かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

馬場あき子の外国詠 72 中欧 376

2022-06-10 19:00:25 | 短歌の鑑賞
  22年度版 馬場あき子の外国詠52まとめ(2012年5月実施)
     【中欧を行く ドナウ川のほとり】『世紀』(2001年刊)P100~
      参加者:I・K、崎尾廣子、鈴木良明、曽我亮子、藤本満須子、
          渡部慧子、鹿取未放
      レポーター:鈴木 良明    司会と記録:鹿取 未放


376 ハンガリー動乱より十年の日本にサルトルは鑿(のみ)のごとく冴えゐつ

       (レポート)
 「ハンガリー動乱より十年」といえば1966年。この年には、ビートルズも来日しているが、サルトルは、ボーヴォアールとともに来日し、各地で講演を行った。作者もその講演を聴いていることだろう。サルトルは、当時の文学者や芸術家にも影響を与え、多くの若者にとって知的アイドル的存在であった。「鑿のごとく冴えゐつ」という比喩も、まさに実感だろう。(鈴木)


    (当日発言)
★サルトルもハンガリー動乱について批判的意見を言っているので、その繋がりでこう詠ん
 でいる。(鈴木)
★そういう繋がりなんですね。66年当時、高校生だった私はサルトルとボーヴォワールに
 熱狂的に憧れていた。講演を聴くために何枚も葉書を書き、一枚当たったが結局倫社の先
 生にあげてしまった。(鹿取)
★サルトルは 知識人のアンガージュマン(政治参加)を強く打ち出した哲学者で、鈴木さ
 んや私など団塊の世代がサルトルの影響を受けたいちばん尻尾だろう。作者は60年安保
 に敗れた後の長い喪失の時代だったが、なおさら政治参加を説くサルトルの言葉は作者
 を含む若い知識人達に鋭く迫ってきたし、励まされもしたのだろう。「鑿のごとく冴え
 ゐつ」にサルトルへの賛嘆の思いが表れている。余談ですが、サルトルは64年、ノー
 ベル文学賞に選ばれたが、「いかなる人間でも生きながら神格化されるには値しない」
 と、これを辞退したそうです。(鹿取)


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 馬場あき子の外国詠 52 ... | トップ | 馬場あき子の外国詠 52 ... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

短歌の鑑賞」カテゴリの最新記事