『禁じられた遊び』 Jeux Interdits (仏)
1952年制作、1953年公開 配給:東和 モノクロ
監督 ルネ・クレマン
脚本 ジャン・オーランシュ、ピエール・ボスト、ルネ・クレマン
撮影 ロベール・ジュイヤール
音楽 ナルシソ・イエペス
原作 フランソワ・ボワイエ 「木の十字架・鉄の十字架」
主演 ポーレット … ブリジッド・フォッセー
ミッシェル・ドレ … ジョルジュ・プージュリー
ドレ家父親 … リュシアン・ユベール
ドレ家母親 … スザンヌ・クールタル
ベルテ・ドレ … ロランス・バティ
ジョルジュ … ジャック・マラン
フランシス・グーアル … アメデー
司祭 … ルイ・サンテーブ
主題歌 愛のロマンス (Romance de Amor) ギター演奏・ナルシソ・イエペス
第二次大戦下のフランス、ドイツ軍の機銃掃射で両親が被弾し、戦争孤児になった五歳のポーレットは愛犬の屍を抱いたまま
森の中をさまよっているうちに農民のドレ家の少年ミッシェルに出会いそこに引き取られる。やがてドレ家の家族に可愛がられ
一家に溶け込んでいく。ポーレットはミッシェルに愛犬の屍を土の中に埋めてもらったことからいろんな動物の墓づくりをはじめ、
ミッシェルは墓には十字架が必要だと言って霊柩車や教会から十字架を盗み出し、二人だけのお墓遊びが始まった。しかし、
あちこちの十字架がなくなる不審な事件もミッシェルが犯人だと知れて父親からそのありかを問い詰められるがミシェルは口を
割らなかった。翌朝、ドレ家に憲兵が訪れてミシェルの必死の懇願にもかかわらずポーレットは孤児院に引取られることになる。
ポーレットは混雑する駅の中で「ミッシェル」と叫ぶ声を聞くと、ミッシェルの名前を叫びながら雑踏に呑み込まれていく。
この作品は、戦争孤児になった少女と農家の少年の純心な交情を綴ったフランソワ・ボワイエの原作小説の映画化で、
ルネ・クレマン監督は子供たちの純粋さを通して戦争の悲惨さを訴え、ほのぼのとした農村の牧歌的な雰囲気の中に強烈な
冷酷を秘めることでより一層の悲哀を訴え、反戦映画の金字塔と称される傑作に仕上げました。
特に直接的な戦争シーンを避けて、無垢の少女の眼を通して戦争の悲劇を表現し、詩情豊かに反戦を訴えています。
そしてボーレットの本当の悲劇はこれから始まるという残酷なラストシーンに反戦の意思を集約しています。
絵画的な画面作りのために数多くの複写を取り寄せて光と影による明暗の効果を再現したといわれる映像構成も見事です。
映画のラストシーン 【YOUTUBE】より
また、主題歌の『愛のロマンス』はナルシソ・イエペスのギターがしっとりと哀愁を漂わせて最大限の効果を上げていました。
『愛のロマンス』 ナルシソ・イエペス 【YOUTUBE】より
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「旅の友・シネマ編」途中報告
私が選んだトップテンは以下のようになりました。
(皆様方とはかなりズレていると思っています)
①野いちご (瑞) イングマール・ベルイマン
②8 1/2 (伊) フェデリコ・フェリーニ
③処女の泉 (瑞) イングマール・ベルイマン
④情事 (伊) ミケランジェロ・アントニオーニ
⑤嘆きのテレーズ (仏) マルセル・カルネ
⑥甘い生活 (伊) フェデリコ・フェリーニ
⑦第七の封印 (瑞) イングマール・ベルイマン
⑧自転車泥棒 (伊) ヴィットリオ・デ・シーカ
⑨オルフェ (仏) ジャン・コクトー
⑩禁じられた遊び (仏) ルネ・クレマン
ここで、改めまして私の個人的な映画観を示しておきます。
基本論として映画の本質は映像表現です。
私の評価は芸術の基本要素である『技術・思想・創造力』に準じて『映像美学・魂の叫び・映像表現』に重きを置いています。
それら三つの要素で仕上げられた映像が媒体となって鑑賞者の心を揺り動かすことのできる映画を求めています。
すなわち、オリジナルな映像美学によって、作者(監督)が何をどのように訴えたいのか、そして時空を利用したそ映像を
用いてその感覚をいかに表現することができたか、ということに尽きるということです。
私にとって映画はストーリーを観るだけものではありません。
ストーリーをもって映画を評価するなら、映画になる以前にシナリオでその価値が決まってしまうことになります。
また、アメリカ映画に代表される物語中心で起承転結が明確でなおかつ勧善懲悪、とどの詰まりは正義の押し売り、
スターをヒーローに仕立て、お涙頂戴でハッピーエンドというパターンにはどうしても【映画】としての価値を見出せません。
この後も「旅の友・シネマ編」を続けますが、私の独断と偏見によって上述のように選定しておりますので、皆様のご期待に
沿えないかもしれませんが、ご容赦いただけますようお願いいたします。