かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

馬場あき子の外国詠 88 スペイン③

2024-09-03 11:17:42 | 短歌の鑑賞
 2024年度版 馬場あき子の外国詠10(2008年7月)
    【西班牙 2 西班牙の青】『青い夜のことば』(1999年刊)P55~
    参加者:N・I、M・S、崎尾廣子、T・S、藤本満須子、
       T・H、渡部慧子、鹿取未放
    レポーター:T・H まとめ:鹿取未放
          

88 リンデン大きみどりの葉を垂れて暗きひかりのゴヤと相見る

       (まとめ)
 宮廷画家だったゴヤは、晩年耳が聞こえなくなりマドリード郊外の別荘で「暗い絵」のシリーズを描いたといわれている。(梅毒の治療に水銀を用い、その副作用で聾者になったという説もある。)その「暗い絵」シリーズをゴヤは自分の別荘に掲げていたそうだが、現在は壁から剥がされてプラド美術館に展示されているらしい。代表的なものに「わが子を喰らうサトウルヌス」などがある。 この歌、初句4音という不安定な入り方で、歌全体が不安定でもあり、強さをも合わせもっている。「リンデンは」と助詞を入れれば5音にするのは容易だから、わざと外した4音なのだろう。リンデンは釈迦が悟りを開いた菩提樹と同じではないのかもしれないが、リンデンからわれわれ東洋人はやはり悟りを連想してしまう。そして大きな緑の葉を垂れるリンデンの安らかな姿と対照的に暗いひかりを放つゴヤの暗い絵がある。作者はここで渾身の力でゴヤと対峙しているのだろう。その力は人間ゴヤの大きさに跳ね返されそうだ。不安定な歌の姿はその反映だろう。(鹿取)


        (レポート)
 ゴヤ:(1746~1828)スペインの画家。近現代絵画の先駆者。宮廷社会を個性的な技法と鋭い写実で描いた。怪奇幻想の領域をも開拓。銅版画の名手。
 今、馬場は町中で菩提樹の大きな葉に慰められた。その一方、館内では暗いゴヤの絵を見た。ゴヤは別に暗い絵ばかり描いている訳ではなく「カルロス4世とその家族」「裸体のマハ」「着衣のマハ」など楽しい絵もある。なのに馬場はなぜ「暗きひかりの」と詠んだのであろうか。油絵の黒を多用する手法に、(それは聖と悪との対決を思わせるが)、もうたくさんと食傷気味だったのだろうか。(T・H)


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