5月は頂いチケットで「花形歌舞伎」の夜の部と昼の部の両方を観る機会を得ました。 夜の部は
通し狂言椿説弓張月
昼の部は
1.西郷と豚姫
2.新歌舞伎十八番の内紅葉狩
3.女地獄油地獄
「椿説弓張月」は曲亭馬琴原作に、三島由紀夫が構想を得て書き下ろし、自ら演出した長編大作で、源為朝の波乱万丈の生涯を描きます。
NHK大河ドラマ「平清盛」は「保元の乱」前夜まで来ました。橋本さとし演じる為朝は次週以降では、崇徳上皇側について敗れ、伊豆大島に配流される展開となるはずです。史実では伊豆大島で亡くなる訳ですが、歌舞伎では、市川染五郎演じる為朝が伊豆大島から隠岐を経て琉球で大活躍するまでを描いています。
観終わって華々しい、壮大なドラマだなと思いました。華のある役の染五郎は適役と思います。為朝伝説をも入れた舞台を観終えて、高木彬光著「成吉思汗(ジンギスカン)の秘密」を思い出しました。源義経は蒙古に逃れ成吉思汗になっていたという伝説を題材にした物語です。稀代の英雄をそう簡単には死なせたくない、との民衆の思いの投影でしょうか。
「紅葉狩」も華やかな舞台でした。竹本・常盤津・長唄の三方掛け合いが華やかさを増します。
更科姫(配役 福助)は実は戸隠山の鬼女。紅葉狩にやって来た平維成(配役 獅童)を誘惑しようとして、最後には正体を見破られた鬼女。美しい姫の舞から猛々しい鬼女の舞への、落差の激しい変化が見ものでした。福助は姫よりも鬼女の舞に入り、生き生きと、迫力ある舞いを演じているなと、私には見えたのでした。