2019/6/16 2:04。「1つになる」。みずほで働くバンカーたちは20年、(注1)、この言葉を追い、この言葉に追いつめられてきた。そして3月6日、みずほの経営陣は1つの区切りをつけた。この日の午前8時半、東京・大手町のみずほFG本社に社外取締役が集まった。あらかじめ知らされてはいたが、いざ決めるとなると誰もが緊張していた。「個人向けサービスのシステムで4600億円の損失を出す」4600億円は会計用語で減損損失という。投資に見合う利益が得られないとわかったときに発生するものだ。将来を先取りする損失と言える。みずほはメガバンクで唯一、47都道府県すべてに支店がある。店頭で住宅ローンや投資信託などを提供する個人向けサービスは今も、これからも収益の屋台骨を支えるはずだ。3行が統合してできたみずほは、システム統合が課題だった。3行のうち個人向け業務の規模が大きかったのは第一勧銀と富士銀だったが、対等な精神の統合では、どちらかのシステムにさや寄せするという決断が遅れた。膨大な決済を手がける銀行は巨大な装置産業とも言える。本来は投資効率が重視されるべきだが、統合の精神はそれを阻んだ。結果としてつぎはぎになったシステムの維持費は常に膨らんだ。4600億円もの巨額損失になった要因にも、旧行のシステム統合を引きずった影響で、投資が膨らんでいたことがある。「3行統合は対等だが、現在のような激しい時代は融和を図るという意味ではない」20年ほど前にさかのぼる1999年8月20日、(注1)、3行の統合を発表した記者会見で、第一勧銀頭取の杉田力之(故人)はこう語った。対等の精神を保ちつつ、変化の激しい時代で勝ち抜けるメガバンクになる。こんな理想がその後のみずほを追いつめるとは、誰が予想しただろうか。その象徴が今に至るまでみずほのバンカーにのしかかる「システム」である。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO46175730W9A610C1EE9000/?n_cid=NMAIL007
(注1)1998/7->小渕恵三内閣―>2000/4
2016/12/7。借金10兆円超え、孫正義とみずほ銀行の「見果てぬ夢」。1兆円をポンッと貸した際は、周囲も大丈夫かと驚いた。借金をテコに兆円単位の事業を次々断行する孫正義と、その借金経営を支えるみずほ銀行に死角はないか。最近、ヒヤッとする一幕が起きた。ソフトバンクグループが英半導体設計大手のアーム・ホールディングスに対して仕掛けた3・3兆円の巨額買収劇が、「世紀のビッグディール」と騒がれたのは約4ヵ月前のことである。あの日以降、ソフトバンクの孫正義社長(59歳)はおどろくほど慌ただしい日々を送っている。毎週のようにアーム社の経営陣たちとミーティングするのはもちろん、月に一度は互いに顔を合わせて経営議論を交わしている。https://gendai.ismedia.jp/articles/-/50368