渡辺松男研究2の25(2019年7月実施)
Ⅲ〈行乞〉『泡宇宙の蛙』(1999年)P120~
参加者:泉真帆、岡東和子、A・K、T・S、鹿取未放
レポーター:泉真帆 司会と記録:鹿取未放
188 とことわになにも言わざる古墳あり雪の降る日は巨人が眠る
(レポート)
永遠に言葉を発することのない古墳にいま雪がふっている。ふだんは何の変哲もない「とことわになにも言わざる古墳」であるが、雪の降る日はちがう様相をあらわすという。古墳全体が雪に覆われた景をみていると、巨人が横たわっているように見える。実際のところ、古墳に眠るものの勢力はその時代の巨人だったであうし、当時の存在の大きさが顕われているようでもある。ふかぶかと雪に覆われた古墳からは、ふかぶかと寝息がたっているようにも感じられ、はて、じつはこの古墳のなかで、死者は姿をかえ長い長い時代を生き継いでいるのではないか、そんな幻像さえもつ。「巨人が眠る」と現在形で詠まれた結句への展開があざやかだ。いつもながら渡辺松男の瑞々しく奥行きのある抒情に魅せられる。(真帆)
(当日意見)
★有名な詩を思い出しましたが、みささぎに降る雪の歌、誰でしたっけ?(A・K)
★(スマホで調べて)これですか?伊藤静雄「春の雪」、みささぎにふるはるの雪/
枝透きてあかるき木々に/つもるともえせぬけはひは (真帆)
★それです、伊藤静雄。こちらはみささぎではなく古墳ですけど。古墳あり、古墳
は眠る、リフレイン的ですね。初句の「とことわに」もこんな言葉ふつうは怖くて使
えませんよね。(A・K)
★雪が降る日はやっと落ち着いて眠れるのかな、古墳は。松男さんって発想は新し
いけど、抒情はありますよね。(真帆)
★考えてみたらこの歌擬人法ですね。でも擬人法のいやらしさを感じさせないです
ね。(A・K)
Ⅲ〈行乞〉『泡宇宙の蛙』(1999年)P120~
参加者:泉真帆、岡東和子、A・K、T・S、鹿取未放
レポーター:泉真帆 司会と記録:鹿取未放
188 とことわになにも言わざる古墳あり雪の降る日は巨人が眠る
(レポート)
永遠に言葉を発することのない古墳にいま雪がふっている。ふだんは何の変哲もない「とことわになにも言わざる古墳」であるが、雪の降る日はちがう様相をあらわすという。古墳全体が雪に覆われた景をみていると、巨人が横たわっているように見える。実際のところ、古墳に眠るものの勢力はその時代の巨人だったであうし、当時の存在の大きさが顕われているようでもある。ふかぶかと雪に覆われた古墳からは、ふかぶかと寝息がたっているようにも感じられ、はて、じつはこの古墳のなかで、死者は姿をかえ長い長い時代を生き継いでいるのではないか、そんな幻像さえもつ。「巨人が眠る」と現在形で詠まれた結句への展開があざやかだ。いつもながら渡辺松男の瑞々しく奥行きのある抒情に魅せられる。(真帆)
(当日意見)
★有名な詩を思い出しましたが、みささぎに降る雪の歌、誰でしたっけ?(A・K)
★(スマホで調べて)これですか?伊藤静雄「春の雪」、みささぎにふるはるの雪/
枝透きてあかるき木々に/つもるともえせぬけはひは (真帆)
★それです、伊藤静雄。こちらはみささぎではなく古墳ですけど。古墳あり、古墳
は眠る、リフレイン的ですね。初句の「とことわに」もこんな言葉ふつうは怖くて使
えませんよね。(A・K)
★雪が降る日はやっと落ち着いて眠れるのかな、古墳は。松男さんって発想は新し
いけど、抒情はありますよね。(真帆)
★考えてみたらこの歌擬人法ですね。でも擬人法のいやらしさを感じさせないです
ね。(A・K)