児童文学作家を目指す日々 ver2

もう子供じゃない20代が作家を目指します。ちょっとしたお話しと日記をマイペースに更新する予定です。

釣り堀の置き手紙

2020-12-25 | 物語 (電車で読める程度)

釣り人へ


釣れない者がいても


決して魚を分け与えないよう


決して良い釣竿を貸し与えないように。


その不憫な隣人があなたにとってかけがえのない存在であるならば、


釣り方のコツも

よくできた指南書も


くれぐれも決して渡さないように。





その人に幸福な釣果を掴んでほしいのであれば、


からっぽのバケツを咎めないように。


薄着の格好を嗤わないように。



それに、犯したあらゆる不正やズルは受け入れないように。



釣れない事実も
過ちの罰も、
すべからずその人だけの責任である。



釣れない事実も
過ちゆえに受けた罰も
すべからずその人が認めた時、



それを知ったあなたが、
ただ一人ぼっちで水平線を睨んでいるうちに、涙が零れたとしたら

その事実だけが、その人の助けとなるし、



のちに、その人がようやく釣り上げた魚がくだらないものだとわかった時、



それを知ったあなたが、
さざ波だけが聞こえる海辺で
素っ裸になって、
おおはしゃぎで海へと飛び込むなら


その事実だけが、その人の助けとなる。





あえて人前で、
あなた自身の心も偽って、
それを演じるなら


成果を手柄とする
教育者や詐欺師にはなれるだろう。



だれもいない今、
あなたは何をおもうだろう。




くれぐれも、違えることのないように。









【おわり】