映画『インビクタス』のシーンが浮かぶ決勝戦だった。南アフリカでは今もラグビーは白人のスポーツという意識が根強く残っているという。
初のネイティブキャプテンの誕生とワールドカップ3度目の優勝がかかった試合で初トライしたことは大会の歴史の1ページとなった。
組織的なチームプレーのラグビーに二つだけ個人技が光るポジションがある。FW第1列の中央にいる背番号2のフッカー。外からは「フッキング」というプレーは全く見えない。
背番号9のハーフがスクラムに投入したボールを足で掻き、後方のFW陣に股の下から供給する。セットスクラムからの攻撃はこのフッカーのフッキングから全てが始まる。
フッカーとハーフはサインでタイミングを決めていて、別メニューで徹底して共有する。誰でも出来るわけではない。
もうひとつのポジションはプレースキッカーだ。味方の期待を背負い、何万もの観衆が見つめる中でゴールポストを狙う。ラガーでも普通はボールが上がらない。毎日毎日、ひたすらボールの芯を蹴る練習をするしかない。
かつて、ラグビーにおいてトライした選手は黙々と自陣地に戻ったものだった。フッカーに限らず、「あの時ボールを供給したのは俺。」「ペナルティーを誘うプレッシャーをかけたのは俺。」「最終的にどこで誰がトライしたかだ。」という自負心が自然とそうさせていたのだと思う。
RWC2019もトーナメント戦が進むにつれて、セットスクラムとプレースキックの争いになったと思う。南アは強固なスクラムからの安定したボールの供給で焦るイングランドのオフサイドを誘い、PGで確実に加点した。
とかく華やかなプレーに注目が集まるが、目に見えないところで頑張り、時に一身に重圧を受けながら頑張るプレーヤー一人一人が繋がって出来上がっているのがラグビーというスポーツであることを再確認したひと月だった。
どの国のどの民族のどのポジションのプレーヤーもお疲れさまでした。エディさんの思索的な姿がいいなぁ。