歌舞伎座「八月納涼歌舞伎」のチケットを頂いて、8月27日、その第二部を観て来た。先月の歌舞伎座は普段の二部構成とは違って三部の構成で
第一部 おちくぼ物語 棒しばり
第二部 ひらかな盛衰記「逆櫓」 京人形
第三部 芋堀長者 祇園恋づくし
勘三郎も三津五郎も逝ってしまった。その二人が中心になって立ち上げ牽引し続けた、8月歌舞伎座の納涼歌舞伎も20年にわたっているという。棒しばりと芋堀長者では「十世坂東三津五郎に捧ぐ」として息子巳之助が、父からの芸のバトンを受け取っての演技。 私達が観たのは第二部で、今日はそのうちの『京人形』を振り返ることにします。副題に“銘作左小刀”とある様に、主人公の一人が左甚五郎(勘九郎)。甚五郎は、廓で見初めた美しい太夫が忘れられず、太夫を生き写しにした人形を彫り上げます。その人形は大きなケースの中に立ち姿で飾られています。ケースの蓋を開け、人形の前で甚五郎が酒を飲み始めると、不思議なことに人形(その精を演じるのが七之助)はケースから出て歩き始めます。そのうごき、何故か機械仕掛けの様な動きです。それもそのはず、甚五郎の魂がこもっている為、男のように動くのでした。
困った甚五郎が廓で拾った太夫の鏡を人形の懐に入れると、たちまち女らしくなり、しなやかな踊りへの変わります。
機械仕掛けの動きとしなやかな踊りを演じ分けるのが七之助。この演目のもう一人の主人公で、可憐にして色気も感じられる人形でありながら、美しい女性とも見えます。
この踊りを見ながら、私は、おわら風の盆の舞を思い浮かべていました。その男踊りのメリハリのある動作と女踊りの流れる様な優美な踊り。
七之助が男踊りと女舞いを演じ分ける舞台に見惚れました。(写真:歌舞伎座正面玄関前の、公演の告知イベントで挨拶する七之助) 女舞を喜んだ甚五郎は人形と一緒に踊り始めます。息のあった舞です。二人しての左右対称の踊りが見せ場。それもそのはず、二人は勘三郎の長男と次男。昨年観た「寺小屋」でも二人は夫婦役を演じていましたが、この共演はまだまだ続くと思えます。(挨拶する勘九郎)