした。
よってアルゼンチン・タンゴの名曲も「名曲セレクション」というカテゴリーで扱うべきなのですが、個人的には
”アルゼンチン・タンゴだけは別格”という強いこだわり がありますので、あえてアルゼンチン・タンゴのカテゴリー
として名曲セレクション風に紹介することにいたします。

『さらば草原よ』 マリアノ・モレス・オルケスタ・リリカポプラール

”Adios pampa mia” Mariano Mores



この曲は1945年にフランシスコ・カナロが監修したタンゴ・ミュージカル「パリのタンゴ」の挿入歌として、カナロと
モレスが共同で作曲しイボ・ペライが作詞したもので、当時沈滞していたタンゴ界を復活させた名曲です。
元々、「パリのタンゴ」は1913年に劇作家のフロレンシオ・パラヴィシーエが創作した音楽劇ですが、これを
シナリオライターのエンリケ・ヴェジョンが四幕劇に書き直してカナロとペライが共同で演出したものでした。
歌詞には、強い愛着を持った大草原パンパを離れるにあたっての郷愁が込められており、その楽譜にも
「タンゴ・カンペーロ」すなわち田舎風のタンゴと記載されていて、歌詞はもとより演奏の冒頭にはパンパの
地元音楽であるマランボを取り入れて田園風景を強調しています。

Adiòs pampa mia!
Me voy. Me voy a tierras extrañas.
Adios, caminos que he recorrido,
Rios, montes, y cañadas,
Tapera donde he nacido.
Si no volvemos a vernos,
Tierra querida,Quiero que sepas
Que al irme dejo la vida.
Adiòs! Que al irme dejo

↓はマリアノ・モレス・オルケスタ・リリカポプラールの『さらば草原よ』 YOUTUBEより

唄っている歌手はカルロス・アクーニャです。