髪を切られる
原題「髪切」諸国里人談
2024.5
元禄の始めに、夜中に往来の人の髪を切る事件があった。
男女共に結ってままで、元結際(もとゆいぎわ)より切って、結んである形で地面に落ちていた。切られた人は、切られたという自覚がなく、何時きられたのか、わからなかっった。
このような事件は、あちこちの国にあったが、特に伊勢の松坂に多かった。
江戸にても切られた人があった。
私自身(著者)が、知っているのは、紺屋町の金物屋の下女のことである。
夜に買い物に行ったが、髪が切られた事に気づかず、宿に帰った。
人々は髪が無い事を言った所、驚いて気を失った。
彼女が、帰って来た道を、探すと、世間のうわさの通りに、髪は、結んだままに落ちてあった。
その時分の事である。
「諸国里人談」巻之二 妖異部 より
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