見れば父からの電話。
男鰥夫(やもめ)で、おまけに後期高齢者の前期組みの彼は、
もともと小奇麗にする人ではなかったが、輪をかけて無頓着になっているようで、
小汚い(自分の親なのにこんな言い方するのもなんだけど)格好をしていた。
母も、私も、夫であり、父である彼にはせめて毎日清潔なものを着てもらいたいし、
あわよくばお洒落な人であって欲しいと常々願っていた。
故に口うるさく、下着を替えろだのお出かけ用を家の中で着っ放しにするなだの、
いちいち彼には言ってきた。
しかし、彼の頑固さも筋金入りで、自分がよければそれで良し、人がどう思おうと関係ないという主義なので、口うるさく言うほうの人間がイライラするだけ損なのだ。
そんな彼のDNAが入っているのなら、今の私にもその威力の何分の一かでも頭角を現すことを願うけれど。
年寄りが小汚いのもなんだか不憫にみえる。
家族の者は、彼の無頓着な性格を知っているからよいが、世間様にはあまりよい印象を与えないように思われる。ひいては彼の損になるような気がするのは、娘が子供の立場での自分の体裁を気にするだけの、ただのおせっかいなことなのだろうか。この葛藤は、いつも憑いてまわる。
彼の名誉のために書かせてもらえるならば、彼は本が大好きで、新しい物好きで、好奇心の塊で、そんな彼は結構おもろい年寄りだと思っている。だからこそ、小汚いがゆえに虐げられることがありはしないかと心配だ。娘だって、小汚い父なんか正直嫌だ。
所用で一緒に外出した折も、着たきり雀の父は、家の中でも着っ放しのジャンパー(食べこぼしのしみ、汗染みつきまくり)姿だった。さすがにこれはいかんやろ、と思ったので、ショッピングモールでセールに売り出されていたジャンパーを買い、着ているものを脱がせ、私が持ち帰って洗濯をした。
普通に洗濯したのでは落ちる汚れではなかった。
かといって、クリーニングに出すほどの服でもなく、結局エマールにしばらく浸け置きしただけになったけれど。
大きく話が逸れてしまったが、
今朝の電話は、その洗いあがった洗濯物を今から取りに行くという電話だった。
…。
今更だけど、そんな父にイラッとさせられた今朝の出来事。
ある意味幸せな彼を、とやかく言うほうが野暮だろうか。まったくねぇ。