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司法試験合格体験記「速読や学習効率のアップという一生役立つスキルを身につけることを目的に池袋へ通う決心をした」

  おととい、今年の司法試験合格者小西建次郎さんから体験記をいただきました。

 さっそく紹介します。

  タイトルは、本文からのものです。

  文字の拡大や赤文字などは、マツダの恣意的なものです。  



司法試験合格体験記

速読や学習効率のアップという一生役立つスキルを身につけることを目的に池袋へ通う決心をした

平成28年司法試験合格

                          小西 建次郎   
                               

1 はじめに
 
司法試験の合格発表はアルバイト先にてネットで確認した。八重洲にあるその会社から法務省の掲示板までは、歩いても行けるような距離しかない。それでも直接確認に行く気にはなれなかった。2回目の受験、手応えは前回よりもなし。午前9時からほとんど上の空で仕事をこなし、発表時間の午後4時を30分ほど過ぎてから休憩をとる。法務省のサイトへアクセスが集中して待つのが嫌で時間をずらしたのだが、その頃には拍子抜けするほどあっさりと目的のページにつながった。そこに朝から100回は頭に浮かべた番号を見つけたときは、ただもうほっとしてため息をつくばかりだった。

2 クリエイトとの出会い
 
クリエイトのレッスンを最初に受けたのは高校生のときだった。理数系の学習塾として著名なSEGに設けられた速読という異色の講座に、塾生ならぬ外部生の身で参加したのだ。きっかけはよく覚えていないが、「能力訓練」という言葉に惹かれ、初回から大いに期待して通った記憶がある。内容は期待をはるかに上回った。目と頭を刺激するひたすら面白いトレーニングの数々、能力向上を目指す静かながらも熱のこもった教室の雰囲気に受けた興奮は、今振り返っても特別なものだった。また、このときに読んだ本が面白く、読まず嫌いだった現代日本作家に抵抗がなくなったおかげでその後の読書生活がずいぶんと豊かになった。

 その7年後、法科大学院生となった私は再びクリエイトの門を叩くことになる。当時の私は法律の勉強に意欲を燃やす一方で、将来に対して焦りと不安を感じていた。周囲の友人は自分より優秀に見えて仕方がないし、講義や対話において学者・実務家の先生方が発揮するような分析力や論理力は何年かかっても身につけられないかに思えた。このまま勉強を続けて司法試験に受かるだろうか、受かったとして、その後十人並みの弁護士になるというのもつまらない。漫然とウェブで司法試験や法曹関連の情報を漁っていたある日、司法試験合格者を毎年輩出する速読教室としてのクリエイトを再発見した。トレーニングの効果のほどは身をもって知っている。しかも、ブログによればSEGでの講習よりさらにレベルの高いトレーニングも用意されているらしい。受講費も、貯金から何とか出せそうだ。そんなわけで、法律の勉強に速読の訓練という刺激を与えていま一つ振るわない現状を打開すること、速読や学習効率のアップという一生役立つスキルを身につけることを目的に池袋へ通う決心をした。

3 本格的に速読にチャレンジ
 
通い始めてからしばらくは、数値やレベルがどんどん上がるのが面白くて週2回くらいのペースで通った。SEGでやった覚えのあるトレーニングもそうでないものも、1~3分の短時間で次々行うこともあって全く飽きることがなかった。

 トレーニングを重ねるにつれて、自分の頭の働き方やその変化について様々な発見をした。まず、ロジカルテストでは何度か急に解答速度が向上するという経験をし、自分の脳ミソの可能性を感じた。ロジカルは1秒1秒速くなっていくというより、突然2、30秒速くなって以後それが維持されることが多いように思う。毎回全力で挑んでも越えられなかった壁を、あるときスルっと越えられる経験は実に爽快である。このような経験を短期間に何回もして、能力の限界についての自分の判断というものはつくづく信用ならないと思い知った。ロジカルは、司法試験の短答式・論文式双方において事実関係を把握するのにとても役立った。

 また、自分は記憶力が強みだと思っていたのに、イメージ記憶ではかなり苦戦した。記憶の仕方にもいろいろあるが、このイメージを浮かべるという方法は記銘に必要な時間の短さと保持できる長さの点でかなり優れている。数か月前のトレーニング中に思い浮かべたイメージが、日常のふとした瞬間に沸いてくることさえある。私のイメージ記憶のスピードはブログでみるよくできる人たちに追い付ける気配もないのだが、単語を見てぱっと映像を思い浮かべる力や突飛な場面を想像する力は間違いなく向上した。私の場合、イメージ記憶の訓練は何かを覚えることよりも、文章を読むときに場面を思い浮かべるのに役立っているように思う。近年の司法試験論文式の問題文はさほど長いものではないが、素早くイメージを思い浮かべて状況を把握する能力は書き出しまでの時間短縮、出題者が着目してほしいと考えたであろう特異な点の発見や事実の拾い漏れの防止に効果があった。

 倍速読書訓練について、当初は速く読む訓練にはなっても使用した本の内容は頭に残らないのではないかと考えていた。ところが、文字面を追うよりもイメージすることに集中するためか、かえってゆっくり読んだ本よりも記憶に残っていることも多くて驚いた(もっともこれは、講師の方々の選ぶ書籍がどれも面白いためかもしれない)。このトレーニングは適度にやると頭をすっきりできるので、なんとなく勉強のやる気が起きないときに家や図書館でも行なったりした。

 シートを用いた訓練で視野が広がっていく感覚は不思議だった。講師の方々が広く見るようにとおっしゃっても、最初のうちはその意味するところがいま一つつかめなかった。それでも広く見ようと意識してトレーニングを重ねるうち、1行しか見えなかったものが2行見え、2ブロックしか見えなかったものが4ブロック見え、という具合にいつの間にか増えていった。おかしな話だが、見える範囲が広くなって初めて広く見る、というのがどういうことなのか腑に落ちた。視野の広がりを実感していた最初の時期は、街を歩くと周辺の風景が飛び込んでくるように感じるというような先輩受講生に起きたのと類似の体験をしたほか、立てかけてあった風呂の蓋が一瞬倒れてくるように感じるなど、視野拡張酔いとでもいうべき経験をした。

 トレーニングによる頭の働きの変化は、読書速度、理解力や集中力の向上のほかにも大きな収穫をもたらした。それは、読みの理解度を意識的に変えたり、メリハリをつけたりできるようになったことである。法律の基本書などは何度も読み返す必要があるところ、理解度を下げて速度重視で読むことを覚えたおかげでまず全体をつかんで徐々に掘り下げていくという読み方ができるようになった。

4 謎の講座、文演を受ける
 
文演は、受講記録カードに松田さんからのお誘いメッセージをいただき、司法試験初回受験の1年ほど前の時期に参加した。当時既に友人たちとゼミを組んで論文式試験の答案作成を行っていたが、書き方にはまだまだ試行錯誤していた時期であった。答案も型はあれども採点者に考えを伝える文章である。それに、弁護士実務において文書作成能力が重要であるのは間違いなく、わかりやすい書き方を身につける必要性は高いと考えた。また、私は筆記スピードが遅く、論文式に要求される分量を時間内に書こうとするとどうしても字が崩れてしまう。字を丁寧に書く努力はするが、それも限度があるからいっそのこと表現のわかりやすさで字の汚さを補えないかという横着な考えもあった。この時点で文演の内容はブログやホームページを見てもよくわからなかったが、松田さんが勧めるなら間違いなかろうと思ったことが最終的な参加の決断理由である。

 大抵の内容の事柄は、ある程度の教育を受けた日本人であれば何となく文章の形にできてしまう。文演ではこの何となく形にする段階を脱して、分かりやすく説得的な文章を書けるようになるのに必要なルールや考え方を習得した。松田さんの切れ味鋭い解説に、多少は得意に思っていた文章に関しても自分はまだまだであると思い知らされた。

 この講座を受講して、文章を以前より迷いなく書き進められるようになった。もっとも、受講直後は習得したことに意識的になるあまり、かえってスピードは落ちたかもしれない。文演の内容は濃いものだがやはり知識として持っているだけではだめで、答案やレポートを書いて実践を重ねて徐々に身につけていくことも必要だった。

 書き手の思考を学ぶことで、文章の読み方も変わった。文章全体というマクロの視点から、接続詞や「てにをは」レベルのミクロの視点まで、より多くの角度から深く読み取ろうとする態度が身についた。問題文や裁判例を読んでいるときも、こう書いたほうがわかりやすいのに、などと不遜にも考えることが増えた。文章の好き嫌いが激しくなったような気もする。

 文演で得るものが大きかったのは、共に学ぶメンバーに恵まれたことにもよる。年齢も職業もバラバラな受講生は、表に出す・出さないは様々でも皆さんやる気と才能の塊で、その発言・文章にはやられたと思うことしきりだった。同じく司法試験を目指す受講生の取り組み方にも大いに刺激を受けて、毎回速読とはまた違った高揚感を感じて家路についた。

5 不合格を乗り越えて
 
速読・文演で身につけた能力をいかんなく発揮して一発合格、であったならばこの体験記ももっと堂々とした自信に満ちたものとなっただろうが、残念ながらそうはいかなかった。1年半にわたってゼミを組んだ友人たちが1回目の受験で全員合格し、晴れて司法修習生となる一方で、私はどんよりとした司法浪人生活を開始した。

 敗因を分析してみて、知識は足りているが演習不足と書くスピードの遅さが課題であると結論付けた。演習不足はとにかく演習をするしかないので、すでに一回以上答案を作成している司法試験の過去問を中心に演習の計画を立てた。具体的には、論文式の過去問、予備校の答案練習会、各科目につき1冊の演習書の順に優先順位を定め、次回試験日の1か月前までに全て2回ずつ解くことにして、何日に何を解くかをカレンダーに書き込んだ。とにかくアウトプットの量を増やすべく、ゼミは組まずに週1回の予備校通い以外は一人で勉強した。

 ゼミを組まない場合に苦労するのはモチベーションの維持である。そのためには人に会うのが一番いいが、相手方の都合があるからいつでも好きな時にというわけにはいかない。そうなると、クリエイトに行くというのは最良の気分転換であった。ひとまず法律のことは忘れて頭をフル回転できる。一緒に受講する方々の中であの人も司法試験受験生だろうかと勝手に想像したり、講師の方々と二言三言お話ししたりするだけで気分をリフレッシュできた。

 この時期の受講に際しては、全力で数値向上を目指すのは変わらなかったが、そのほかにもいろいろと工夫を試みた。例えば、自分の頭の回転に最適な睡眠時間はどれくらいか、直前にどのような食べ物を食べたときに調子がいいか、直前の運動は頭の働きに影響するかなど、試験本番に生かせそうな事柄を調べる実験をしてみたのである。私は数年前から大きな試験の初日前夜の不眠に悩まされており、その都度適度な運動を行なったりサプリメントを試したりしていたが全く効果がなかった。しかし、あえて睡眠を短くして調子が悪い時にレッスンを受け、それでも自分が思うほど頭の働きが落ちないことを確認できたおかげで必要以上に悩むことをやめられた。また、頭の栄養のつもりで糖質を取りすぎるとかえって眠くなることも分かった。クリエイトのレッスンでは頭の働きが客観的な数値としてあらわれるからこそ、このような使い方もできた。

 クリエイトの受講を通じて運動が頭の働きに与える好影響を実感していたため、ランニングや剣道の稽古で体を動かす時間も作った。合格を見越して申し込んであったマラソン大会(42.195キロ)に初参加して完走したが、これはやりすぎだったかもしれない。

 そのほか、どうしてもやる気が起きない日が続いた時には、勉強を午前中で切り上げ、図書館で法律に関係のない様々なジャンルの本を10冊ほど倍速読書して、疲れたら近所の公園を走りまくってからバタンと寝るということもあった。

 書くスピードの向上には苦労した。答案を1ページ書くのに速い人で10分ほどであるが、私は15分ほどかかっていた。120分の試験時間のうち、問題文を読んでから答案構成までを30分と比較的早く終えても、最大で6ページしか書けない計算である。枚数が多ければよいというものではないが、特に刑事系は一応の解答をするのに最低6ページは必要となる分量の出題がなされる。1ページ15分では、答案構成に手間取れば途中答案がほぼ確実となる。

 書くのが遅いという場合、問題を考えながら書くために遅くなる場合と、純粋に書くスピードが遅い場合がある。前者を克服するには素早く問題文を読み取り、答案構成をして流れを頭に留め、これを吐き出すだけの状態にしておく能力が必要である。これは速読のトレーニングが直に生きてくるところで、クリエイトに通っていたお陰もあって私はその点はクリアできていた。

 そのため、課題は純粋に書くスピードが遅いことだった。初回受験の頃、単純に模範答案を書き写してみるだけでも1ページあたり15分かかった。道具のせいにして様々なボールペンを試したが、唯一手に合って12分ほどで書けたものはペン先にインクが溜まって答案用紙が汚れてしまう(初回受験時にはこれを使用した)。結局、2回目の受験の4か月前に万年筆に変更したところ、慣れるまでに2か月かかったものの何とか書くスピードは解決したのだった。もし「問題を考えながら書く」点も矯正しなければならなかったら、今回もまた合格は危うかったかもしれない。

6 おわりに
 
以上のように振り返ってみると、私の受験生活のいろいろな側面がクリエイトによって直接間接に支えられていたことがわかる。クリエイトなしでは合格できなかった、と口にするには私はいろいろな人に助けられすぎているが、クリエイトのおかげで合格にぐっと近づけたのは紛れもない事実である。

 合格を報告する相手をチェックしていくうちに、自分がいかに多くの人に支えられて合格したかに気付かされた。2年間の受験期間中に直接お世話になった方だけでも、両親ほか親族に始まり、大学院・予備校の先生方、小学校から大学院までの友人たち、クリエイトのスタッフの皆様、アルバイト先や道場の方々などかなりの数に上る。感謝してもしきれないが、私はやっとスタート地点に立ったに過ぎず、社会に出て活躍することで恩返しできるよう今できることに励むほかない。そのため、クリエイトの皆様にはもうしばらくお世話になって、能力に磨きをかけていきたい。

 
 文章家小西さんの面目躍如の体験記です。

 法曹の枠を超えて活躍するひとになってほしいです。

 これまでの小西さんのスコアやコメントは、2016-09-12小西建次郎さん、司法試験最終合格からご覧いただけます。

 小西さん、体験記ありがとうございました      






                                 ※クリエイト速読スクールHP                                                                                                                                                                                

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