今朝のTVワイドショーで久しぶりに山下一仁氏の「減反政策は誤り」論を聞いた。貿易制度、食糧政策にも詳しく、信頼できる農水官僚だった。
農水省時代の1998年に「農家所得補償制度」の原型とも言える「中山間地域等直接支払い制度」を創設した。画期的だった。その頃に戦後の農地改革・小作農開放の農政史に関する著作を読んでいたものだった。
GHQに言われたからやったのではなく、柳田国男、石黒忠篤、小倉武一ら優れた農政官僚が奔走した結果だったことを知った。
山下氏は一貫して、コメは作れるだけ作って余った分は輸出すれば良いという考え方だったが、今朝のワイドショーでも持論を展開していた。
当時は安いタイ米、カリフォルニア米に勝てるわけがないと言われたが今では品質で十分海外米と競争出来る時代になった。
その山下氏、コメ価格が高騰しているのは「減反政策でギリギリしか作っていないのでそもそも絶対量が不足しているから」と言い切った。
価格が上がり始めた昨年の夏頃に民間在庫は前年に比べて40万tくらい少なかったという。
今回の不足分21万tと生産超過分18万tの合計と奇しくも一致する。
農水省も民間在庫をチェックしているはずだから山下氏によれば「無いものを有る」と嘘を言っていたのだということになる。
ここまで言われて農水省はどう反論するのだろう。
元・農水官僚の鈴木宣弘東大教授も減反政策は誤っていると述べている。
転作奨励金と備蓄米の倉庫料に莫大な税金を投入してきたことは国内納税者からもWTOなどの国際貿易機関からも批判され、一人当たりのコメの消費量も半減し、今日の減反政策に行き着いた歴史がある。
直ぐに水田に戻すことは担い手の高齢化、用水路と畔の再整備など口で言うほど容易な事ではない。
納税者の理解と食糧の安定確保が日本農政の最大の案件であることがコメ騒動で顕在化した。
一過性で終わらせてはならない。
この先、トランプが日本車に対する関税上乗せと引き換えに再び日本にアメリカ農産物の輸入拡大を迫ってくることが十分考えられる。
国土をフルに利用して国民の食糧を出来るだけ賄い、自然景観、環境保護に貢献する日本農政にどう転換するか、大きな岐路に立っていることを国民は強く自覚すべきだ。
立憲民主党は農家が安心して生産に取り組めるよう、今こそコメに限らず市場価格と生産費に着目した「農家所得補償制度」をもっと強く打ち出すべきだ。