かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

渡辺松男の一首鑑賞  234

2021-05-30 17:34:38 | 短歌の鑑賞
 渡辺松男研究28(15年6月実施)【陰陽石】『寒気氾濫』(1997年)97頁~
   参加者:石井彩子、泉真帆、M・K、崎尾廣子、M・S、鈴木良明、曽我亮子、
       渡部慧子、鹿取未放
    レポーター:曽我 亮子 司会と記録:鹿取 未放


234 山よ笑え 若葉に眩む朝礼のおのこらにみな睾丸が垂る

      (レポート)
 山よ、笑いなさい、若葉の力強い生命力に目がくらんで朝礼の男の子等の睾丸―みなしょんぼりと垂れ下がっている様子を(曽我)
 ・山笑ふ=俳句の季語=春。山の木々が芽吹き花が咲き色づいていく様子を、ほがらか      に笑う人に例えて「山笑ふ」と言い表す。語源は「春淡冶にして笑ふが如く
     (北宋の画家・郭煕の言葉) 『季節のことば』(自由国民社)


         (当日意見)
★しょんぼりと垂れているわけではないと思いますが。思春期前の少年達なんですね、若葉でいき
 いきと輝いている山を背景に、朝礼に並ばされている少年達がいる。若葉の照り返しで眩しくて
 くらくらとしている少年達にはみんな睾丸が垂れている。何かかわいらしい感じがしますけど、
 思春期ちょっと前あたりの少年達の恥ずかしさ、滑稽さも見ているのかな。「山よ笑え」はおか
 しいから笑いなさいと言うのではなくて、曽我さんが書いてくれているように「山笑ふ」という
 季語の命令形だろうと思います。(鹿取) 
★「若葉に眩む」で全体が肯定的な輝かしい感じになっていると思います。さわさわとした中に、
 男の子達がいっちょうまえに睾丸を付けていて、楽しい感じ。(真帆)
★「眩む」というのが曽我さんの意見の裏付けになると思います。眠たいわけですよ、だから睾丸
 もしょんぼりしている。しかし山よ笑えは季語ですけど、滑稽と言えば滑稽ですよね、服を透明
 にしてみたらみんな睾丸が垂れているんだから。アパートを縦に割って透明にしてみているよう
 な視点です。人間のそれぞれの行為って滑稽じゃないですか。そんな舞台の書き割りを見ている
 ような滑稽さがある。(鈴木)
★山にはもっともっと萌えて欲しいと願っている。そして男の子達のこれからの活躍を秘めている
 よと言っていると思いました。(M・S)
★未来を包含しているような歌で、いい歌だと思います。子ども達にエールを送っているようで。
    (石井)
★睾丸が「ある」ではなく「垂る」がいいですね。(崎尾)
コメント
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