特殊清掃「戦う男たち」

自殺・孤独死・事故死・殺人・焼死・溺死・ 飛び込み・・・遺体処置から特殊清掃・撤去・遺品処理・整理まで施行する男たち

世間の風

2024-05-27 10:32:18 | 自殺 腐乱
今回は、首吊死体について書く。少々グロテスクな内容であるし(今更何を言ってんだ?)、読者の家族や友人・知人にも首を吊って自殺した人がいる可能性が高いので、少々気が引ける。何しろ、日本人は自殺手段としては首吊を最も好む人種らしいので。
もしも、気分を悪くされるような方がいたら、予めお詫びしておく。


私が幼い頃、

「首を吊って死んだ人間がどんな状態になるか」

という風評を何度か聞いたことがある。まず顔は?というと、

「眼球が飛び出て垂れ下がり、舌も長く垂れ出る」

身体の方は、

「放尿・脱糞のうえ尻の穴からは内臓がでてきて垂れ下がる」

という内容で、子供の頃は

「うわ~気持ち悪りー!」

等と言いながら、そういう話に花を咲かせていたものである。子供って、そういうおっかなビックリ的な話が大好きなものであり、純粋な分、残酷でもある。



そして、私は大人になって、実際の首吊死体に出会うことになるのである。しかも幾度となく。
首吊死体を初めて見たのは、この仕事を始めて間もない頃だった22歳頃だったと思う。肝心の遺体よりも、自殺者をだしてしまった遺族がどんな感じなのかの方に興味があった。

「下種の野次馬根性」

である。



私の予想に反して遺体も遺族も通常死のケースと大きな違いを見つけることはできなかった(遺族の反応については、あくまでこの案件に限る)。

遺体は通常死の遺体と特に変わったところは見当たらす、不謹慎な表現ながら「期待外れ」というか「拍子抜けした」ような気分だった。当時、若輩の私自身がかなり緊張した状態で現場に行ったせいもあるのだろうが。


あれから、だいぶ経験を積み、色んな首吊死体と遭遇してきた。幼い頃、面白半分に騒いでいた風評は、それこそ「どこ吹く風」で、実際はそんな状態になっている遺体に遭遇したことはない。ただ、通常死と異なるのは、首に痕がクッキリ残っていることくらい。

あとは、遺体によっては、目を開けたままの遺体や舌が噛まれた状態で少し出ているケースがあったり、顔が変色しているケースがあるくらい。
顔の変色で極端な遺体になると、濃いグレーに鬱血しているような遺体もあるが、これも珍しい。

「尻の穴から内臓が出る」

なんて、全くもって事実無根である。


ただ、参考までに一点。
我国は死刑制度を持つ国だが、絞首刑遺体の場合は風評に近いものがあるらしいことは、複数の文献で調べたことがある。死刑囚の首を吊る場合は、窒息させて殺すというより、高いところから一気に落下させ、首の脊髄を瞬時に破壊して即死させることを目的にして首を吊らせるとのこと。したがって、絞首刑の場合は、眼球が飛び出て、口からは舌が長く垂れ下がり、血を吐くらしい。当然、放尿・脱糞も。

それでも、完全に死亡が確認できるまで十数分も時間を要するとのこと。
死刑制度の是非は私がどうこう言えるものでもないので、それには触れないが、こんな私でも死刑執行の様を想像すると背筋がゾッとする。



話を戻そう。
比率的に言うと、首の痕以外は通常死遺体と外見は変わりない遺体の方が圧倒的に多い。

幼い頃の風評は何だったんだろうか・・・
世の中には色んなネタで、事実とは全く異なる風評が常識のようになって蔓延っていることも少なくないように思う。
世間の風評に安易に流されないような、重みのある人間になりたいものである。



世間の風は冷たい。残念ながら。
私に吹く風は臭い。残念ながら。



トラックバック 2006/06/26 08:21:21投稿分より

日本初の特殊清掃専門会社
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