かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

渡辺松男『泡宇宙の蛙』の一首鑑賞 188

2022-11-23 10:20:26 | 短歌の鑑賞
  渡辺松男研究2の25(2019年7月実施)
     Ⅲ〈行乞〉『泡宇宙の蛙』(1999年)P120~
     参加者:泉真帆、岡東和子、A・K、T・S、鹿取未放
     レポーター:泉真帆   司会と記録:鹿取未放


188 とことわになにも言わざる古墳あり雪の降る日は巨人が眠る

     (レポート)
 永遠に言葉を発することのない古墳にいま雪がふっている。ふだんは何の変哲もない「とことわになにも言わざる古墳」であるが、雪の降る日はちがう様相をあらわすという。古墳全体が雪に覆われた景をみていると、巨人が横たわっているように見える。実際のところ、古墳に眠るものの勢力はその時代の巨人だったであうし、当時の存在の大きさが顕われているようでもある。ふかぶかと雪に覆われた古墳からは、ふかぶかと寝息がたっているようにも感じられ、はて、じつはこの古墳のなかで、死者は姿をかえ長い長い時代を生き継いでいるのではないか、そんな幻像さえもつ。「巨人が眠る」と現在形で詠まれた結句への展開があざやかだ。いつもながら渡辺松男の瑞々しく奥行きのある抒情に魅せられる。(真帆)


       (当日意見)
★有名な詩を思い出しましたが、みささぎに降る雪の歌、誰でしたっけ?(A・K)
★(スマホで調べて)これですか?伊藤静雄「春の雪」、みささぎにふるはるの雪/
  枝透きてあかるき木々に/つもるともえせぬけはひは (真帆)
★それです、伊藤静雄。こちらはみささぎではなく古墳ですけど。古墳あり、古墳
 は眠る、リフレイン的ですね。初句の「とことわに」もこんな言葉ふつうは怖くて使
 えませんよね。(A・K)
★雪が降る日はやっと落ち着いて眠れるのかな、古墳は。松男さんって発想は新し
 いけど、抒情はありますよね。(真帆)
★考えてみたらこの歌擬人法ですね。でも擬人法のいやらしさを感じさせないです
 ね。(A・K)
コメント
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