マーちゃんの数独日記

かっては数独解説。今はつれづれに旅行記や日常雑記など。

『ビブリア古書堂の事件手帖5』(著:三上延 出版:メディアワークス文庫)を読む

2014年02月10日 | 読書

 北鎌倉駅の駅脇にあるビブリア古書堂。その店主栞子さんは、初対面の人とは満足に口もきけないほどの人見知りで、接客商売には向いていない人柄ですが、古書の知識は並大抵ではなく、本には人一倍情熱を燃やす、若き女性です。もう一人の主人公で、物語の語り手の俺・五浦大輔は、その店のアルバイト店員。実は、大輔は栞子さんへの、静かにあたためてきた想い告白していました。彼女の答えは「今は待ってほしい」。第5巻では、その答えを待つ大輔のいじらしいほどの苦悩が語られます。読者の私も大輔に感情移入して、はらはらどきどきしながら、一刻も早く返事の内容を知りたくて、先を急ぎ読むことになるのです。
 これを横糸として、ビブリア堂に持ち込まれる、古書にまつわるミステリーを縦糸として物語は進みます。プローローグとエピローグに登場する本は『愛のゆくえ』(新潮社文庫)。第一話から第三話には登場する古書は、雑誌『彷書月刊』(弘隆社・彷徨舎)、手塚治虫『ブラック・ジャック』(秋田書店)、寺山修司『われに五月を』(作品社)です。例によって栞子さんの豊富な知識と鋭い推理によって謎は解かれていくのですが・・・。



 実は、『われに五月を』に関する謎の提出者は、栞子さんの母親の篠川智恵子です。母智恵子は10年前、夫と娘二人を置き去りにして家を出ていってしまいました。本の知識は栞子さんよりも上。古書をめぐってはライバルともいえる緊張関係にあります。その母からの挑戦。何としてもその謎を解き明かし、母親に会い、是が非でも聞き出したいことが栞子さんにはあったのです。母の思いを聞かなければ、大輔への返事が出来ないと思いつめた栞子さんは、遂に、謎を解き、母に会い、母の思いを聞き出すのでした。

 物語は最終局面で大団円のうちに終わるかに見えます。しかし、二人の顔が急接し始めた丁度その時、突然書店のガラス戸がびしりと鋭い音を立てて震えました。かって栞子さんに深い傷を負わせ人物からの石礫です。物語はまだ終わらないのです。そして二人の恋の行方もまだ不透明な余韻を残しての幕。
 古書とそれに関する謎は楽しく読めるので、物語が今後も続くのは嬉しいことですが・・・。
 550万部も売れているという超人気のこのシリーズ、第5巻も荒川5中の先生から貸して頂きました。
 
 (付記 本文では、栞子さんにだけ”さん”が付けられ、他は全て”さん”・”君”なしです。ブログもそれに倣っています)