【霊告月記】第六十五回 ムイシュキン公爵とは誰か?
ムイシュキン公爵(左)とナスターシャ・フィリッポヴナ(右)
前回の霊告月記で、橋川文三はムイシュキン公爵のような人であると書いたのだが、それではムイシュキン公爵とは誰か? ムイシュキン公爵とは、言うまでもなくドストエフスキーの小説『白痴』の主人公である。
ある研究会で橋川文三について語った後で、橋川文三は神経質な人ですかと聞かれたことがあった。橋川文三は神経質などころか、これほど寛容な人はいないと思っていたので、「橋川文三は寛容な人です」と答えたのだが、うまく伝わらなかったようなので、さらに「ムイシュキン公爵のような人です」と答えたことがあった。
この回答は我ながら名答だと思われたので、この直観をさらに詳しく確かめたいと思ってもう何度目になるだろうかたぶん五度目か六度目かの『白痴』再読を始めている。
『白痴』はドストエフスキーのなかで私がもっとも好きな小説である。尽きせぬ面白さと魅力を放つ『白痴』であるが、この小説をかくも私が好むのは、ナスターシャ・フィリッポヴナという絶世の美女がヒロインとして登場することにもよる。これほど神秘的で美しい女性に絶大な信頼を寄せられたのがムイシュキン公爵であった。
橋川文三=ムイシュキン説は、いま揺るがすことができない重要な仮説として私の内で発酵しつつある。
★ナスターシャ・フィリッポヴナの魅力を完璧に再現した映画★
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