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クリエイト速読スクールブログ
なおしのお薦め本(55)『神のかけら』
クリエイト速読スクール文演第1期生の小川なおしさんから、お薦め本が届いています。今回も「オマケ」つきです。
『神のかけら』
スコット・アダムズ著 鈴木玲子訳
小説です。宗教本ではありません。
配達の仕事をしている“ぼく”は、何でも知っている老人に偶然であいます。そして、二人きりで語り合います。若者は、老人から多くのことを学ぶことになります。
老人の言葉には、幾つか目を見張るものがありました。一箇所だけ引用します。
「たったひとつのごく小さな現実も、人間の脳の中にある宇宙では、理解できないほど大量の情報をふくむものとして処理されるんだ。この世界とそれを取り巻く環境を理解するなんて、本当は人間の脳の能力を超えたことなんだよ。
だからね、とてもすべては理解しきれない。その代わり、脳は単純化した妄想を作り出すことで埋め合わせているわけさ。その妄想がうまく役に立ち、それを信じる人間が生き残るということになれば、妄想は次の新しい世代へと引き継がれていく。
つまり、人間の脳とは、妄想を生み出すところなんだ。妄想は人間の思い上がりによって力を得て、活発に動き出す。人間は世界の中心だという思い上がり、人間だけが魂とか道徳心とか自由意思とか愛とか、そういう実体のよくわからないものを独占する存在だという思い上がりによってね。
全知全能の神は人間の進化や行動に特別の関心を抱かれて、それ以外の創造物をわれわれのための遊び場所として与えてくれたんだと、人間は勝手に考えている。あるいは、神というのは人間と同じような考え方をするので、岩とか木とか動物なんかより、われわれの人生によりたくさんの関心を注いでくれるものと、勝手にしんじたりしているよね」
おもしろさは伝わっているでしょうか。
また、これは翻訳モノなので、著者の意図がまっすぐ伝わっているのかどうか、という問題もあります。ただ、訳者のあとがきを読んで、それがとても気持ちの伝わる文章だったので、小さいことは気にせずにおこうという気になりました。こんな文章です。
「私はぼおっと日々をおくる『うすぼんやり人間』なので、老人がわかりやすい言葉で語ってくれる話にはっとして、主人公の若者よりはるかに真剣に耳を傾けなくてはならなかった。それぞれの場面で若者の椅子のうしろのあたりにうずくまる黒子になったつもりで、ふたりのやりとりを理解しようと、必死になりながら本書と取り組んだ。そこから、なるべく難解な表現をさけながら著者が言わんとする『思考の実験』を導き出す作業は、全力投球の大きなチャレンジであった。しかしながら、この話を誰もがわかる日本語につむぎ出すという作業に没頭できたというのは、思えば大変に幸福な時間をいただいたことになる」
この本は、いろいろゴチャゴチャと考えがちな人、神という概念に興味がある人、老賢人がそばにいてくれたらいいのになあと思う人、そんな人たちに向いています。 なおし
■参考記事
※もりぞう爺さんの話(上)
オマケ
―なおしのメール―
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ところで、ランキングに関する冷静な指摘に驚きました。