かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

渡辺松男『寒気氾濫』の一首鑑賞 19

2023-03-30 17:02:14 | 短歌の鑑賞
    2023年度版 渡辺松男研究3
      (13年3月)【地下に還せり】
      『寒気氾濫』(1997年)12~
       参加者:崎尾廣子、曽我亮子、渡部慧子、鹿取未放
       司会と記録:鹿取 未放


19 凍天へ鑿打つごとき杉の幹ひたぶるなるを嗤われて立つ

         (当日意見)
 ★杉の木が尖っているということですよね。まっすぐに上へ上へ
  向かうことを嗤われながら杉は立っている。(曽我)
 ★そうですね、杉の一生懸命さに寄り添っている歌ですよね。で
  も、その杉を嗤うのは何なんだろう。(鹿取)
 ★杉は労働者みたいな感じ。それを世の中の人が嗤う、って受け
  取ったのですが。だけど杉は気にしないで立っている。凍天に
  鑿を打つってむなしいことなんだけれど。(慧子)
 ★私は慧子さんおようにこの歌を比喩だとは思いません。「嗤
  う」はあざ笑うという意味だから悪意がありますよね。また、
  杉の木を何が嗤うのかなあ。人間は松男さんを除いて「凍天
  へ鑿打つごとき杉の幹」のひたぶるさというような見方をしま
  せんから,回りに生えている杉以外の別の種類の木が「なんだ
  い、あいつは」と嗤うのでしょうか。分からないけど、作者は
  嗤われている杉のひたぶるさをよしとして応援しているのだろ
  う。(鹿取)


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