2024年版 渡辺松男研究22(2014年12月)
【非常口】『寒気氾濫』(1997年)75頁~
参加者:S・I、泉真帆、崎尾廣子、鈴木良明、
曽我亮子、渡部慧子、鹿取未放
レポーター:S・I 司会と記録:鹿取 未放
177 底のなきやわらかさ恋い朧夜のあかき空気に濡れてあゆめり
(レポート)
朧月が遠くにかすみ、やわらかい夕闇に包まれると、行く手はおぼろとなり、浮遊しているかのような歩みとなる。その歩みは心地よく、赤みがかった春の夜気がしっとりと身体に触れてくる。ゆったりとなだらかな歌いぶりは、歩行そのものの様子を伝えて巧みである。歩行を感覚で捉えている点では、ランボー一五歳のときの詩が想起されるが、与謝野晶子の「清水へ…」の作も叙述的ではあるが、景が鮮やかであり、人々のささめき、街の匂い、といった感覚が伝わってくる。(S・I)
【参考作品】
Sensation アルチュール・ランボー( 訳者不明)
夏の青い黄昏時に 俺は小道を歩いていこう 草を踏んで 麦の穂に刺されながら
足で味わう道の感触 夢見るようだ そよ風を額に受け止め 歩いていこう
一言も発せず 何物をも思わず 限の愛が沸き起こるのを感じとろう
遠くへ 更に遠くへ ジプシーのように まるで女が一緒みたいに 心弾ませ
歩いて いこう
※清水へ祇園をよぎる桜月夜こよひ逢ふ人みなうつくしき『みだれ髪』 与謝野晶子
(当日意見)
★しっとりした春の闇が身体に触れてくる感じ。松男さんの歌ってこうした情景を詠ん
でもその中に作者が入り込んでいるから、実感として読む方も味わうことが出来る。
(鈴木)
★「あかき」は色彩の赤色ではなく「明き」と思って読みましたが、実態は結局どちら
でもそれほど違わ ないですけど。(鹿取)
★「赤き」でもいいんじゃない、春の柔らかさが出ていて。(鈴木)(S・I)
★「底のなきやわらかさ」を恋うというのが、朧夜がまるで女性みたいでなかなかなま
めかしくて、包み込まれるような感じなんですね。真っ暗闇じゃない「あかき」空気
の中をゆく身体感覚が気分良く味わえます。(鹿取)
【非常口】『寒気氾濫』(1997年)75頁~
参加者:S・I、泉真帆、崎尾廣子、鈴木良明、
曽我亮子、渡部慧子、鹿取未放
レポーター:S・I 司会と記録:鹿取 未放
177 底のなきやわらかさ恋い朧夜のあかき空気に濡れてあゆめり
(レポート)
朧月が遠くにかすみ、やわらかい夕闇に包まれると、行く手はおぼろとなり、浮遊しているかのような歩みとなる。その歩みは心地よく、赤みがかった春の夜気がしっとりと身体に触れてくる。ゆったりとなだらかな歌いぶりは、歩行そのものの様子を伝えて巧みである。歩行を感覚で捉えている点では、ランボー一五歳のときの詩が想起されるが、与謝野晶子の「清水へ…」の作も叙述的ではあるが、景が鮮やかであり、人々のささめき、街の匂い、といった感覚が伝わってくる。(S・I)
【参考作品】
Sensation アルチュール・ランボー( 訳者不明)
夏の青い黄昏時に 俺は小道を歩いていこう 草を踏んで 麦の穂に刺されながら
足で味わう道の感触 夢見るようだ そよ風を額に受け止め 歩いていこう
一言も発せず 何物をも思わず 限の愛が沸き起こるのを感じとろう
遠くへ 更に遠くへ ジプシーのように まるで女が一緒みたいに 心弾ませ
歩いて いこう
※清水へ祇園をよぎる桜月夜こよひ逢ふ人みなうつくしき『みだれ髪』 与謝野晶子
(当日意見)
★しっとりした春の闇が身体に触れてくる感じ。松男さんの歌ってこうした情景を詠ん
でもその中に作者が入り込んでいるから、実感として読む方も味わうことが出来る。
(鈴木)
★「あかき」は色彩の赤色ではなく「明き」と思って読みましたが、実態は結局どちら
でもそれほど違わ ないですけど。(鹿取)
★「赤き」でもいいんじゃない、春の柔らかさが出ていて。(鈴木)(S・I)
★「底のなきやわらかさ」を恋うというのが、朧夜がまるで女性みたいでなかなかなま
めかしくて、包み込まれるような感じなんですね。真っ暗闇じゃない「あかき」空気
の中をゆく身体感覚が気分良く味わえます。(鹿取)