新型コロナ「50歳未満は自然治癒の可能性」感染症学会が見解
新型コロナウイルスの感染が世界各地で拡大するなか、政府が全国の小中学校、高校、特別支援学校を3月2日から春休みまで一律に休校するよう要請したことが波紋を広げている。こうしたなか、日本感染症学会と日本環境感染学会は、「50歳未満では、肺炎を発症しても自然治癒する例が多いため、抗ウイルス薬を投与せずとも経過観察で良い」として、症状が無かったり、軽い場合は、1週間で症状が良くなるため自宅安静で十分だという考えを示した。
先行きが見えない不安
今は感染拡大を防ぐ瀬戸際の時期だ
厚労省によると、27日現在の国内の感染者数は210人、クルーズ船では705人となっている。さまざまなイベントが中止になったり、感染者がいない地域も含めて、全国一斉で休校することについて、戸惑いや不安の声が高まっている。
先行きが見えず、具体的な情報が乏しいなか、日本感染症学会と日本環境感染学会は、「一般市民に共有してほしい」として、具体的な情報や行動マニュアルを発表した。
治療が必要ない場合も
東京都内の総合病院入り口にも消毒薬が置かれるようになった
新型コロナウイルスは、これまでの研究や症例報告から感染しても、症状がないままで経過するケースが多いことは知られている。両学会によると「重症例だけが注目されるが、実際には無症状や風邪と同じような軽い症状の人が多数存在する」として、こういった場合は、治療の必要はなく、家族にうつさないよう注意して、自宅で安静にしていれば、1週間程度で症状が良くなるとしている。
受診の目安
自分が病院に行く必要があるのか?判断の目安は?
一方、症状が出る人の場合は、平均1日から12.5日の潜伏期間を経て、発熱や息苦しさ、強いだるさ(倦怠感)を感じることが1週間前後続く。
インフルエンザの場合は、通常は3〜4日までが症状のピークだが、新型コロナの場合は、症状が長引く傾向があるため、4日〜1週間経過しても悪化する場合は、保健所や「帰国者・接触者相談センター」に連絡して、専門の医療機関を受診してほしい。
すでに知られていることだが、高齢者や糖尿病、心不全、腎臓障害、透析患者、抗がん剤、免疫抑制製剤などを服用している持病がある人の場合は、なるべく外出を控えて、人混みを避ける必要がある。症状が4日以上続かなくても、高熱や呼吸困難があれば、すぐに保健所や相談センターに連絡して、医療機関の受診が必要だ。
PCR法は万能ではない 特効薬もない
一般市民の間でも「PCR法」という検査技術が認知されるようになったが、新型コロナは、インフルエンザに比べてウイルス量が100分の1〜1000分の1と極めて少ないため判定が難しく「決して万能ではない」という。そのため、現時点では胸部CT検査などで肺炎の影が認められ、重症化するおそれがあると判断された場合だけ遺伝子検査を実施することになる。
治療にあたっては、現時点では特効薬が無いため、国内ですでに承認されている薬剤を、保険適用されない「適応外使用」することを、患者に理解してもらわなければならない。
抗ウイルス薬の使用をめぐっても、学会は「おおむね50歳未満では肺炎を発症しても自然経過のなかで治癒する例が多く、必ずしも投与する必要はない」という見解を示している。一方で、50歳以上や持病がある患者では、呼吸器不全を起こすリスクがあり、致死率も高いため、酸素呼吸器が必要になった時点で抗ウイルス薬の検討が必要だ。
換気でウイルス量を減らす
花粉症にはツライが、窓を開けて室内の空気を入れ替えるのも効果がある
すでに手洗いの励行や手指の消毒、時間差通勤やテレワークの推進はよく知られるようになった。両学会では「ウイルスが長時間にわたって部屋の中で浮遊し続ける空気感染の可能性は極めて低い」としているが、閉鎖された環境の場合、会話などでウイルスを含んだ唾が一時的に空気中に浮遊し、それを吸い込むことで「エアロゾル感染の可能性はある」と指摘し、窓を開け放したり、換気扇を利用することでウイルスを一定程度減らすことができるとしている。