特殊清掃は原則として前金制でやらせてもらっている。
こういう現場に絡んだ人達は「訳あり」の人が多く、その昔は代金を回収できないままトンズラされたことが何度かあったからだ。
こんな仕事をやらせておいてお金も払わずバックレルなんて、当時を思い出すと泣けてくる。
「人を騙すより騙される方がいい」
とよく耳にするが、そんなのきれい事だ。
世の中には、騙してもいいような輩があちこちにいると思う(騙された私もそんな輩の一人だったのかも?)。
そんな現在の私でも情がないわけではない。
お金がないから後払い・分割払いを依頼してくる相手(依頼者)はよく観察してよく話す。
長年、こんな仕事をやっているせいか、人間観察には少々の自信がある。
その結果、現状で言うと断ることの方が多い。しかし、受けることもある。
アパートで独り暮らしをしていた20代の娘が腐乱死体で発見された。
自殺ではなく自然死だったらしいが、例によって現場はヒドイ状況だった。
両親は、同じ県内に住んでおり、最初の一度、遺体発見の時だけ現場に行ったっきりで、「もう二度と行きたくない」とのこと。
かなりのショックを受けたらしく(当然か)、母親は寝込んでしまっているような状況だった。
特殊清掃の依頼は父親からの電話。
とりあえず、鍵は不動産屋から借りて現場へ。
見積書をFAXしてから、再び電話でやりとり。
プライベートなことまで突っ込んで話を聞き、偽装ファミリーではなさそうであることは確認。
でも、肝心の「お金がない」と言う。
「娘の生命保険金が入ったら、必ず払うから先に清掃をやって下さい」と懇願された。
大家や不動産屋から「早くきれいにしろ!」とクレームをつけられているらしく、父親は困りきっていた。
生命保険となると一ヶ月以上は後になる。
過去に、この類の同情を引く手口で騙されたことも思い出しながら苦慮した。
結果、電話でしか話していない父親を信じて受けることにした。
父親の懐具合はどうあれ、若い娘を突然失って弱っている人を見捨てるわけにもいかなかったので(カッコいい?)、最悪は、代金が回収できないことも覚悟しておいた。若者の死は、それだけの思いを起させる何かがあるのだろうか。
結局、最初から最後まで依頼者と直接顔を合わせることがない、珍しいケースであった。
肝心の代金がどうなったか?
それは以降のブログに載せるかもしれないので、お楽しみに。
トラックバック 2006/06/06 投稿分より
内容が濃くて特殊清掃員って仕事の大変さがわかりますね…
clean110さんは、どうしてそのような事をする仕事に就きたかったんですか?
あと、特殊清掃員って資格とかいるんですか?
うちにもたまにありますからね。
今日はお金ないから今度にしてくれとかいわれて
後日行けばもぬけの空。
葬儀屋さんでもトンズらしちゃうのいますからね。
急に変にリアルになりましたよ。
まだ1ヶ月ほど後だって言う保険金の入ってないくらい新鮮な話って事ですか。
なんかそんなところを想像したら・・・・・
オエッ