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クリエイト速読スクールブログ
この勝負。これを芸術と云わずして何と言おう
2008-06-18 羽生さん、永世名人にで、
これで、第21期竜王戦決勝トーナメントを勝ち抜き、渡辺明竜王と初代永世竜王の座を賭け、秋から冬にかけ死闘を繰りひろげてほしいものです。(略)どれほどの将棋ファンが、その日を待ち望んでいることでしょう。
と書きました。
渡辺明竜王と羽生名人との第21期竜王戦七番勝負がフランス・パリで開幕しました。
第1局は、先ほど(日本時間、10月20日午前1時15分)決着がつき、羽生名人先勝。
2人について知ることができる、とてもいいエッセイを見つけました。
ぜひ、ご覧ください。
筆者は梅田 望夫。『ウェブ進化論 ―本当の大変化はこれから始まる―』 (ちくま新書) の著者です。
竜王戦中継plus(画像と文章で綴るもう一つの竜王戦中継)での観戦記です。
【梅田望夫観戦記】
(2) 人間が人間と戦う将棋の面白さ
(略)『羽生名人は常に安定した力を出してくると思う。自分がだらしないとシリーズが盛り上がりません。自分の出来次第だが、力を十分に発揮したい』
「週刊将棋」10月15日号で決意をこう語る渡辺明竜王について、将棋にあまり詳しくない方にも興味を持っていただけるよう、ここで少し詳しくご紹介してみたい。
羽生挑戦者を迎え撃つ渡辺明竜王は、羽生との世代対決を戦うべく宿命づけられた天才である。
私も含め将棋ファンが初めて渡辺明という存在を知ったのは、1995年春、彼がまだわずか10歳のときのことである。それは河口俊彦七段が「将棋世界」誌人気連載「新対局日誌」(1995年4月18日の項)で、こう書いたからだ。
『将棋界は十年に一度の割り合いで天才が現れる。みなさんご存知だろうか。名を挙げれば、加藤一二三、米長邦雄と中原誠、谷川浩司、羽生善治である。その流れからすると、羽生が四段でデビューしてから約九年。そろそろ大天才が現れる頃だと思っていた。
歴史は誤らない。ちゃんと天才が現れたのである。
渡邊明君といい、昨年奨励会に6級で入った。そして半年あまりたった今は、すでに2級である。年は小学校五年で十歳。(中略)
用事にかこつけ、銀座に出て、「萬久満」に寄ると、中原、佐藤(義)、小倉の面々がいた。
結局話し込んで、帰りは午前様になってしまったが、そこで例の渡邊少年の話をすると、中原さんは「ほう」と眼を輝かせ「その子に羽生君はやられるんだ」すかさず言った。こういう一言は書き留めておく値打ちがある。』
これは一部では有名なエピソードだが、有名なだけに正確を期したいと思い、出発前に将棋世界のバックナンバーを探して当該個所を筆写してきた。彼はその頃まだ「渡邊」という姓を使っていたようである。
渡辺は2000年、中学校卒業前に四段となった。過去に中学校卒業前に四段となった棋士は、加藤(一)、谷川、羽生の三人しかおらず、渡辺が四人目になった。河口がこの文章を書いた5年後のことだ。
渡辺が「その子に羽生君はやられるんだ」という中原の予言を意識せずに成長したとは考えにくい。世代対決の申し子を自覚しながら四段になった15歳の渡辺は、当然のことながら自信満々だった。
『放っておいても、自然にやっていれば、25歳くらいでトッププロになると思っていたんです、15歳のときは。』(将棋世界06年11月号)
と渡辺は述懐するが、プロになって3年目に佐藤康光王将(当時)とぶつかり、羽生世代の強さを体で知り、強い危機感を抱くことになる。
『3年目に佐藤さんと指して、「放っておいたらまずい」と思った。ちょっと模様がいい将棋だったんですが、勝ちきれなかった。あとから見るときわどい将棋であるんですけど、完全に読み負けている。
終盤はほとんど読みにない手ばかり指されましたから。たしかに自分も多少は強くなるでしょうが、上も強くなりますから、25歳になっても、この関係はあまり変わっていないだろうと思った。佐藤さんと指して危機感を持ったのは大きかったと思います。』(同)
と語っている。このインタビューの中では特定していないが、おそらく2002年5月29日の王座戦本戦で佐藤に敗れた将棋のことを言っているのだろう。危機感を持って精進した渡辺は、まもなく期待通りに頭角を現す。その翌年の王座戦本戦トーナメントで優勝し、羽生王座に挑戦することになった。このタイトル初挑戦が19歳のとき、2003年夏のことである。タイトルは獲得できなかったけれど、羽生をギリギリまで追いつめた五年前の王座戦は記憶に新しい。その最終局の観戦記を担当した青野照市九段は、
『それにしても、終盤での羽生の指の震え方は異様だった。指が震えて駒が持てず、何回も手を引っ込める場面がモニターに映ったのである。初めて見る光景に、あの羽生にして今回の防衛戦が、いかに緊張していたかがうかがわれた。』(将棋世界03年12月号)
と書いたが、羽生が大勝負で勝ちを確信したときに指が震えるようになったのは、渡辺とのこの王座戦最終局が初めてだった。
そして20歳のとき(2004年12月)渡辺は、森内俊之竜王を下して初タイトルを獲得。竜王位に就いた。以来、三年連続で防衛し「五連覇で永世竜王」に王手をかけた。そして、竜王挑戦を決め「通算七期で永世竜王」に王手をかけた羽生挑戦者を、このたび迎え撃つことになったわけである。
私が渡辺さんと個人的に親しくなったのは、彼が一般読者向けに初めて書いた著書「頭脳勝負」(ちくま新書)を出したときに、本の帯に推薦の言葉を書いたことがきっかけだった。
2007年11月、ちょうど同じ月のちくま新書の新刊の二冊として、私の「ウェブ時代をゆく」と渡辺さんの「頭脳勝負」が一緒に店頭並ぶこともあって依頼があり、喜んで引き受けたのだった。
そして彼の著書「頭脳勝負」をゲラ段階で読んで、私は彼の使命感と危機感に打たれた。そして羽生さんとの14歳の年齢差は、こういうところに現れるのかと目を瞠った。
一言でいえば、渡辺さんは、「将棋が強ければ飯が食える」という棋士という職業の前提が、自分の時代には「放っておいたら」崩れるかもしれないという危機感を抱き、その厳しい現実に真剣に立ち向かう使命感と責任感を持った若きリーダーなのである。
たとえば、一早くブログを書きはじめ、ファンに向けて棋士の日常を公開し、勝った将棋も負けた将棋も、翌日にはファンに向けて自ら本音を語って解説をするという画期的なことを、彼は始めた。将棋の世界を、より広いファン層に対して、身近に感じてほしいという彼の意志のあらわれである。
「頭脳勝負」の「はじめに」で彼はこう書いている。
『棋士は将棋を指すことによってお金をもらっていますが、これはプロが指す将棋の価値を認めてくれるファンの方がいるからです。スポーツ等と同じで、見てくれる人がいなければ成り立ちません。
ただ、将棋の場合「難しいんでしょ」「専門的な知識がないと見てもわからないんでしょ」とスポーツに比べて、敷居が高いと感じている方が多いように思います。確かに、将棋は難しいゲームです。しかし、それを楽しむのはちっとも難しくないのです。「なんとなく難しそう」というイメージで我々のプレーがあまり見られていないとしたら、残念なこと。というわけで、将棋の魅力を多くの人に伝えたい、と思って本書を書くことにしました。』
誤解を恐れずにいえば、これまでの将棋界は、「将棋が好きなら、将棋を指してください。そして強くなってください。将棋の強さで、将棋への愛をはかりますよ」というところが強かったと思う。
トーナメント・プロの世界はもちろんそれでいい。しかしメディアやアマチュアやファンも含めた、将棋に関わるすべての人たちの間に「将棋の強さという尺度だけで成立したピラミッド構造」がなんとなく存在し、それが渡辺さんの言う「敷居が高いと感じている方が多い」という状況を作り出してきた要因の一つなのではないかと思う。
将棋の未来を切り開いていくためには、「指さない将棋ファン」「将棋は弱くても、観て楽しめる将棋ファン」を増やさなくてはいけない。渡辺さんはそう考えて「頭脳勝負」という本を書いた。さらにこの「頭脳勝負」という本は、対局者の心理戦の面白さを描き、「人間が人間と戦う将棋の面白さ」とは何かを突き詰めたもので、人間と人間が戦う最高峰の将棋の魅力は将棋のことをあまりわからない人でも十分に楽しめるものなのだという渡辺さんの願いがあらわれていた。こういう本を23歳という若さで書かなければならなかった渡辺さんに、私は、羽生世代のトッププロとは一味違った孤独を垣間見た。(略)
面白く感じた方には、竜王戦中継plusに【梅田望夫観戦記】(1)~(13)があります。将棋を知らない方は、将棋部分は眺めるだけにし、人間について書かれているところを拾い読めばいいのではないでしょうか
きょうのタイトルは、終局直前の記事「超難解、超絶技巧」からです。
超難解な終盤戦、これぞまさしく将棋界を代表する頭脳同士の闘い。そして超絶技巧の応酬。芸術の都パリに相応しい二人が織り成すこの将棋、この勝負。これを芸術と云わずして何と言おう。
2人のような人間を仰ぎ見ながら生きていると、いいものいっぱいもらえます。 真
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まさに記憶・歴史に残る大熱戦でした。どちらが
タイトルを獲得しても、史上初の永世竜王ということも
熱戦に拍車をかけました。
自分は羽生さん世代です。羽生さんの奪還・
前人未到の永世七冠達成を期待していました。
ところが結果は…。
渡辺竜王、七大タイトル戦では史上初の、
3連敗からの逆転4連勝で、初代永世竜王の
栄誉を射止めました。いま思い返してもつい
身震いしてしまうような、しびれる戦いでした。
そして今。羽生さんは名人戦の舞台に上がってます。
第二局までで2勝。優位に立ってます。
第3局以降どうなるのでしょうか?楽しみです。
だいぶ速読から逸れてしまいました。すみません。
今夜はこのへんで。おやすみなさい。
番組があり、羽生さんが出演していました。
終始笑顔の対談で、およそ勝負師らしからぬ
感じでしたが、話す内容はとても研ぎ澄まされた
ものでした。
いつも思うのですが、とても同い年とは思えず…。
またさらに羽生さんの大ファンになってしまいました。