失業中

　失業をして1年以上無職のお客のアサやんが来た。

　私 「まだ仕事ないんかいな？飲みに来て大丈夫か？」
　客A「まあ、なんとかいけるてるわ。ビール頂戴」
　私 「アサやんはアサヒやろ。はい」
　客A「マスター、まあ一杯飲みや」
　私 「働くようになってからよばれるわ」
　客A「なんでーな」
　私 「仕事がない人にビール注いでもろても、ビールが喉通れへんわ」
　客A「うーん、そない言われると返す言葉ないわ」とグイッとビールを飲んだ。
　私 「ちょっと、ちょっと、ビールは飲んだらアカン。舐めーや」
　客A「な、なんでーな？」
　私 「飲んだら早(ハヨ）減る。お金無いんやからチビチビいきや」
　客A「そうやなあ、滅多に来られへんからなあ」
　私 「そうやろ、ビール飲まんと雰囲気を味わいや」
　客A「そない言われると、ビールが喉通らんようになってきたわ」
　私 「それはそうと無職やったら退屈やろ。毎日、何してんの？」
　客A「そうやなあ、退屈やから散歩したり、家でテレビを見たり…」
　私 「散歩はやめとき。お腹が減るから。そのうちに食事代も底つくで」
　客A「俺、賢いやろ。パチンコも競馬も止めてん」
　私 「止めたと言うより、お金が無くなったから出けへんようになっただけやろ」
　客A「痛いとこつくなあ。さあ、歌でも唄うわ。何がええ？」
　私 「“今日でお別れ”…。貯金も底突いてきたから、もう飲みに来られへんから」
　客A「今の俺にピッたしの曲やなあ、寂しなってきたわ」

　3時間程経過。
　客A「もう、そろそろ帰るわ、この煙草の吸殻、ラップに包んでんか」
　私 「そうそう、仕事してないんやから、シケモクも粗末にしたらアカン」
　客A「マスター、おあいそしてんか」
　私 「3500円や」
　客A「3500円かいな、えらい安いやん。ほんだら2000円にまけてんか」
　私 「まけてて、そんなんやってたらこっちが失業するわ。巻き込む気か」
　客A「仕方ないなあ、はい、これ。釣りはいらんは取っといてや」
　私 「これこれ、釣りはいらんて、これ1000円札や、全然足らんがな」
　客A「ごめんごめん、はい、これ」
　私 「おっ、アサやんには珍しい、1万円札やんか。これ透かしあるか」と透かして見る。
　客A「やめてーや。コピーと違うで、本物やで！」
　私 「最後の一万円札やろ？よう福沢さんの顔を見ときや。最後の別れの言葉は無いか」
　客A「福ちゃん、また、俺のとこ帰ってきてや」
　私 「ちょっとアサやんの顔をよう見せてんか、次、いつ会えるかわからんから」

　一句：この不況　再就職も　ままならず
　謎かけ：失業中とかけて、お昼休みと解く、どちらも(求職中・給食中)です