青森県立美術館。青森市安田近野。
2022年9月29日(木)。
11時過ぎに世界遺産・特別史跡・三内丸山遺跡の見学を終え、隣にある青森県立美術館を見学した。地元の女性客でにぎわっていた。
この美術館は、奈良美智の作品で有名だと予習で知った。奈良美智が、村上隆とともに高額で取引される現代美術の作家であることを知ったのは2000年代初めだろうか。2021年ごろ、NHKの日曜美術館で北海道・洞爺湖町のアトリエで過ごしながら、子供たちの作品を品評している姿を見た。
奈良美智(よしとも)。1959(昭和34)年、弘前市に生まれた奈良美智は、青森県立弘前高等学校卒業後に上京し、1981(昭和56)年、愛知県立芸術大学美術学部美術科油画専攻に入学します。同大学大学院修士課程修了後は、ドイツに渡り(1988年)、国立デュッセルドルフ芸術アカデミーに入学、ミヒャエル・ブーテやA.R.ペンクのクラスで絵画を学びました。アカデミー修了後、1994(平成6)年にケルンに移り住んで以降、帰国するまでの約6年間は多作な期間で、《Mumps》(1996年)や《Pancake Kamikaze》(1996年)など、挑むような眼差しをもった子どもの姿を描いた奈良の代表的な作品が次々と生み出されました。また、この間、日本やヨーロッパでの個展の機会が増え、しだいにその活動に注目が集まるようになります。
2000(平成12)年、12年間におよぶドイツでの生活に終止符を打ち、帰国。翌年、新作の絵画やドローイング、立体作品による国内初の本格的な個展「I DON'T MIND, IF YOU FORGET ME.」が横浜美術館を皮切りに国内5ヵ所を巡回します。いずれの会場でも驚異的な入場者数を記録し、美術界の話題をさらいましたが、特に作家の出身地である弘前市の吉井酒造煉瓦倉庫(現弘前れんが倉庫美術館)で行われた同展は、延べ4,600名にのぼるボランティアにより運営されたもので、市民の主体的な関わりと参画の規模の大きさにおいて、展覧会の歴史上画期的なものとなりました。
青森県立美術館では1998(平成10)年から奈良美智作品の収蔵を始め、現在その数は170点を超えます。コレクション展では、展示替を行いつつ常時奈良の作品を展示しています。
青森県立美術館の敷地には、巨大な犬の立体像≪あおもり犬≫や、自身のデザインによる建造物「八角堂」内に設置されたブロンズ像《Miss Forest / 森の子》といった、建築空間を意識して作られたモニュメンタルな作品もあります。ほかにも青森県内では、十和田市現代美術館の外壁の《夜露死苦ガール》、弘前れんが倉庫美術館の《A to Zメモリアル・ドッグ》といった奈良美智作品を見ることができます。
2023年4月14日、奈良美智は大阪IRをめぐる報道の中で自身の著作物である「あおもり犬」が無断でイメージの中に使用されていることをツイートした。
大阪府市のIR推進局によると、イメージ図や動画は、IR事業者であるオリックスと米MGMリゾーツ・インターナショナル側から2021年7月と9月にそれぞれ提供を受け、公表資料に掲載するなどした。2021年にも指摘を受けていたが、IR推進局からの問い合わせに対して「利用許諾を適切に取得している」と事業者は回答していた。
なお、本人は許諾しておらず、展示場である青森県立美術館も「なお、当館においては、本件での画像使用許可等の問い合わせの事実はありません。」としている。大阪府知事の吉村洋文は「美術家の奈良さんと村上さんには謝罪を申し上げます。本当に申し訳なかったと思います。」と謝罪をした一方で、「ただ一方で、何らかの奈良さん本人ではない方とのやりとりというのも実はあったんじゃないかという話も聞いています」という、著作権者を騙る第三者の存在をにおわせる言い訳をした。
twitterでは日本維新の会、大阪維新の会支持者が奈良に対して「大阪にIRは必要だけど、君の作品は大阪に必ずしも必要ではない黙々と法的処置だけしとけよ」などの誹謗中傷を行った。MBSテレビの『よんチャンTV』では著作権に詳しいという触れ込みで弁護士の河西邦剛氏が「意外に思われるでしょうが、今回の作品が屋外でお金を払わなくても見られる場所にあることがポイント」「屋外に設置されている造形物は、誰でも写真に撮ってSNSにアップするなどできてしまう。屋外にあると奈良さんの権利は大幅に制限されることがある」「今回は、PR動画に使っているだけで販売したり収益化をしていないので、まだ著作権侵害には至っていないかな、というところ」「損害賠償請求できたとしても、慰謝料的な意味合いの数十万円程度ではないか」「実際にIRに無許可でこの像を造るのはNG。また、創作者の心情にも配慮すべき」とした。
また、出演者のロザンの宇治原史規は、「PR動画に大阪の町並みを使う時、そこに誰かの著作権がある看板が映ってたら、全部許可を取らないといけないのかという話になるってことですよね」など著作権を軽視する発言を行った。しかし、(1)「あおもり犬」は青森県立美術館の壁に囲まれた敷地内にあり、明確な屋外ではない。(2)「多くの人に気軽にアートに触れてほしい」という作者の好意で私的な撮影は自由だが、PR動画という明確な商用利用までは認められていない。など多くの事実誤認の上での発言であった。
シャガール: バレエ「アレコ」舞台背景画。
20世紀を代表する画家の一人、マルク・シャガール(1887-1985)は、1942年、亡命先のアメリカでバレエ「アレコ」の舞台装飾に取り組んだ。青森県は、全4幕からなるそのバレエの背景画の内、3点を収蔵している。1点の大きさは縦が約9m、横は約15m。巨大な画面にシャガールの色彩への情熱がほとばしっている。