田植えは終えられ畦道は綺麗に刈られていた。
視界の限り続くその景色に、窓を開けて土の香りが嗅ぎたくなった。
入り込んでくる空気にたちまち私は染まり、
桃色に染められた雲は何を語るでもなくこっちを見ている。
エアコンを切り、ラジオを切り、スモールライトを灯した。
頬を切り耳元ではためく風に意識を置くと、
速度はやがて地元の軽自動車並みになっていた。
空っぽなままで、不安も焦りも寂しさも、
私と仲良く並走していたのだろうか。
2ヶ月先伸ばしになっていた飲み会のライン案内。
緊急事態宣言解除祝勝会バーベキューのライン案内。
末席を汚すだけの私へも、遅れてやってきた春の案内が届いた。
蛙のお出迎えが少しずつ大きくなってくる。
野鳥の声が渡っていく。
このままずっと走っていたい気分になる。