「あらゆる恵みに満ちた神、すなわち、あなたがたをキリストにあって永遠の栄光の中に招き入れてくださった神ご自身が、あなたがたをしばらくの苦しみの後で回復させ、堅く立たせ、強くし、不動の者としてくださいます。」(Ⅰペテロ5:10新改訳)
ペテロのこの激励文(げきれいぶん)には、自分自身の回想がこめられている。▼彼は漁師をしていたとき、恵みにより、十二弟子のひとりとして召された。主は彼にペテロ(岩)という名前を与え、その上に教会を建てると言われたのであった。最初は、ゲッセマネでつまずき、失敗して涙と苦しみの中を通った彼だったが、ペンテコステの聖霊傾注(せいれいけいちゅう)により信仰を回復し、やがて不動の岩として初代教会を指導する者になっていった。▼彼の生涯ほど人の弱さと情熱の強さ、ひたむきな神への愛を率直(そっちょく)にあらわしているものはない。多くの失敗と挫折(ざせつ)をくりかえしながら、次第に成長し、大指導者になっていったペテロ、しかしそれはすべて恵みに満ちた神の一方的な働きかけによったのであった。すなわち、ペテロ自身の功績によるものではなく、百パーセント神の恵みだったのである。▼おもえば、どんなに美しい宝石でも自分で輝くことはできない。永遠の都エルサレムのおどろきに満ちた美しさ(黙示録20~22章)が描かれているが、もしその都の内に三位一体の神がお住まいになられなかったら、真っ暗で何も見えないであろう。教会はペテロを初めとして、すべてがこれと同じである。私たち信仰者は、今もこれからも、「ただ永遠の恵みという光源」があればこそ、光を放つことができる、という事実を心にきざみつけたい。