かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

馬場あき子の外国詠  128  ネパール①

2025-02-08 17:37:10 | 短歌の鑑賞

   2025年度版 馬場あき子の外国詠15(2009年1月実施)
    【ニルギリ】『ゆふがほの家』(2006年刊)81頁~  
     参加者:K・I、N・I、T・K、T・S、N・T、
         藤本満須子、T・H、渡部慧子、鹿取未放
     レポーター:渡部慧子         司会とまとめ:鹿取 未放

                    
         ネパールのアッパームスタンに「こしひかり」を実らせた
     近藤亨翁をたずねてジョムソンに行った。
          (この詞書のような2行は、「ニルギリ」の章全般に掛かる。鹿取注)

 

 防寒具を着込んで、月の出を今か今かと待っているところ。背景の山がニルギリ    日付の表示が狂っているが、実際は2003年11月

   

       不鮮明で申し訳無いが、ニルギリの上に出た満月 


128 ムスタンの満月ただにしろじろとニルギリを照らす一夜ありたり

                 (レポート)
 井上靖の「ヒマラヤの満月」という短編小説にヒマラヤの風や霧やその匂いが読んでいるページにただようように書かれていて、出会えた月を「天の一角に白銀の欠片がおかれている」とあるらしい。掲出歌の「満月ただにしろじろと」とあるように、どうやらネパールで見る月は白いのかもしれない。さてその月をたずねた地名と共に「ムスタンの満月」と初句に置き、俳句の土地への挨拶にならったのかと思ったが、それのみではない。ムスタン、ニルギリと固有名詞を二度までうたいながら、一首が騒々しくなるどころか、静けさや荘厳が感じられ、「ニルギリを照らす一夜ありたり」とはそこに作者がいあわせたことをうかがわせて、表現に妙味がある。(慧子)


             (まとめ)
 「ムスタン」という語はジョムソンを含む広域の呼び名で、知名度はジョムソンよりムスタンの方が格段に高い。そのムスタンに満月が照り輝き、一夜だったがその光景に遭遇して感銘を受けた。その貴重な一夜に巡り会えた尊さを言っているのだろう。ちなみに、私事だが、この旅に同行するかどうか勤務の都合上迷っていたとき、長く馬場あき子の添乗員をされている方が電話を掛けてきて言われた殺し文句、「ヒマラヤに昇る満月をあなたは見たくないのですか」。それで何はさておき、同行する決心をしたのだった。(鹿取)
                          


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