「見ていなさい。もしシロの娘たちが輪になって踊りに出て来たら、あなたがたはぶどう畑から出て、シロの娘たちの中から、それぞれ自分のために妻を捕らえ、ベニヤミンの地に行きなさい。」(士師記21:21新改訳)
イスラエルはベニヤミン族が生き残る道として、略奪婚(りゃくだつこん)をゆるした。乱暴(らんぼう)きわまりない行為だが、当時の世界ではあちこちで行われていた風習だったと思われる。ただし、ここは部族が消える瀬戸際(せとぎわ)なので、非常手段としてゆるしたもので、イスラエルに平常の習慣として取り入れたものではない。律法では人を誘拐(ゆうかい)することは死をもって禁じられている。▼アブラハムなど族長時代でも、一般社会では、人の妻をうばうことが行われていたとあるから、神を知らない世界とは恐ろしいものだ。しかし、とにかくベニヤミン族は全滅をまぬがれ、十二部族の一員として存続していくことができた。のちにこのベニヤミンからイスラエル初代の王、サウルが起き、なお後代には大使徒パウロが輩出(はいしゅつ)した。歴史とはふしぎなものである。▼かつて族長ヤコブは臨終(りんじゅう)のとき、「ベニヤミンは、かみ裂く狼。朝には獲物(えもの)を食らい、夕には略奪(りゃくだつ)したものを分ける」(創世記49:27同)と、その将来(しょうらい)を預言した。性格のはげしさを指摘(してき)したものとして興味深い。