かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

馬場あき子の外国詠 3(ロシア)

2020-02-17 19:28:40 | 短歌の鑑賞
馬場あき子の外国詠1(2007年10月実施)
   【オーロラ号】『九花』(2003年刊)135頁~
    参加者:K・I、N・I、崎尾廣子、Y・S、T・S、藤本満須子、T・H、渡部慧子、鹿取未放
    レポーター:K・I まとめ:鹿取未放

 ◆この一連は、なにげなく詠まれているようにみえて、歴史について、現代や現代の国の関係に
  ついて深く思いを凝らしている洞察力のある歌々である。2001年7月の「ロシアの帝都と
  黄金の環・吟行の旅九日間」には私も同行したため、一首鑑賞からはみ出して蛇足を加えてい
  る部分が多いが、懐かしさの故と思ってお許しいただきたい。


3 三十三度異常の夏のオロシアのイワン雷帝のやうな夕立

             (まとめ)
 イワン雷帝は、ロシア帝国の皇帝イワンⅣ世(1533~1583在位)のことで、農奴制につながる専制政治体制(ツァーリズム)を確立し、息子を殺すなどロシア史上最大の暴君とされ「雷帝」と呼ばれている。その暴君が突然癇癪を起こして雷のように怒り狂っているような夕立だ、というのであろう。しかしここでは何か陽性な怒りで、この歌に「イワン雷帝」に対する悪のイメージはない。オロシアという古い呼び名も夕立によくマッチしている。
 私も馬場のこの旅に同行したが、7月中旬のロシアの気温は平均17度、日本の4月頃の気候だから羽織るものを用意するよう旅行社から言われてでかけてみると連日33度、34度の暑さだった。地球温暖化がいわれて久しいが、冬の長いロシアの人々はむしろこの気温を喜んでいるように見えた。クルージング中に、モスクワ川やヴォルガ川で喜々として泳いでいる人々の姿をよく見かけた。そして、そういうクルージングの最中にも、毎日決まって突然夕立が訪れるのだった。予兆なく突然大粒の雨が降り出すので、その都度、甲板にいる客はあわてて屋根のある方向めがけて駆け込むのだった。だが、その夕立はむしろ旅行者を爽快な気分にさせてくれた。
 蛇足だが、『罪と罰』でラスコーリニコフが老婆を殺すのは、やはり「七月はじめの酷暑の頃」とある。もちろん百年前にもこういう暑い夏はあったのである。(鹿取)


コメント
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