児童文学作家を目指す日々 ver2

もう子供じゃない20代が作家を目指します。ちょっとしたお話しと日記をマイペースに更新する予定です。

平行線の夢

2015-06-18 | 物語 (電車で読める程度)


夜の県道にいた。

片側2車線にも関わらず通る車はほとんどなく、たまにチラホラと大型トラックがすごいスピードで横切るくらいだった。一際明るい自販機には虫が群がり、僕らはそのすぐ脇のバラック小屋のそばで腰を降ろしていた。僕は甘いミルクティーを、彼女は無糖コーヒーをそれぞれ買って飲んだ。

「別れよう」彼女を表すアイコンの吹き出しには、ただそう一言書かれていた。信じられない思いで僕は慌てて返事を送り、とりあえずよく使う待ち合わせ場所に来て欲しいといった。
彼女の気持ちがどこまでなのか直接確かめたかったのだ。

「わかった」とだけ記された緑の吹き出しを信じて自転車を走らせた。

一番ベタベタだった頃は、毎朝ここで待ち合わせて、よく一緒に登校していた。二年後こうやって制服を着ていたらコスプレになるね、なんて話しもしていた。僕らの朝はここから始まり、僕らの関係は深夜のここで終わりそうだった。

しばらくして、上り線の方から彼女が歩いて来た。

静かな時間。
僕らはふたりならんで座り、ほとんど見えない月を探していた。






あのね、私 進学するの

だから もう一緒にはいられない



「進学」と「一緒にはいられない」の因果関係に僕は納得できなくて、
つい「どうして」の前に彼女の目をのぞきこんでしまった。それが彼女にとってホントはとっても苦手なことだと知っていたのに。



迷惑がかかる。



そう彼女はいう。


けど、それでも僕は腑に落ちなかった。だって僕は迷惑じゃないのに。



僕はこれからたくさん働いて稼ぐ。きっとはじめは貧乏かもしれないけれど、いつか家を出て彼女と一緒に暮らして、やがて子どもも生まれてそして…

僕は、自分が描いていた夢のような理想を膨らました。

シャボン玉のように溢れる思いをこらえながら夢の切れ端を彼女に渡した。



けれど、彼女は何も応えてはくれなかった。


カランと缶コーヒーが倒れる。彼女はもう飲み干してしまっていたようだ。


ゆっくりと彼女は口を開く










あなたの夢の中にわたしを閉じこめないで。









その時僕はようやく気がついた。












ホントは僕が迷惑だったってことに。





【おわり】