かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

渡辺松男の一首鑑賞 77

2020-08-27 19:57:15 | 短歌の鑑賞
  ブログ版渡辺松男研究⑨(13年10月)
       【からーん】『寒気氾濫』(1997年)33頁~
        参加者:崎尾廣子、鈴木良明、曽我亮子、渡部慧子、鹿取未放
        レポーター 鈴木 良明    司会と記録:鹿取 未放


77 彫像の国定忠治の首を立てたいらなる地は霧這いてくる

     (レポート)
 国定忠治の彫像はいくつも作られており、上州長脇差の典型的人物として、地元でも永く語り継がれてきた。この歌からは、忠治の首から上だけの彫像が強くイメージされるが、(そのような彫像はたぶん野外にはなく、)平坦な地を這ってくる霧によって首より下が隠されていると読むのが至当だろう。風土の中に置かれた忠治のこのような姿こそ、義賊・侠客として磔刑にあい、英雄化された者にふさわしい。(鈴木)
 ※国定忠次(国定忠治とも書く) 江戸末期の侠客。上州国定村の富農の子として生ま
     れ、二十一歳で博徒の親分になる。罪を重ね、磔刑。歌舞伎・新国劇などで
     義賊・侠客として英雄化される。


           (意見)
 ★国定忠治の歌、この作者は何首か作っていますよね。レポーターが言われるように首 
  だけの像はなくて、霧で胴体の部分は隠れているのでしょうね。私もネットで調べて
  みましたけど。二宮金次郎の彫像が首だけだったら意味がないように、忠治の首だけ
  って意味がない気がします。写真で顔知っている訳じゃないし。ただ「首を立て」に
  は、どこまでも平らな土地に垂直に立つ像の存在感というか強さがあります。(鹿取)
 ★生首のような効果をねらっているのかなあ、まともな死に方じゃなかったし。とても
  力強さがある。(鈴木)
 ★霧が巻いてくるのが、音もなく追っ手が迫ってくるようなイメージもあるし。この頃
  の侠客というのはそれなりの哲学を持っていたから。(崎尾)
 ★そういうところに渡辺さんの思いがあるんでしょうね、忠治を何回も歌っているんだ
  から、単なる郷土の英雄として見てるわけではない。(鹿取)
 ★でも、風土性がありますね。(鈴木)
 
         (追記)
 作者は部分を注視する。ヤンバルクイナは脚、首の歌も既に一首鑑賞した。(鹿取)
  62 乳白色の湯船に首を浮かばせて首はただよいゆくにもあらず
  69 敗走の途中のわれは濡れてゆくヤンバルクイナの脚をおもいぬ





コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 渡辺松男の一首鑑賞 76 | トップ | 渡辺松男の一首鑑賞 78 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

短歌の鑑賞」カテゴリの最新記事