苦しいこともあり、言いたいこともあるだろう。
不満なこともあり、腹の立つこともあり、泣きたいこともあるだろう。
これらをじっとこらえてゆくのが、明治の男の修行であったとか。
男が世の中を動かし、女はその男を動かしていた、とまで言われてみると、
男女同権に染められた脳の中に、違った色彩が拡散する。
夕暮れの山際を見つめながら帰路につく。
街並みや足元に視線を移しては、また同じ方向へ視線を送る。
すると、小さな色の変化に突然気付くことがある。
西洋式に彩られた学校で、人の頭の中の機械的な働きをいくら鍛えても、わからないことはある。
ギリシャ式に知・情・意だけではわからなくとも、感じる何かを頼りにそれぞれの核に迫っていく。
時間をかけなければ、知っていてもわからないままな扉が誰の心にもある。